波紋のレビュー・感想・評価
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クレイジーな脚本についていけず…
「新興宗教」というワードだけ聞いて面白そうだったので鑑賞。
起承転結の大きな「転」がなく、ずっと平行線でぬるっとして話が進んでいく。まるでコンテンポラリーな演劇を見ているかのよう。
夫の食事中のくちゃくちゃ音とか、主人公が枯山水の手入れをする時の砂の音など日常のちょっとした不快な音を演出するのが上手いなぁって思いました。劇中のとある音がラストシーンの伏線になっていたりね。
結局、緑命会に費やしたお金はいくらだったんだろう?水買って貯金が無いのかと思いきや治療費も出せたわけだし…
スーパーのクレーム爺さんは半額にせざるを得ない事情があるかもしれないから仕方ないって感じで終わったけど、いやいや許しちゃダメでしょう。その人をOKしたら真似する人が出て収拾つかなくなりますよって思いながら見てました。
夫が新興宗教の勉強会に連れていかれて、祈りの踊り?をさせられてる時の光石さんめっちゃ可愛かったです(笑)手で丸つくるところをハート作ってたところが特に。
あと磯村勇斗さんの演技も良かった。昨年は「PLAN 75」や「異動辞令は音楽隊」にも出演され大活躍ですね。少し影のある役が似合います。この映画では彼女を連れてきてイチャイチャしてるシーンがほっこりします。手話してる姿も素敵です。
最後のフラメンコ踊る場面もよかったです。喪服と赤がとても映えていました。
見終わって「脚本頭おかしいな」って思いました。もちろんいい意味で。ストーリーは特に面白くはなかったのですが、嫌いではないです。
緑命水売ってほしいwそしてムロ探し!
5月上映作品で1番観たかった本作!荻上直子監督、脚本。筒井真理子さん、光石研さん!!もうこれだけで高まる期待!
近年はジャンルレスな作品で意見が割れる事もある監督ですが、本作も然り。震災、介護、新興宗教、障がい差別、ご近所付き合い、更年期、親ガチャ、職場環境と幅広い題材を取り扱っているように見えますがそれは、私達の「日常」特別な事ではないのです。悩みのウエイトを占める割合は誰しもが違いますが、ない人はいない。みんなどうにか折り合いを付けて生きている。
依子(筒井さん:役名まで考えられているね)は夫の修(光石さん)の失踪→義父の介護看取りを経て宗教へのめり込んでいく。日常の小さな波紋がぶつかり合い徐々に広がっていく。頼るものを必要としている依子は自立するのか?出来ないのか?が見所かな。
緑子さん演じる宗教のリーダー的存在のうわっぺらのうっすーい発言に比べて木野花さん演じる清掃のおばちゃんの言い放つ的を得た正論が痛快!でも依子の心は緑命会で満たされていて届かない。もどかしい!そんなおばちゃんにも闇があり。。病院での何気ない会話からの仏壇のシーン!泣くってば!!( ; ; )
物語は静かに、それこそ波紋が広がっていくように流れていきますが、出演者が全てにおいて良い味出してて濃いです!江口さん、紙ちゃん。もう怖くて笑う!玉ちゃん!猫来てるからw!最近よく会うね、息子の拓哉役で磯村君!変な爺さん役で柄本さん!又いるw!良いですね!そんな中で目が離せなかった彼女役の珠美を演じた津田絵里奈さん!!素晴らしかったです!!!小柄でちょいダサめってのが又憎らしさ倍増でw あの舌っ足らずな話し方で「おかあたん」「たくちゃん」ってもう、キーーーΣ(-᷅_-᷄๑)!ってなるなる!普通彼氏の母親と2人だけで出かけるなんて絶対嫌なのに笑顔で行きたいですぅ〜って。腹座ってんなと思った上をいったあの場面!おおおー!
依子さんの反撃で少しシュンとしてたけどw ただ(敢えてこう書きますが。。)障がい者が健常者と同じ様な重さで皮肉めいた事を言う時、もっともっと嫌味な言葉で着色しないと同等にならない感じ。わかりますか?文才なくて伝わらないかもですが、やっぱり障害者=可哀想って感情って植え付けられてるんだな〜って。まさか障がい者からあんなトゲを刺されるなんて想定外。って思いませんでしたか??すごいシーンでした。今後注目です!(津田さんは二児のママさんなんですって!綺麗なママで羨ましいなぁ〜)
そして時折挟まれた手拍子の意味。長回しのラストシーン。こう繋がるのね。絶望にのみ込まれるな、前に進もう!解き放たれた依子さんの解放感が見事に表現されたラストでした。正に「絶望を、笑え」
筒井真理子さん「よこがお」超えの代表作になりますね♪こういう邦画がもっと売れればいいのに!緑命水とか売店で売ってさ。みんな出先で持ち歩いてさ。ブラックで楽しいじゃん。そんな日常って良いのにな。とりあえず40代以上の人は全員観て欲しい!
