波紋のレビュー・感想・評価
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宗教も邪悪な人間の前には無力
2023年劇場鑑賞119本目。
ある日突然夫に失踪された主人公。夫が数年ぶりに戻ってくると妻は新興宗教にハマっていて・・・という話。この前に観た映画がなんの変化もないただただ退屈な映画だったのもあって多分5割増しで面白く感じた気もします。
この宗教、心の弱みにつけこんでお金を巻き上げるような悪徳宗教ではあるのですが、教えとしては穏やかに生きろと真っ当なことを言っています。しかしこの筒井真理子演じる主人公の生来の底意地の悪さが宗教の教えを上回ってしまっているのが面白かったですね。
ラストシーンの狂気っぷりもなかなか。ターで見たかったのこういうことなんだよなぁ。
(追記)思い返すとじわじわと面白さが蘇ってくるので満点に変えました。
滑稽に生きてこそ人生
常識的な人間かと思えば、裏の顔的なキャラクターしかいない。のが面白い。
普通の夫は突然失踪するし
寝たきりの義父はセクハラするし
普通の主婦は新興宗教にハマってるし
健常者の息子は障碍者の婚約者を選ぶし
清掃員の家はゴミ屋敷だし
近所のジジイはクレーマーだし
隣の家人は猫を放し飼いだし
心の支えの宗教家は怪しい水を売りつけてくるし
ホームレスはムロツヨシ
一見、普通の家族に見えても、親切に見えても本心じゃない。腹の中で考えていることとは違う現実を選択しているから、物語上では殺人事件は起こらない。それが普通。私が生きている世界と何ら変わらない。
普通って一人一人が自己を抑制して初めて社会になっていくのだなぁと感じる。
ただ、とてもストレスが溜まる。
普通にするのって、周りの人間に合わせて働き、にこにこ笑いながら悲しみやイライラを飲み込むためには宗教だったり、お部屋だったり、自分のガス抜きをする必要があったんじゃないか。
主人公、依子が緑命水の教えを盲信している時には夫は生きている。最後、夫が死んで骨になったら、家から水は無くなって、祭壇も跡形もなく、夫の遺骨が置かれている。
つまり、依子にとって宗教は自分のガス抜き、アンガーマネジメントをして、普通の社会を生きていた。
一滴の水〜🎵と宗教で歌うけど、振り付きで3番まであって思わず笑ってしまうけど、歌詞をよくよく聞いてみたら当たり前なことを歌ってて、普通にすることって難しいんだなと、少し悲しくなった。
1人で水面に落ちれば、波紋はどこまでも広がっていくのに、人間と関われば関わるほど、自分の波紋はより大きな波紋に打ち消されてしまう。
波紋は声と置き換えても良いかもしれない。
胸の中に広がる声は関係が近ければ近いほど伝わりやすい。
モノクロで水面の上に立って描かれる波紋のシーンでは、近くにいた息子が、相対する立ち位置に変わり、恋人と同じ位置から母親に波紋をぶつけてくる描写が面白かった。
依子の好き嫌いが玄関の靴の位置で分かるのも面白かった。
映画ではほとんどの場合、主人公に感情移入して物語の世界に没頭して楽しめるのに、普通だと思っていた主人公が新興宗教にハマっているので、感情移入や同調することが難しく、観客も一滴の水と同じ、客観的に波紋を受け取る立ち位置で映画を鑑賞しなければならないのも面白かった。
主人公に感情移入しない、他人の目線であるからこそ、依子が災難に見舞われて奮闘する姿を「滑稽だなぁ。」と達観しながら観ることができた。
半額ジジイに「お客様は神様だろう?」と言われた時に
依子が「夫が癌なんです。神様ならどうにかしてくれますか?」と言って撃退したのが痛快だった。今度やってみようと心のメモに刻んだ。
生きているだけで、人と関わるだけで波紋が生まれ、自分の元に届いてくる。
関係が希薄なはずなのに、自分とは関係ないと思っているのに、ないはずなのにある。
庭の枯山水は自分の心の声を表面化させた形だ。
心理学でも箱庭療法と言う物があるけど、それに近い。
なのに、自分の心の庭にまで隣の家の猫が入ってきたり、夫が踏み荒らしたりする。
最後、棺桶に入って心の庭を渡る時、棺桶を運ぶ葬儀屋が歩道の飛び石をうまく渡れず棺桶が転がる。
依子の心の池に死んだ旦那が転がってる。
でももう、波紋は生まれない。
思わず笑いたくもなる。
怒りをおさめるガス抜きとして利用していた緑命水も入らなくなったところで、自分の元を去る息子から「昔やってたフラメンコでも始めたら?」と言われる。
依子は息子の波紋を受け取り、フラメンコを踊って幕が閉じる。空は天気雨。晴れているのに雨が降っていて、やっぱり普通じゃない。
今までの監督の作品とは違った雰囲気の作品だけど、やっぱり絵面は綺麗で清潔感がある。ゴミ屋敷も片付けるし、丁寧な暮らしぶりが垣間見える。
他の作品ではそれらは清潔感と清涼感を演出してるけど、今作では几帳面で潔癖で息苦しい。
ちょっとバーバー吉野に近い雰囲気だった。
これは何となくだけど、川っぺりムコリッタあたりで監督も身近な誰かを亡くされたんだろうか?
