「〝おきくさんには役割りがあってね〟」せかいのおきく humさんの映画レビュー(感想・評価)
〝おきくさんには役割りがあってね〟
冒頭、雨宿りのシーンの雰囲気からじわりと大好きだ。
巧みなセリフまわしに安心して笑わせてもらっていると現れる衝撃カラー。
時々それに襲われながらも、独特なモノクロの世界に没入していく。
味わうは、あの時代の空気感。
それは、う○○のリアル感を超え…。
いくつかは記憶をたぐりよせ、あとは先祖のDNAを目覚めさせる刺激?で、現代となっては、ほとんど異国の旅的でもある描写に心掴まれていくのだ。
…………
草をかきわけ原っぱを割るでこぼこ一本道。
つぎはぎに大事さがみえる着物。
畝の上で柄杓を返す働く手。
肥溜めを覆う茅葺きひさしの斜め具合。
元武家の気高さが残る親子の物腰。
廁で閃く運命の第六感。
最後の瞬間まで貫く親心。
櫂と舟が編む静かな波紋。
位牌も転ぶときめきよう。
誰かのために握る炊きたての飯。
声がなくても字が書けなくても渡したい想い。
しずかな雪の細道で伝わる温度。
兄弟のように慕える巡り合い。
見放さない人々のつながり。
いつか眩しく振り返る時間。
…………
そこには、自分が置かれた立場を前を向いてすすむ人たちの姿が確かに息づいていた。
それをじっと眺めていると、今を精一杯生きる力の頼もしさがひしひしと押し寄せ、やがて愛おしさのようなものに変わり熱く込み上げてくる。
コミカルに始まる物語は調を変えていく。
どちらかといえば悲しいこと、情けないこと、辛いこと、苦しいことがたくさん起きる。
そこに脈打つように矢亮が放つ大切な存在感。
この飄々として大胆で絶妙に優しい男の器用な言動がカラリと明るく澄み渡る。
それがたいへん心地よく話の軸を支えながらいてくれるからだ。
さりげなくいつも思い遣ってくれる誰かを、私のように恋しく思い出してしまった人もいるのではないだろうか。
そして、レビューのタイトルに絶対使いたいと思ったのは〝説法は苦手で団子が好きだという僧侶・孝順が、傷心のおきくを訪ねたときの短い言葉だ。
そのどっしりと胸に沈む意味は、長い説法以上に忘れ得ぬ効果をみせてきた。
そして、生きるということをみつめる一作になるかもしれない予感とともに幕がおりた。
おすすめしたい作品です。
修正済み
humさん、コメントありがとうございます。
和尚の言葉も、おとっつぁんの言葉も、孫七さんの言葉も、染みるものでした。
矢亮の言葉にも含蓄がありましたね。
素敵なレビューに感動しました。
ゆり。さん
ほんと、それは浮世離れだ、真木さんてば。
しかし、落ち着いた?真木さんをみて初めすぐにわからなかった😅。
みんな歳を重ねているんですねー。
返信ありがとうございます♪
humさんコメントありがとうございました。真木蔵人さんが和尚さん役をやるのは意外でしたが良かったですよね。インタビューで、真木さんは黒木さんと池松さんを知らなかったとバラされていて、なるほど浮世離れ(?)している、と思いました。
コメントありがとうございました。情感溢れる好作品でした。💩の前に 偽りなし。の名作でした。もしよろしければ私のレビュー欄ご覧いただけると幸いです。😊😊私も、ありがたい説法より 団子🍡🍡食べる方が圧倒的にありがたいです\( ˆoˆ )/。団子🍡美味しい、最高です❗️\( ˆoˆ )/
和尚さんの話は、とても好きでしたが、「おきくさんには、役割りがあってね」という言葉自体は覚えていませんでした。機会があればどんなことを話していたのか確認してみたい気がしました。