波紋のレビュー・感想・評価
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憎悪と狂気の波紋
なのだろう。
あれほど嫌悪感を抱かされた修も、やがて死期が近づくとすべてを達観したような態度になり、不思議と観ていて安らかな気持ちにさせられる。
依子は突如倒れてしまった水木の世話をするうちに、少しずつ心が穏やかになっていく。
清掃員であるにも関わらず彼女の部屋はゴミ屋敷なのだが、震災が起こった日から彼女は部屋を片付けられなくなってしまったらしい。
不当な値引きを迫る老人にも、切羽詰まった理由があるのかもしれない。
その人のことを知れば、実は人は簡単に人を許すことが出来るのだろう。
人の醜い部分を描いた作品なので、とてもドロドロとした印象の映画になってもおかしくないのだが、やはり荻上監督はコメディのセンスがある。
間の取り方や空気の壊し方が絶妙で思わず笑ってしまう場面が多かった。
ラストの雨の降る中、喪服姿でフラメンコを踊る依子の姿が印象的だが、筒井真理子はいつ観ても不思議な色気を感じさせる女優だなと思う。
胡散臭い信者役の江口のりこと平岩紙の存在感も絶妙だ。
一滴の水〜♪大海に〜♪
「はもんしっそうだとォーッ!!」
あ、大丈夫です。カーズ様は出てきません笑 結構好きなんだけどなぁ。で、「波紋てなに??」が拭えなかった。全員気持ち悪い(でもたぶんこれが一般社会)のも良かったし、唯一のマトモな人が終盤のキモで心を掻き回されたりと色々とあったのだけれども、ラストのラストでどーでも良くなる稀有な作品でした。「怪物」でも思ったけれども、」視点の違いと色眼鏡で袋叩き」は最近の美味しいファクターなんでしょうかね。まぁでも、昔から変わらないとも言える「業」に近いもんな気もしたりするけども。
「推し活」に対する風刺が一番面白かったかな。
色んな社会問題をつっついてて興味深い。
原発、差別、宗教、精神疾患などなど
ただ、どれも深入りもしていないし
正解もない。
むしろ誰が悪い訳でもない。
だから鑑賞後、答えが見いだせている訳では無いけど
考えさせられる。
うわ・・外へ出ちゃうんだ・・
「怪物」の造り手が軟弱に感じる図太さ。一人でハマって、一人で枯山水、一人で出ていき勝手に帰る、たくましく妊娠、ストレートに差別。実際の社会で生きるにはこれ位じゃないと駄目なのかも。笑えるシーンも有って、ジョジョみたいな効果も面白い。
フラメンコ💃
ストーリーの説明にあるように信仰宗教、介護、障がい者差別、ご近所トラブル⁈、老害案件。
皆、誰にでもあるはずなのに、他人事のうちは「大変だなぁ」くらいに捉えてる。
自分に降りかかると、とたんに被害者面。
そんな一面(起こる事はてんこ盛りだけど😓)を静かに徳を積むように鎮める(決して受け入れてはない)主婦のお話し。
めちゃくちゃ面白かったか?と言われれば、そうでもない。
ではめちゃくちゃつまらなかったか?とも思わない。
現代社会において、必ずどこかで起きている物語。
こういう役をやらせたら筒井さんは抜群にいいね。
たぶん、最後のフラメンコの件は全てを昇華した「達観の舞」を表現してるんだろうけど、なんか強引な〆に感じた。
せめて、息子が開いたアルバムに「昔習っていた」体の布石でもあればもう少しすんなり受け入れらたと思う。
0.5単位の評価だからできないけど、気持ち的に3.2くらいの評価です。
「お客さんに波紋のように伝われば」
今年85本目。
波紋のタイトルから見える、お客さんに波紋のように伝わればと俳優さんも思われて自分も感じました。今の時代女性の方が強い、納得です。まだ御覧になられていない方もいるので息子さんが彼で良かった。抑圧からの解放もテーマだと思いますが、自分は解放した時に気を引き締めるようにしていて、作品は解放がいかに美しいか描いています。
平安を得るために自分を否定するという矛盾
記憶が正しければ、ですが
修(光石研)が「癌なんだ」と言うと、依子(筒井真理子)が「ごはんたべてく?」と返したような。チグハグにも思える返球に、修はちょっと戸惑いながらも、「うん」と答えたような。
つまり、父に線香を上げに、と帰ってきただけの修を、留めたのは依子だったのでは?違っていたら、すみません。