前作から死を意識する作品が続いている。
それとも、そんなお年頃なのか。
ともあれ、更年期の描写を含め、リアリティのあるキャラクターにいつも引き込まれる。
ムロツヨシがひょっこり出てきて、会話するのも良かった。ムロツヨシ出てきた!と思ったけど、一緒に観ていた相方は気づかなかったらしい。
それほどちょい役だった。
ハマる、ハマらないがある映画だと思うけど、私はやっぱり荻上直子監督作品は波紋を受け取れるな、と感じた。
波紋って、自分が黙っている時にしか自分の元に届かないんだな。
自分も声を上げると、相殺してしまうんだ。
波紋を受け取って欲しいなら、相手を黙らせる必要があるんだよな。
と、徒然なるままに考えを書き殴ってしまいましたが、自分の心と向き合える作品です。
是非、劇場でご覧ください。
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よろしくお願いします。
趣旨は多いに理解できるが、どれか一つに絞ったほうが良かったのでは…。
今年174本目(合計825本目/今月(2023年5月度)31本目)。
tohoシネマズさんの映画のラインナップとしては問題提起型という、万人受けるする映画ではないものの、80%くらいの埋まりようでした。
ここでもすでにかなりの評価があり、他の方が触れている点は同じになるので多言を要さずバッサリとカットします。
結局この映画で主に上げられる問題は、「問題提起は理解できるが、多数の論点を入れた割にどれも明確に最後まで描かれない」「突然帰ってくる夫に対する「正しい対応」の不足」、さらには、「個々個々、妙なまでにセリフが少なく、ある程度補う必要がある」「いわゆる、炊き出しについて」等の論点ではなかろうか…と思います。
特に1番目と3番目は他の方も触れている方がいるので、2番目と4番目は資格持ちとしては明確に気になったところです。ただ、これをどうこう言い始めると「映画のストーリーが成立しない」という妙な事情も抱えているので、どこまで考慮するのかは微妙です。
また、問題提起型の映画であることは明確も明確であるのに、ラストが珍妙な終わり方をするなど(最近の映画だと、「もっと超越したところへ」が似ている?)、その珍妙さもあいまって混乱度合いは高いです。
なお、映画の趣旨その他としては、2020年だったか19年だったか、「星の子」が趣旨的に近いです(完全に同じではない)。
行政書士の資格持ちのレベルで気になったのは以下の通りで、4.2を4.0まで切り下げています(これらの行為についてエンディングロールで説明がない点も考慮しています)。
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(減点0.4/いわゆる炊き出しについて)
・ 炊き出しについては、食品衛生法ほかこれらに関係する法律の外の場合であっても(規模要件等)、都道府県では通常、「申請義務はないが通常申請をお願いします」というようになっています。それは第一義的には「食中毒が出た場合の対応ができなくなること」と、もう一つは「無償配布か有償配布かでトラブルになるから」という2つにほぼ絞られます。
一応、「お願いします」の扱いではありますが、日本では当然、「お願いします」のレベルでもあっても、行政が管理している土地でやる場合は結局強制されてしまう点もこれも事実で、かといって映画内でこれを行ったと思われる点もなく(なお、いわゆる「炊き出し」と同時に、ワンストップ事業として生活保護の申請代行などを、行政書士でない方が行うと法律上アウトです)、ここはちょっとどうなのかな…というところです(本問題は「食品衛生法で定める範囲外であっても、食中毒を出さないように保健所が一元管理する、という公衆衛生に関する「パニックの防止」が論点なので、いかに「お願いします」とはいえ、無申請活動がまかり通ると大混乱します)。
※ なお、大震災ほか「申請に対して許可を得るいとまがない場合の緊急的な炊き出し」については、多少甘くみられているようです。
(減点0.4/そもそも主人公が取っている行為も謎)