現代劇の様は、普遍的かも。
全編を通じて、ブラックユーモアの様に感じた。笑えるところは沢山あるけど、悲しく虚しいばかりだ。
信仰の集いとプールの友人との場と夫婦の場。3つのシーンがとても対比的で、主人公はプールの時間が、本当に生き生きとしている。
その姿が本当に素直に見える。
あゝつまり
人間の業ってのは恐ろしい程に美しい笑みを浮かべて、身の周りに広がるのだな。ってのが感想。
こうあるべきだ。なんていう常識人が出てきて、都合よく困難を解決して、ハッピーエンドになんてしてくれない映画です。
誰一人そんな人は出てきませんので。
ずっとニヤニヤして楽しんで下さい。
シリアス?いやいやコメディ???…⭐︎
荻上直子監督の作品ということでの鑑賞。
「川っぺりムコリッタ」が、自分のテイストではなかったので あまり期待せずに観たが、
今作はとても面白かった。
筒井真理子演じる須藤依子のもとから、三石研の夫が震災の放射能怖さに失踪するという冒頭。
ちょっと唐突ではあるがその後何年かで夫がガンを患い、また突然の帰宅。
その間に依子は、「緑命会」という新興宗教にハマる…まさにハマるという感じで勉強会と称する
集まりで月並みに水とか水晶玉とか買わされている。
その勉強会に集まる面々が、江口のりこ、平岩紙はじめ信者が皆んな同じ目をしているのが、
真実味を帯びていて、怖いような笑えるような…
お祈りの踊り(?)も思わず苦笑してしまうが、それもありそう。
実際、自分もその手の宗教の勧誘を受けたことが何度もあるが本当に皆んな不気味なくらい
幸せそうな悟ったような表情をして声をかけていくる。
途中、何度も歌舞伎の幕間に響く拍子木のような音が場面ごとに鳴り響くがいったいなんだろう?
と思いながら観ていたら、夫が亡くなって、息子役の磯村勇人が葬式に参列後 帰る際に
筒井真理子に「また、昔習っていたフラメンコでもやったら…」という一言でその音が
フラメンコで使うカスタネットの音だったんだとわかる。
ラストシーン、雨の中 カスタネットの音とともにフラメンコを喪服(着物の)で踊る筒井が
素晴らしい。
全てを突き抜けたような爽快感が漂う。
とにかく、これという主役になる役者がいないような感じなのに、出演者が全員上手い。
磯村勇人の彼女役が本当の聾唖者というのも納得。
映画に出ずっぱりの柄本明、安定の木野花、キムラ緑子。
ムロツヨシは、鑑賞中はわからず 後からググってみました。
皮肉を笑う
更年期、老いを感じるお年頃。
何かに縋りたくなる時もある。
章転換でリズミカルな奏でる手拍子が、
最後のお見事な「あれ」に繋がるのは
素晴らしい。
柄本明へのあの返し方は
「スカッとジャパン」並みでした。
緑子さんで緑水…(笑)?
文章は苦手なのですが興奮していますので初めて書きます。
You TubeのCMで予告編を一部拝見したときから観たいと思っていた邦画でした。
波紋…。
はじめから最後まで共感ばかり。あるあるある…。
更年期障害は自分はまだなんですが(きっとあれはホットフラッシュ?)、細部まで理解できたつもりです(宗教…、その中での炊き出し、消費期限切れのお水配りでさえ“徳積み”だと洗脳されている感覚)。
冒頭の水道水を使ってのお粥…。
レジのパートでいつものクレーム客。
カマキリ…(うちの父、その虫だいっきらいです笑)。
同僚の、清掃員なのにゴミ屋敷…。
…でも、彼女の存在は大事で息抜きでしたね…。
お部屋掃除したことは徳を積んでいると思いました。
緑水会という新興宗教のお水……、人間…生物はお水が大事ですからそこからの洗脳云々… あるある。
一人息子の彼女、、に酷いこと言ったり…。
そして息子は母親をよくわかっているなぁ、と…。
(それにしても…よく夫をあんなに支えていて偉いと思いましたね!黙ってご飯つくったり…歯ブラシの件はあったとしても)
“切磋琢磨いたしましょう”………。言われなくてもみんなしてるワ!!て思いながら…
石庭、枯山水はとても素敵でした。
ラストシーンの情熱的なフラメンコ!