でも、もしそうなら、荻上直子監督の意図的な、そして本質を突く描写が、そこにあったように思います。
あれほど嫌悪し、あれほど憎み、あれほど拒絶しているはずの修に、いてほしかった、という矛盾。
いてほしかったからこそ、夫の失踪の喪失感を埋めるために、緑命会に入信せざるを得なかった。そして緑命会では、ひたすらに自分の心を抑圧することで、かりそめの平安を求めた。夫が帰ってきてからもそれは続き、しかし、同時に水木(木野花)の共感に支えられて、恨みを解放していく矛盾。
その矛盾の中で、依子を本当に救ったのは、宗教ではなく、水木の共感。水木もまた、誰も踏み込ませなかった自分の部屋を依子に解放することで、心を解き放った。
自分を救ってくれるのは、宗教ではなく水木の共感、それはある意味の赦しなのだ、と徐々に依子は気付き、だから、依子は特別な緑命水を買わない選択ができたのでしょう。
しかし、息子も自分の意にそぐわない女に盗られ、夫も亡くなり、家庭という彼女のこだわり、すなわち業が消えた。だから、出棺のその時、枯山水に夫のなきがらが転げ、その両方が本来の在り方から逸脱した姿を見せた瞬間、笑わずにはいられなかったのでしょう。かけがえのないものだ、と思い込んでいた自分のおろかさに気付き、込み上げるばかばかしさが爆発したのでしょう。
そして、フラメンコは命の肯定。
一人の平安に閉じこもることなく、互いの心に波を立て合う他者が、私たちには不可欠な存在。その他者がいてこそ、自分を確認でき、自分を肯定できる。波紋は自分の存在証明です。
こんな映画に出会えることを、本当に幸せを感じます。この映画づくりに関わったスタッフのみなさんに感謝です。
メッセージ
予告編を見て2年ぶりに映画館に行ってみました。
ヒューマンドラマを期待していたのですが、
メッセージ色も強かったです。
結局、夫が失踪したのは何故だったのか。
明確な理由を夫本人は口にはしていません。
困ってる人達を助けるためだったのかも、という気もしなくはないのですが、
久々に戻ってきた家で物色はいただけません。
(歯ブラシ掃除の返り討ちに合っています(笑))
シュールな唄と踊りで笑いもあり。
一方で、心の隙をついた商売への怒りのようなものも感じました。
調べてみると、緑命会のリーダーの役者さんが緑子さんだったり、なかなか面白いですね。
カマキリはドイツ語で「神に祈る女性」、そして寄生虫を抱えている、、、。
前日にネームバリューに惹かれて「怪物」の方を観ましたが、
(おかげで安藤サクラさんをずっと江口のりこさんだと思って観てましたが)
こちらも面白い映画でした。
希望があるのかないのか
私が荻上直子の「かもめ食堂」「めがね」「トイレット」あたりを全く評価しないのは、人間関係の面倒さを「なんとなく言葉も交わさずに通じ合ってしまう人たち」を描くことで安易に切り捨てていたからです。
世間がそれを「癒やし」などと言っていたのにも驚きましたけど。
「彼らが本気で編むときは、」で少し苦手感が後退しましたが、この作品も性的指向の問題を他の問題を描くためのダシとして使って終わるところに反感を持たずにいられませんでした。
そんな私は今作は、好きになれる作品でした。
震災の体験に、ある程度ちゃんと向き合おうとしていると感じたのと、家族でもなく宗教でもないところにも居場所はあるはずだというメッセージにそれなりに共感できるからです。
もちろん、障害のある人の役を当事者キャスティングし、キャラとしても「可哀想な人」の枠に閉じ込めず、ちゃんと自分の意思を自分で表現し、何なら主人公を追い詰めるところまでいく人物として描いているのも大いに評価できます。
マイノリティを可哀想な人(あるいは、可哀想なのに頑張っている善良な人)のままにしておきたい日本映画界においては、画期的だと思いました。
ただ、読み間違えてはいけないのは、息子の恋人も交えた四人のシーンです。あそこは主人公の行動をきっかけとして噴出する男性の身勝手さを描いた場面です。