・ 突然帰ってきた夫…という設定ですが、その「長期間帰ってこない」ことは当事者である妻が一番知っていることです。そしてその状況で遺産相続等を行うと面倒なことになってしまいます。
婚姻後の裁判上離婚は民法770条に規定があり「3年間生死が分からないとき」がありますので、これを使わなかったのか…という気がします(ただ、この規定は「生死がわからないという中途半端な一方側に強制的に申請せよ」というものではない)。また、遺産相続については行政書士・司法書士が間に入ることが多いですが(不動産の登記名義等がからまない限り、行政書士でも可能)、このとき、「そもそも法律的に決着していない、宙ぶらりんな人がいる」ということを把握していない(厳密にいえば、主人公もそうした専門家を呼んだ形跡は見当たらない)のが問題で、それが「生前に残したお金がどうこう」といった問題になってしまいます(裁判上離婚していれば、たまたま帰ってきても「ただの人」でしかない)。
こういった部分の考察が抜けているため、特に「お金の捻出方法」について明確に配慮を欠いている部分があり(当然、適正な対応を取らないのであれば、いつ帰ってきてもおかしくならないように、適切な対応が必要)、この描写が何もないのはちょっと気になりました(このように、当事者が明確に「帰ってこない人がいる」という状況で、専門家抜きで遺産相続をやるとあとあと面倒くさいことなるのは、当事者がそもそも知っているはず)。
スーパーまるおか
ロケ地の一つがここであり、お隣のイオンシネマ高崎では本作の上映がないというのがなんか皮肉めいたものである(苦笑
なかなか救われないし、胸にドスンと来る作品である 更年期障害+義父の介護+東北大地震による原発事故の放射能汚染からの水質問題+夫の突然の失踪&ガンになって帰宅+パート先のカスハラ+息子の聾唖のガールフレンドしかも妊娠+枯山水の庭へ隣の猫の紛れ込み等々・・・ 麻雀は知らないけどこれだけ沢山乗ってくれば相当の点数になるのではないかと驚愕するリアリティダークファンタジー物である
しかもそれを新興宗教に縋るという最悪の心の落ち着かせ手段にしてしまうところに、ますます地獄を繰広げる展開が観客の心を蝕む しかしその中で、職場の清掃員の老婆との交友関係が一筋の糸として主人公を救い上げる部分に安堵する しかし根本的には何一つ変化しない現状に於いて、しかし時間がそのこんがらがった糸を溶かすように、夫がこの世から居なくなる事で、始めて主人公はフラメンコの踊り手宜しく、自由の勝ちどきを挙げたのだろうとラストの演出に納得した ムロツヨシとは気付かなかったが、ホームレスの男のカマキリ話は、真実なんだろうと実感する 最後にオスはメスに喰われる この世はそういう摂理なのであろう
現在の自分も非常に似たような環境なので心底思い知らされる、ピンポイントに刺さる作品である
各邦画を彩るバイプレイヤー達のオールキャストでの演技にも心が掴まれる、本当に心底身の竦むストーリーテリングであった
病床での夫の台詞、「俺、さっさと死ぬわ」は、至極名言である 妻側では憤ると思うのだが、稼がない男は早く幕を降ろすべきなのであろう・・・
相対的な世界で言いなりであること。
2023年。荻上直子監督。夫は東北大震災直後にふといなくなり、息子は大学入学後を機に家を離れ、一人で暮らす主婦。パート勤めをしながら新興宗教にすがって生きているが、ある日、夫が「ガンになった」と言って帰ってきて、、という話。
ままにならない人生をなだめすかして生きていく主婦に主観的に寄り添うように見えつつ、それを相対化するように独りよがりで利己的な側面も描いている。善悪の基準も親密な人間関係も信仰も絶対的な支えにならない。家族の問題も職場の問題も自分の体の問題も誰かに従って相対的に判断してしのいでいる。この「言いなり」感がすごい。いや、催眠術のように言われたことに従っていくそのシンプルさがすごいのか。周囲に影響を受ける一方で、自分から影響を与えることはなく、しかも影響を主体的に受け止めるのではなく、100%信じ切ろうとしてしまう。これはホラーである。
それでも『生きていかなきゃあならん』のです
人生は『選択』の繰り返しなのですが、当然「選択する立場」と「選択させられる立場」があります。