とてもカッコ良かったです!!
私はフラダンスしか経験がないのですが、ママ友がフラといえばそれら両方を習っているのでステップは生で見たことありましたから、感動しました。そして笑いましたよ!
傘が赤だったので色もシンドラーのリストじゃないけれど赤と黒の対比ですね。
喪服って緋色をあの色に染め、作成するので(私も未だ袖を通してはおりませんが持っているので存じております)、踊っている最中に肌襦袢が赤くなった!?と思いますが私は全く違和感なかったです。
場面展開でフラの手拍子…でしたね。
女性の監督さん。だからか…納得。
とても面白かったですよ!
世の男性たちがこれを見てなにか悔い改めたらな…なんて思ったりします(笑)!!
今帰ってきてYou Tubeで舞台挨拶などをTVから拝見しております。。見ながら書いています。
乱文失礼いたしました。
明日からまた頑張ります。
絶望!!楽しも。
【訂正】
正しくは…
緑命水で、緑命会でした。
誠に失礼いたしました。6/19
うまいよなー。
荻上監督色。ワンシーンワンシーンをパズルのように淡々とつなげて描いていくの、うまいよねー。福島原発から宗教問題、差別発言やらなんやらてんこ盛りな題材をサラッと表現、心に染みる…。監督の力量と芸達者な役者が噛み合うからこそ。良かった。
手拍子はそういう事でしたか
他評者各位の談論風発ぶりが示す通り、様々な解釈を許容する良い作品。
当初は依存していた宗教団体すら利用し(という自覚はなさそうだが)夫の罪悪感を刺激して追い詰め復讐を遂げる筒井真理子の怪演は,清々しささえ感じさせる。
漫画「妻が口をきいてくれません」の無神経夫はこういう最期を迎えるのだろうな。
🇯🇵ぽい作品
邦画じゃないと味わいにくい作品。
こういうのもたまには良い。
モヤモヤを楽しむという、不思議な作品。
枯山水の庭は素敵だ。
水がないのに水を表す、無いものをあるように
あるものを無いように。
見えてる面が、その人の全てでは無い。
主人公、旦那、同僚、息子、息子のフィアンセ、宗教仲間、
ホームレスの男。。
見えてるものが真実とは限らない。
味のある作品。
妻帯者には頭が痛い
筒井真理子さんが色っぽくて好きで主役は珍しいと思い鑑賞。
筒井真理子さんの演技の素晴らしさが引き立ってます。
顔の表情だけで心情がわかるほど、宗教団体の江口のりこさん、平岩紙さんの宗教団体の信者の演技は流石。
木野花さんも高齢者役をなされるようになったんだと改めて自分でも歳をとったんだと思い知らされた。(ビレッジでも寝たきり老人役されててびっくりしたけど。)
内容は社会問題、特に個人に関わる誰もが当事者になり得る問題をいくつも取り上げていて考え方を改めさせられるられる点や、そうだよな~と納得すること等、うまく描かれていて良かった。
木野花さんが迷惑老人にも計り知れない事情があるかもと言ったシーンとか、3.11で部屋が散らかってしまった時にプツリと何かが切れてしまったとか、高齢者がひとりで抱える問題は表に出てないだけで日本中どこにもあることかもしれないよね。
宗教家が言う教義は最もなことだけれど、宗教に溺れずにそういう思考でみんなが暮せば幸せな社会になるのだろう。
どうしてもひとりで抱え込んで悩み、不満も言えずって状態が最も人間にとって悪いことなんだと思い知らされた。
自分も妻帯者である以上、反省します。
こっちを選んでよかった
注目作が目白押しの状況で
見たい映画がたくさんある
時間の制限があるなかで
どれを選ぶかとても悩んだ
そんな中で、どう見ても注目されてないし
話題にもなってないけど
何か引っかかる部分があり
観ることにしました
宗教にすがる、ハマっていくロジックもやむなしだし
こんな形で、人には言えない、表には出せない感情や境遇に生きている人は
世の中たくさんいるのだろう
クレームをつける爺さんも
掃除のおばちゃんも
そうなのだろう
彼女の心の内を表すような
無に近い意味合いで
音を避けて制作されていて
とても良かった
時に「ズーン」ってなる感じも
洋画あるテイストで良かった
半面で心が躍るような場面では
邦画特有の、例えて言えば伊丹作品のような
コミカルな音も組み合わせてましたが
こっちの演出は古臭くて不要だったと思います
定点で示した画角には
部屋や庭の状況が変わる
それを示すことで
変化を表すのもとてもいい演出だった
ずっと見ていられる映画だなと思った
ラストシーン
雨なのに、晴れていて
「気が回らねーな、どんな天気だよ!?」
って思ってたら
あの舞!ちゃんと意味があったので
満足感が高い映画になりました
とてもおすすめできる一本です。
名バイプレイヤーのオンパレード!
