「モノクロ映像の中に、ほんのり微かな色の見える素敵な物語。」せかいのおきく 星組さんの映画レビュー(感想・評価)
モノクロ映像の中に、ほんのり微かな色の見える素敵な物語。
まるで短編小説のページをめくるような映画。
やはり黒木華さんの存在は大きい。
特に「秀逸だな」と思ったのは
戸口で好きな人の去る音を聞く表情と
好きな人の名を書き、ひとり悶えるところ。
おきくの心の内が分かる2つのカットは
さすがだな、と思った。
一方で「もの足りない」と感じたのは、おきくという人物を知る上で、何故あの人に惚れたのか、絶望から抜け出せた決定的な光は、などの答えは伝わらず…最後まで見えずじまい。あえてなのか?普段のおきくや、恋する娘としての姿は薄い。一方、同じ毎日を繰り返す若者二人のシーンは妙に長く、仕事や衣装以外の、言葉遣いや立ち姿は長屋の人々とほぼ同じに等しい。今の人に分かりやすい方法をとったのかもしれないが、人の内面から滲み出る卑屈さは見えなかった。身分違いの辛さ、想いの深さを感じられないまま迎えた「雪の場面」は非常に弱く、シーンとしては素敵だが心は動かなかった。
表現の問題か…勿体無い。
星は3.8のつもり
いい映画ではあった。
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