後者の場合では相当ストレスがたまってきてその結果、『依存』がはじまります。
主人公は嫁としての立場からか、夫や息子、仕事に家の管理まですべて完璧に対応していました。
ただ或る日の原発事故による『雨粒一粒』によって今までの人生が狂い始めます。
知らぬ間に嫁としての立場に依存する生活を送っており、夫の失踪を機に日常がどんどん崩れさっていきます。そして心の拠りどころを失います
しかし実は内心それを望んでいたのかもしれません。
依存からの脱却として。
自立を目指すように決め、ターンを『選択する立場』にシフトさせたことで人生が好転し始めます。(夫が棺から落ちたのを見て笑うブラックユーモア等)
現実パートは、プールで誰にも邪魔されない大きな波紋を広げて前に進んでいき、心象パートでは多くの雨粒の中フラメンコで門出を祝っているのかなと思いました。
そして自立した女性になった。
映画全体としては「少し長いかな」と思いました。
筒井真理子さんの演技が素晴らしかった。そして美しかった。
彼女を主演にされた事に感謝します。
とても楽しみにしてたのだけど、予告編以上のものではなかった。先に...
とても楽しみにしてたのだけど、予告編以上のものではなかった。先にモチーフが来てしまうのではないか。
ラストのフラメンコはよかった。何よりうまかった。
光石が、予告編の感じと違って嫌味に見えない。
カルトの人々も典型的すぎて、一人ひとりの人間性が見えない。
この人の映画は駄目なんじゃないか。
#24 筒井真理子さん主演映画って良い
リアルサイレント‼️❓
フラメンコ必要?
実力派バイプレイヤーズがいっぱい出てくるから観ていて楽しい。 クス...
是非ご夫婦(別々)でご覧ください
とても興味深い家族に関するテーマ。
筒井真理子さんの1人舞台。
台詞がなくても表情と醸しだす雰囲気というか空気感がお見事でした。そしてダメダメおやじぶりが妙にハマっていた光石研さんとのやり取りは、ダブル主演と言ってもいいくらいの出来です。なかなかの『憎みきれないろくでなし』ぶりは特筆ものではないでしょうか?
光石さんのひとつひとつ『やっちまったな!』感に溢れる一挙手一投足に対する心の声を字幕で表現してもよかったんじゃないかと思いました。
まあ1人舞台と書きましたが、周りを固める役者さんたちはひと癖もふた癖もある個性的な方々ばかり。信者のリーダー、キムラ緑子さんの本物と思えるほど自然な佇まい。
江口のりこさん、平岩紙さんなんかは確実に本物です。先週観た『最後まで行く』で見事なハマり役の柄本明さん、磯村勇斗さんも今回は少し抑え気味でしたがやはり映画が引き締まります。(磯村さんは今回いい人でしたが)
障害を持つ息子の恋人に対する対応は少し気が滅入りましたね。
ムロツヨシさん、どこにいたかと思ったらカマキリのホームレスだったんですね?気づきませんでした。
色々な問題を抱えて奔走する家族の重くもクスっと笑えるそれぞれの事件に「フィクションだからいいけど本当ならたまらないよな」って思い、心の底からは笑えませんでした。冒頭のいびきに閉口してよく眠れない筒井さんの表情は決して人ごとではなく身につまされるものがありました。
そして家族を大切にしないと明日は我が身だよなってつくづく反省した次第です。面白かったです。皆さん、ご夫婦で(別々に)ご覧になることお勧めします。
感情を処理しきれなくなると、人間は笑う。
新興宗教に傾倒することで精神的な平静を保とうとする主婦が主人公。十数年前に失踪した夫の突然の帰宅を皮切りに五月雨式に起こる問題によって、主人公は精神的に摩耗していく。主人公のように、やるせなさを感じながらその気持ちに蓋をして日々を生きている現代人は多いのではないだろうか。
主人公の心境の変化に合わせて、場面の切り替わりに挿入されるパルマ(フラメンコの手拍子)のリズムも変わっていくという演出になっているが、視聴中は手拍子とフラメンコが結びつかず、ラストシーンにやや唐突さを感じた。
本作は高齢化、新興宗教、差別など、社会問題をこれでもかと言わんばかりに組み込んだ作品ではあるが、出演者の演技力は高さと(特に新興宗教信者役の女優の表情のつくり方は怖いくらい上手い)、多くの笑える演出によって、重いテーマが軽妙な作風で描かれている。
