劇場公開日 2023年4月28日

「心汲むよりウンコ汲め モノクロ!?オワイ?それはなぜ?」せかいのおきく 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5心汲むよりウンコ汲め モノクロ!?オワイ?それはなぜ?

2024年2月24日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

楽しい

監督と脚本は『どついたるねん』『顔』『闇の子供たち』の阪本順治
阪本監督初めてのオリジナル脚本

何度目か覚えていないが貫一郎佐藤浩市親子共演
ただ一緒に映るシーンはない
流石にお互いやりにくいだろう

幕末江戸
安政五年夏から文久元年晩春(1858年から1861年)
現代と違い安政万延文久と目まぐるしく年号が変わる
所謂「災異改元」というやつだろう
菅原道真の子孫がいくつかの候補を提案し幕府と皇室の協議で決定するらしい
ちなみに明治になったは1868年である

江戸庶民の廁事情を描いた喜劇
かと思いきや浪人の父が侍に斬殺され駆けつけた娘おきくまで喉を切られ声が出なくなる悲劇
やはりウンコだけで90分近くもたせるには無理があったか

戦前の時代劇を意識したのかモノクロ
鮮明なモノクロ
なぜか一瞬カラーになること2回ある

すっかりカラーが当たり前になった30年代にあえてモノクロ映像を好んだ工藤栄一監督や98年公開『サムライフィクション』の中野裕之監督を思い出した
あまりこういうことには詳しくないがこれには工藤監督の頃と違いデジタル的なものを感じた
ちなみにチャンバラ映画でない
直後はあるがそういうシーンは一切ない
主人公の1人は元武家だが武士の世界はほとんど描いていない

幕末の底辺の暮らしを淡々と描いている
無理な値上げを要求する武家屋敷の門番が矢亮に仕返しをされるシーンはあるがそのくらいでカタルシスは殆どない
幕末だからホームレスやクルド人のデモのような光景はない
浮世離れした東京のマスコミ連中はエリートだからデモを支持するだろうが世間一般の多くは悲しいかなそれほど支持していない
少なくともマスコミは国民の代表ではない
なぜなのかこの映画を見て思うところがある
クソにまつわる話だがなぜか美しい日本
悲哀を感じるがそれだけじゃ収まらないリアル
日々の暮らしを反省しなければいけない一面はないことない

いやらしい意味ではなくいやらしく感じるかもしれないがまあそれでもいい
地味な着物姿の日本人女性が座ったときの丸みを帯びた部分が愛しい
あの曲線もまた美しい

長屋の通りで雪降るなか跪いて抱き合う男女の情景が好き

あと草履と草鞋って違うのね
『逆転裁判』の梯子と脚立を思い出した

配役
武家育ちだが父が浪人になったため貧しい長家生活になった松村きくに黒木華
紙屑拾いだったが商売替えし矢亮の相棒になる中次に寛一郎
下肥買いの矢亮に池松壮亮
おきくが寺子屋で読み書きを教える寺の住職の孝順に眞木蔵人
浪人になり娘のおきくと2人で長家暮らしの松村源兵衛に佐藤浩市
おきくと同じ長屋に住む元早桶屋の孫七に石橋蓮司

野川新栄