「主人公の3人がとても愛おしくなる」せかいのおきく tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公の3人がとても愛おしくなる
江戸時代の底辺で生きる3人の若者の日常が淡々と描かれる。おきくが喉を切られて声を失う以外、大きな出来事は何も起こらないが、3人の喜怒哀楽の様子を観ているうちに、彼らと彼女がとても愛おしく感じられるようになる。
なかでも、古風な顔立ちの黒木華は、時代劇にピッタリとはまっていて、日本人の原初的な美しさを体現しているかのようだった。
そうした古風な趣きは、スタンダードサイズの白黒の画面からも感じられるのだが、頻繁に出てくる糞尿の描写を見るにつけ、白黒で良かったとも思ってしまった。
また、各章の最後を締めくくるように映し出されるカラーの場面も印象的なのだが、最後の2章だけ、カラーにならなかったのは、何か意味があるのだろうか?特に、おきくと中次が抱き合う雪のシーンこそ、カラーで観たかったと思えるのである。
終盤、淡々とした物語に、どのような形で決着を付けるのだろうかと期待していたが、それをはぐらかすかのようなエンディングには、やはり物足りなさを感じざるを得ない。
ただ、その一方で、「いいものを観た」という後味の良さは確かに残った。
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