【”パン、パパン!貴方のした事、無かった事にならないから!”筒井真理子さんの駄目夫を見る氷の如く冷たい眼が恐ろしいブラックシュールコメディ。新興宗教、障碍者差別など重いテーマテンコ盛り作品でもある。】
ー いやあ、”荻上監督どうしちゃったの?”という位、今までと違う作風に吃驚し、筒井真理子さんの駄目夫を見る氷のように怖い目に、身がすくむ様な気分になった作品である。-
■須藤依子(筒井真理子)は、夫、修(三石研)の突然の失踪と、義父の介護のストレスからか新興宗教「緑命会」に傾倒し、漸く心身共に穏やかな生活を送っていた。
失踪から10年以上も経ったある日、修が戻り”癌になった”と言って同居を始める。
夫へのストレスがドンドン増して行く中で、一人息子拓哉(磯村勇斗:最近、この俳優さんを頻繁に映画で目にする。良い俳優さんだもんな。)が聴覚障碍者の彼女を連れて、就職先の九州から出張で帰宅する・・。
◆感想<怖かった所、面白かった所。>
・冒頭、須藤夫婦がベッドで頭の位置を逆にして寝ているシーン。そして夫の鼾が五月蠅くて依子が早朝ベッドを抜け出すシーン。
ー 妻の夫に対する苛苛あるある・・。(我が家ではない!)
1.鼾が五月蠅い
2.加齢臭が臭い
3.とにかく、存在自体が嫌!!
可哀想な、働きバチの夫たち・・。(涙)ー
・で、修はある日、庭の花壇に水をやっている時に、フラリと居なくなる。
ー 後年、拓哉が言った言葉”父さんは原発じゃなくって、母さんから逃げたんだよ!”-
・依子は夫が失踪した後に、新興宗教”緑命会“に傾倒していく。
ー 家中にある緑命水ボトル。どう見ても怪しい水晶玉。庭は枯山水である・・。
そしてキムラ緑子演じる”緑命会“の親玉の掛け声で信者たちは、不思議な踊りを踊るのである。
可笑しくてシュールなシーンである。信者役の平岩紙や江口のりこがグッドキャスティングである。-
・そんな中、修が戻って来て癌治療のために高額なお金を要求してくる。水晶玉に付いていた夫の指の跡。
ー 依子の苛苛MAX!マジで水晶玉で修の頭をカチ割るかと思ったよ。そして、修を”緑命会“に参加させた後、高額点滴のシーンは笑ったなあ。
ポトリと一滴落ちると”10まーん、20まーん”と数える依子の姿。
さらに修の歯ブラシで洗面所を掃除しちゃったり、修の洗濯物に消臭剤を掛けるシーンも怖いが、可笑しい。-
・”緑命会“のホームレスの人達への炊き出しシーンも可笑しい。
ー ムロツヨシ演じるホームレスがやって来て、修に”貴方、前世カマキリの雄ですよ。交尾中にメスに食われちゃう奴。”というシーン。クスクス。修と依子の関係マンマじゃん。-
・一人息子拓哉が聴覚障碍者の彼女を連れて帰宅するシーン。物凄く気まずい雰囲気の食事シーン。
ー で、息子に頼まれ彼女をスカイツリーに連れて行った時に依子が言った言葉。
”息子と別れて下さい。”だが返す刀で彼女がニッコリ笑って言った言葉。
”拓哉さんから言われてます。あの人頭オカシイから別れてくれって言われたら言ってくれって。”-
・何でも”半額にしてくれ”の高圧的オジサン(柄本明)や、息子を亡くしていたお掃除オバサン(木野花)の存在感あるアクセントも良い。
<漸く修が死に、簡素な葬式が済んだ後に焼き場にも行かずに、満面の笑顔で高笑いする依子の姿。(怖いよお・・。)
そして天気雨が降る中、喪服で真っ赤なパラソルをさして、枯山水の庭で、フラメンコを踊るのである。(更に怖いよお・・。)
今作は、主要な俳優さん達の演技が素晴しく、且つ今までの作風をガラリと変えた荻上直子監督のオリジナル脚本が冴えわたる恐ろしくも可笑しき作品である。
家人をもっと大切にしようと思わされた作品でもある・・。>
■補足
・上映中に笑い声を上げていたのは、ほぼ中高齢の女性だったと思う。
私は笑うどころか”大丈夫か?俺の歯ブラシ!大丈夫かオイラの家人(いつも優しいけれど、あれは見せかけか?)などと思いつつ、背中にヒヤッとした感覚を持ってしまった作品である。荻上監督、何か心境の変化があったのでしょうか?