前情報無しに観たのですが、なかなか面白かったです。
作品を支えるキャストが素晴らしいですね。劇団系な感じの役者さんで好きな人ばっかりでした。
ラストはポンジュノの母なる証明を思い出す感じで好みでした。
それにしても柄本明さんどこにでも出てるな~
要所要所笑える
筒井真理子の様々な表情と怪演と言っても良い病んでる心情
信者達のヤバい目つきに印象深い唱えに振付w
磯村勇斗がもっと場面あるのかと期待したがそこは残念
劇的要素はそこまで無いものの何だか笑えながら少し考えてしまう感じでした😅
ラストのムロツヨシの名前に、あれそうなのか的でしたw
特別でない話に見える闇
想定外の出来事があっても、日々は淡々と続いている。
あり得る話の積み重ね、どちら側から話を聞くのかでまったく印象が違ってくるといった、そのアンバランスが絶妙に面白かった。
清く正しく美しくな気分もあれば、倍返しな勢いの時もあるのが人間だよねって思う。
波紋疾走
2011年、突然失踪した夫が10数年ぶりに姿を現して、ガンで保険適用外の治療が必要と言い出された妻の話。
原発事故による放射能汚染が騒がれる中、妻と要介護の父親と高校生の息子を残し失踪する夫の様子から始まって、気付けば10数年後、父親は亡くなり、妻は新興宗教にハマり、息子は九州で進学~就職し、そして夫がひょっこり帰って来て…。
見返りを求めない善行を訴えるけど、先生の祈りや波動には見返りが必要な宗教ですか…w
序盤~中盤は突然帰ってきた夫に嫌悪感を感じさせつつのホラーコメディの様な展開で掴んでおいて、中盤からは主人公がヤバいヤツ!?
清掃員の家の件は気付きか目覚めか、そしてトドメの特別な緑命水。
ストレス、ストレス、ストレス、ストレスの波紋をぶつけ合う様はユニークだし判りやすいし、無いのに有る、有るのに無い水に掛けた感情と本質と…とても面白かった。
宗教も邪悪な人間の前には無力
2023年劇場鑑賞119本目。
ある日突然夫に失踪された主人公。夫が数年ぶりに戻ってくると妻は新興宗教にハマっていて・・・という話。この前に観た映画がなんの変化もないただただ退屈な映画だったのもあって多分5割増しで面白く感じた気もします。
この宗教、心の弱みにつけこんでお金を巻き上げるような悪徳宗教ではあるのですが、教えとしては穏やかに生きろと真っ当なことを言っています。しかしこの筒井真理子演じる主人公の生来の底意地の悪さが宗教の教えを上回ってしまっているのが面白かったですね。
ラストシーンの狂気っぷりもなかなか。ターで見たかったのこういうことなんだよなぁ。
(追記)思い返すとじわじわと面白さが蘇ってくるので満点に変えました。
滑稽に生きてこそ人生
常識的な人間かと思えば、裏の顔的なキャラクターしかいない。のが面白い。
普通の夫は突然失踪するし
寝たきりの義父はセクハラするし
普通の主婦は新興宗教にハマってるし
健常者の息子は障碍者の婚約者を選ぶし
清掃員の家はゴミ屋敷だし
近所のジジイはクレーマーだし
隣の家人は猫を放し飼いだし
心の支えの宗教家は怪しい水を売りつけてくるし
ホームレスはムロツヨシ
一見、普通の家族に見えても、親切に見えても本心じゃない。腹の中で考えていることとは違う現実を選択しているから、物語上では殺人事件は起こらない。それが普通。私が生きている世界と何ら変わらない。