中年男にとっては、ホラーに近い映画でした。
女は母親、主婦という立場から、生きることから何があっても逃げられない
一人息子は大きくなって手がかからなくなったけど、介護しなければいけない人間が一人いるだけでも主婦の生活というのは大変だと思います。
震災で生活の全てが変わってしまっても生活、生きることまで変わる訳ではない。
介護の為におかゆを作るとき水道水を使う依子の姿には、思わずわかるというか、少し共感してしまいます。
旦那が突然、いなくなって戻ってきて、癌治療の為に金を出してくれという頼みには思わず「何を言っているんだ」と普通の人間なら怒って追い出すと思うのですが、それを主人公はしない。
最終的には見捨てず治療費を出すのですが、人は悪にも善にも簡単になれけど見捨てられないのは元、夫だから、そりとも多少の愛情の欠片が残っているのかと考えると妙な気持ちになってしまいます。
生活から、夫という立場から逃げ出した男が生きることに執着する姿は人間なら仕方ないと思うのですが、それが依子にはできない。
夫だけでなく息子も逃げた、しかも戻ってきたと思ったら女を連れて。
普通でない、障害者なら殆どの母親は反対するのは当然だと思うけど多分、息子は分からないというか、理解しようとはしないだろうと思うのだ。
しかも妊娠までしている女は可愛い義理の娘ではなくて母親というたちばなら尚更だ。
宗教に縋って生きる依子の人生には、これでもかというくらい色々な出来事が降りかかってくるのですが、これって現実、自分の身にもあるよなと思うと観ていて複雑です。
旦那が死んで、息子は帰ってしまい一人になった家の中にはがらんとして何もなくなってしまった。
これが自由というなら生きるというのは良いこと悪いこと半々なんて嘘っぱちじゃないかと思ってしまうのです。
でも最期に踊る彼女の姿に、いや、まだ答えを出すのは早いのではと思ってしまうのです。
理解できるところと受入れられないところ
夫が実の親の介護その他から逃げ出した妻の恨みは理解できるし、気にかけてくれた職場の友人への好意、そして結末の踊りの潔さは良いけれど、息子の気持ちとともに、悪徳商法を伴う集団への依存の肯定的態度や、婚約者への態度はいただけない。山田洋次監督作品『息子』とは真反対の姿勢でもあった。初めは外国人かと思ったが、難聴当事者俳優を抜擢していたところは評価できる。夫の逃げ出しと力尽きるところでのホースでの水の流しっ放しが対照的であった。ムロツヨシ氏の出演場面も確認できた。
パッと見よりずっと気さくな映画
見る前は頭使って見るタイプの映画の予感がしてたんだけど、いい意味で全然そんなことはなかった。感じるままに見ていい、ブラックな笑いがたっぷりの、でも泣けるところもある、面白い映画だった。ソール・ライターみたいなラストシーン、狙いすまし過ぎてるけど、まんまと好きだった。
新興宗教のシーンも好き。舞台挨拶で荻上監督は、自身が通っていた全寮制の高校の夕礼を参考にしたと言っていた。「男尊女卑で大嫌いな学校でした」とも。でも、映画では信徒たちの集まるシーンはいつも面白くて笑えたので、何事もムダにはならないもんだなあと思った。
いろんな水が出てきて、水ってなんなんだろうかと、ちょっと考え込みそうになる。形もなく色もなくて、そのわりに「聖なる」とか「毒素が」とか“色”をつけられやすくて。
筒井さんは、舞台挨拶やインタビュー記事では、こんなに生真面目で礼儀正しくて良識派っぽくて、どうやってお芝居なんかするんだろうと思うのに、映画の中では狂気っぽさを弾けさせたり薄めたり自在にやっていて、奔放な天才のしていることにしか見えないのが本当にすごい。