普通って一人一人が自己を抑制して初めて社会になっていくのだなぁと感じる。
ただ、とてもストレスが溜まる。
普通にするのって、周りの人間に合わせて働き、にこにこ笑いながら悲しみやイライラを飲み込むためには宗教だったり、お部屋だったり、自分のガス抜きをする必要があったんじゃないか。
主人公、依子が緑命水の教えを盲信している時には夫は生きている。最後、夫が死んで骨になったら、家から水は無くなって、祭壇も跡形もなく、夫の遺骨が置かれている。
つまり、依子にとって宗教は自分のガス抜き、アンガーマネジメントをして、普通の社会を生きていた。
一滴の水〜🎵と宗教で歌うけど、振り付きで3番まであって思わず笑ってしまうけど、歌詞をよくよく聞いてみたら当たり前なことを歌ってて、普通にすることって難しいんだなと、少し悲しくなった。
1人で水面に落ちれば、波紋はどこまでも広がっていくのに、人間と関われば関わるほど、自分の波紋はより大きな波紋に打ち消されてしまう。
波紋は声と置き換えても良いかもしれない。
胸の中に広がる声は関係が近ければ近いほど伝わりやすい。
モノクロで水面の上に立って描かれる波紋のシーンでは、近くにいた息子が、相対する立ち位置に変わり、恋人と同じ位置から母親に波紋をぶつけてくる描写が面白かった。
依子の好き嫌いが玄関の靴の位置で分かるのも面白かった。
映画ではほとんどの場合、主人公に感情移入して物語の世界に没頭して楽しめるのに、普通だと思っていた主人公が新興宗教にハマっているので、感情移入や同調することが難しく、観客も一滴の水と同じ、客観的に波紋を受け取る立ち位置で映画を鑑賞しなければならないのも面白かった。
主人公に感情移入しない、他人の目線であるからこそ、依子が災難に見舞われて奮闘する姿を「滑稽だなぁ。」と達観しながら観ることができた。
半額ジジイに「お客様は神様だろう?」と言われた時に
依子が「夫が癌なんです。神様ならどうにかしてくれますか?」と言って撃退したのが痛快だった。今度やってみようと心のメモに刻んだ。
生きているだけで、人と関わるだけで波紋が生まれ、自分の元に届いてくる。
関係が希薄なはずなのに、自分とは関係ないと思っているのに、ないはずなのにある。
庭の枯山水は自分の心の声を表面化させた形だ。
心理学でも箱庭療法と言う物があるけど、それに近い。
なのに、自分の心の庭にまで隣の家の猫が入ってきたり、夫が踏み荒らしたりする。
最後、棺桶に入って心の庭を渡る時、棺桶を運ぶ葬儀屋が歩道の飛び石をうまく渡れず棺桶が転がる。
依子の心の池に死んだ旦那が転がってる。
でももう、波紋は生まれない。
思わず笑いたくもなる。
怒りをおさめるガス抜きとして利用していた緑命水も入らなくなったところで、自分の元を去る息子から「昔やってたフラメンコでも始めたら?」と言われる。
依子は息子の波紋を受け取り、フラメンコを踊って幕が閉じる。空は天気雨。晴れているのに雨が降っていて、やっぱり普通じゃない。
今までの監督の作品とは違った雰囲気の作品だけど、やっぱり絵面は綺麗で清潔感がある。ゴミ屋敷も片付けるし、丁寧な暮らしぶりが垣間見える。
他の作品ではそれらは清潔感と清涼感を演出してるけど、今作では几帳面で潔癖で息苦しい。
ちょっとバーバー吉野に近い雰囲気だった。
これは何となくだけど、川っぺりムコリッタあたりで監督も身近な誰かを亡くされたんだろうか?
前作から死を意識する作品が続いている。
それとも、そんなお年頃なのか。
ともあれ、更年期の描写を含め、リアリティのあるキャラクターにいつも引き込まれる。
ムロツヨシがひょっこり出てきて、会話するのも良かった。ムロツヨシ出てきた!と思ったけど、一緒に観ていた相方は気づかなかったらしい。
それほどちょい役だった。
ハマる、ハマらないがある映画だと思うけど、私はやっぱり荻上直子監督作品は波紋を受け取れるな、と感じた。
波紋って、自分が黙っている時にしか自分の元に届かないんだな。
自分も声を上げると、相殺してしまうんだ。
波紋を受け取って欲しいなら、相手を黙らせる必要があるんだよな。
と、徒然なるままに考えを書き殴ってしまいましたが、自分の心と向き合える作品です。
是非、劇場でご覧ください。
また、Twitterではイラスト付きレビューを無料で公開しています。「王様のねこ」で検索してください。
Instagramにも同じ記事の掲載あり。Filmarksではフォローしてくださった方はフォローバック100%です。
よろしくお願いします。
趣旨は多いに理解できるが、どれか一つに絞ったほうが良かったのでは…。
今年174本目(合計825本目/今月(2023年5月度)31本目)。
tohoシネマズさんの映画のラインナップとしては問題提起型という、万人受けるする映画ではないものの、80%くらいの埋まりようでした。
ここでもすでにかなりの評価があり、他の方が触れている点は同じになるので多言を要さずバッサリとカットします。
結局この映画で主に上げられる問題は、「問題提起は理解できるが、多数の論点を入れた割にどれも明確に最後まで描かれない」「突然帰ってくる夫に対する「正しい対応」の不足」、さらには、「個々個々、妙なまでにセリフが少なく、ある程度補う必要がある」「いわゆる、炊き出しについて」等の論点ではなかろうか…と思います。
特に1番目と3番目は他の方も触れている方がいるので、2番目と4番目は資格持ちとしては明確に気になったところです。ただ、これをどうこう言い始めると「映画のストーリーが成立しない」という妙な事情も抱えているので、どこまで考慮するのかは微妙です。
また、問題提起型の映画であることは明確も明確であるのに、ラストが珍妙な終わり方をするなど(最近の映画だと、「もっと超越したところへ」が似ている?)、その珍妙さもあいまって混乱度合いは高いです。
なお、映画の趣旨その他としては、2020年だったか19年だったか、「星の子」が趣旨的に近いです(完全に同じではない)。
行政書士の資格持ちのレベルで気になったのは以下の通りで、4.2を4.0まで切り下げています(これらの行為についてエンディングロールで説明がない点も考慮しています)。
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(減点0.4/いわゆる炊き出しについて)
・ 炊き出しについては、食品衛生法ほかこれらに関係する法律の外の場合であっても(規模要件等)、都道府県では通常、「申請義務はないが通常申請をお願いします」というようになっています。それは第一義的には「食中毒が出た場合の対応ができなくなること」と、もう一つは「無償配布か有償配布かでトラブルになるから」という2つにほぼ絞られます。
一応、「お願いします」の扱いではありますが、日本では当然、「お願いします」のレベルでもあっても、行政が管理している土地でやる場合は結局強制されてしまう点もこれも事実で、かといって映画内でこれを行ったと思われる点もなく(なお、いわゆる「炊き出し」と同時に、ワンストップ事業として生活保護の申請代行などを、行政書士でない方が行うと法律上アウトです)、ここはちょっとどうなのかな…というところです(本問題は「食品衛生法で定める範囲外であっても、食中毒を出さないように保健所が一元管理する、という公衆衛生に関する「パニックの防止」が論点なので、いかに「お願いします」とはいえ、無申請活動がまかり通ると大混乱します)。
※ なお、大震災ほか「申請に対して許可を得るいとまがない場合の緊急的な炊き出し」については、多少甘くみられているようです。
(減点0.4/そもそも主人公が取っている行為も謎)
・ 突然帰ってきた夫…という設定ですが、その「長期間帰ってこない」ことは当事者である妻が一番知っていることです。そしてその状況で遺産相続等を行うと面倒なことになってしまいます。
婚姻後の裁判上離婚は民法770条に規定があり「3年間生死が分からないとき」がありますので、これを使わなかったのか…という気がします(ただ、この規定は「生死がわからないという中途半端な一方側に強制的に申請せよ」というものではない)。また、遺産相続については行政書士・司法書士が間に入ることが多いですが(不動産の登記名義等がからまない限り、行政書士でも可能)、このとき、「そもそも法律的に決着していない、宙ぶらりんな人がいる」ということを把握していない(厳密にいえば、主人公もそうした専門家を呼んだ形跡は見当たらない)のが問題で、それが「生前に残したお金がどうこう」といった問題になってしまいます(裁判上離婚していれば、たまたま帰ってきても「ただの人」でしかない)。
こういった部分の考察が抜けているため、特に「お金の捻出方法」について明確に配慮を欠いている部分があり(当然、適正な対応を取らないのであれば、いつ帰ってきてもおかしくならないように、適切な対応が必要)、この描写が何もないのはちょっと気になりました(このように、当事者が明確に「帰ってこない人がいる」という状況で、専門家抜きで遺産相続をやるとあとあと面倒くさいことなるのは、当事者がそもそも知っているはず)。
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