私は木野花さんに泣かされる率が高い。『閉鎖病棟』とか『ユンヒへ』とか。依子が泣くところで一緒に泣きたくなった。あと「みんな、なかったことみたいにしてるけど~」というセリフにうなずく。乗り越えてしかるべきもの、他の人はちゃんと乗り越えているもの、なのに自分だけつまづいてそこから進めないものってあるなあと思うので。
磯村くんは父親が出て行ったときの母親の様子を回想してしゃべるという芝居臭くなりそうなシーンも自然にやっていて、なんかもうありがたいなと思った。わざとらしくやられたら、こっちまで恥ずかしくなりそう。舞台挨拶で監督が「(磯村くんは)たぶん現場が好きな人なんだと思うけど」と言っていて、ああ、そうなんだろうなと思った。「(磯村くんは)足が長いんですよ!」とも言っていて、それは知ってるなと思った。
観たい度○鑑賞後の満足度△ ラストは誉めてあげましょう。それ以外は如何にも中途半端。シンボリズムやイメージが先行していて人間が描かれていない。
①キムラ緑子、江口のりこ、安藤玉恵、ムロツヨシ、平岩紙、木野花、柄本明と云うメンツが揃ったらもうコメディしかないでしょう、と思うが余り笑えない。緑命水の座談会シーンももっと笑えるか、と期待したが苦笑がやっと。
監督が「これだけのメンツが揃ったらコメディと思うでしょう。でも違うんですよ。」と言いたかったのか分からないけれど、かといってシリアスなドラマでもないし、面白いわけでもない。
江口のりこや平岩紙がにこやかに微笑みながら恭しくお上品な口調で話していると、そのうち何か起こすんじゃないか、起こるんじゃないか、と期待しましたが何も起こりませんでした。
「どうでもいい話」と「どうでもよくない話」とのボーダーラインにあるような映画。
やたらシンボリズムやイメージ(水、雨、波紋、波、人間の手・足・脚)は出てくるのだけれども、これだけ人間の内面を描いていない映画も珍しいかも(誉めているのか貶しているのか自分でも分からないけれど)。
②見たくもない男の足の裏のアップからスタート。筒井真理子演じる妻は其方に頭を向けて寝ている。これでこの夫婦はもう上手く行っていないことを表しているんだろうけど、もしかして足フェチ?或いは旦那の足の臭いが気にならないほど実は仲良し?なのかとも思ってしまった。
③女性監督だからか女性の嫌な面ばかり目につく。
筒井真理子の視線が怖いし、嫌なもの・嫌いなものからフッと顔や身体を背けるところはなかなか上手い。
帰ってきた夫の飯を食う音、味噌汁を飲む音に嫌悪を示すところなどはリアル(その事で奥さんに文句を言われると愚痴る上司が昔いました)。
ただ、介護している養父のお粥には飲んではいけない?水道水を使ったり、夫や息子の恋人(絶体やったと思う)の歯ブラシで洗面台や排水口を掃除するなんて、嫌いな上司のお茶に唾を入れるOLみたいなセコい意地悪で苦笑。
④息子の恋人が障害者(であろうがなかろうが不快だったと思うけど)というところが別の切り口かと思ったら、結構厚かましくて息子を盾に脅すなど図太いと云うかずる賢い女性として描いているところは新鮮。
⑤時々挿入される水面に主要人物が立って話をするシーンは画的に陳腐。
⑥木野花が演じる掃除婦のオバサンが一番人間臭いかな。
『ヴィレッジ』ではもうひとつ生彩に欠いたが、あれは彼女の芝居が悪いのではなく演出と脚本のせい。
彼女と主人公との交流シーンがこの映画で最も人間的だと思える。(しかし、「仕返ししなさい」と焚き付けられるが、瀕死の爺さんに自分に遺産を遺すよう遺言書を書かせたのだから既に仕返ししてるじゃん。)
ゴミ屋敷みたいな彼女の部屋も凄いが、それを見事に片付けた主人公もある意味凄いというか、そういえばこの人の家も庭もゴミひとつないような3S ぶり。あんまりこんな人と一緒に住みたくないなあ。
⑦ラスト、雨の降るなか喪服でフラメンコを踊るシーンは、これまで観たことのない画で、これは面白かった。
全159件中、121~140件目を表示