家事だけでなく義父の介護を一人で背負わされ(夫や息子はなーんにもしない)、さらには夫が勝手に出ていき、勝手に帰ってきて、そんな彼女がちょっと息子の恋人に嫌なことをしたからといって、夫が正義漢のように彼女を叱る資格はなく、夫はこれまで息子の恋人にしたようにちゃんと妻の「味方」をしてきたかどうかを考えなければいけないはずなのに、いざとなると男同士がタッグを組んで女を虐めにかかるという状況を描いているのがあのシーンですね。
むしろ震災の前に、あの家庭から逃げたかったのは主人公の方だったのでは……と思います。(「PRO」のレビュワーがあの頃には戻れない家族の肖像とか言ってますけど、彼女は「あの頃」にはすでに幸せではなかったですよ)
しかしそれにしても気になるのは、この現代に、同じ女性である監督(脚本も書いている)がここまで「家庭」に縛られ続けなければならない女性を描いている点です。
わずかな救いは、女性(木野花)同士の連帯と、フラメンコを踊りながらちょっとだけ家の外に出ることくらいしかないのでしょうか。そりゃ、更年期でなくても苦しくなりますよ。
筒井真理子さん💕
荻上直子監督 × 筒井真理子さん
これは震災、夫の失踪、義父の介護、職場でのストレスなど、様々な苦難に翻弄される主婦を描いた秀作。
新興宗教に入れ上げるのもやむを得ず。
十数年ぶりに突然帰った夫が一番のストレスだったんだろうなぁ。
殺意を覚えるのもやむを得ず。
さらには息子が連れてきた障害を持つフィアンセをあからさまに差別するのもやむを得ず。
そう、湧き上がる黒い感情が大きな波紋となった。
それにしても筒井真理子さん💕
名演でした。
好きです。
市川猿之助の抱えた絶望
映画『波紋』絶望に落ちた主婦のとった道は、この映画を見ると市川猿之助さんと重ねてしまう。猿之助さんの絶望は何だったのか、親の介護の負担が大きかったのではないか、そんな思いが強い。主婦が新興宗教にすがりついたのも大いに納得する。彼女には救いだった
新興宗教に生きがいを見つける妻
夫は、突然すべてを投げ出して出ていった。
残された妻と息子、そして介護の必要な夫の父。
夫は、無責任でいい。
然し残された妻の行く末は。
家のローンは、生活費は、父親の介護は、息子の将来は。
まさに、絶望の縁。
この中で、最も妻を追い込むのは、継父の介護ではないか。
経験したものでないと、この大変さは理解できない。
外からはわからない、介護の絶望
以前努めていた、小規模多機能のホーム。
高級住宅街に住む、ある老婦人。
お屋敷町にすみ、お隣は、有名芸能人の家。
かつて老婦人の乗っていたハーレーが玄関に。
いまは、看護師の娘との二人暮らし。
家は、三階建でエレベーターが。
なに不自由ないと見えるのだが。
老婦人の認知症が進み、ホームのデイサービスを利用することに。
娘が、つくづく語っていた。
「このデイサービスにたどり着かなかったら、多分私は、母を殺してしただろう」
小規模多機能ホームという柔軟性を持った施設が、彼女を救った。
そう、施設につながればいいのだが。
本人が、または連れ合いが納得しないなどなど。
そこに断定はできないが市川猿之助さんの絶望を見ることができる。
何かにすがるということ
そう、すがれるものがあれば、悲劇はさけられる。
介護は、逃げ場がなくなりすがるものがないケースが多々ある。
映画の主婦は、新興宗教に活路を見つけ出した。
誰も彼女を責められないよね。
新興宗教が付け入る要素が、そこにある。
ただ、その方向と程度の問題かな。
多額の献金、おおよそ社会常識とかけ離れた教義などなど。
この映画の予告編で、新興宗教の団体の奇妙な踊り。
そのくらいなら、誰に迷惑かけるわけでもなく。
魂の救済をできなくなった既存の宗教
日本の仏教界、寺院などなど、おおよそ葬式宗教だし。
キリスト教にしても、その活動はまだまだ足りない。
新興宗教は、そこに入り込む。
いかにも簡単な図式だ。
無宗教でも生きてはゆかれる、だけどいつでも人生順風ではない。
信仰は、大事だ。
もう一度信仰について考えたほうがいい。
日本で最も古いキリスト教放送FEBCでも聞いてみたらどうだろうか
宗教の存在
人生の一番つらい時に
宗教の存在が励みになるのであれば
それはそれで構わないと思いました
励みになるなら
友達だって、家族だって、会社の仲間だって
キャバクラでボッタクられたって
本人にしてみれば
対して変わらないのかな
ただ、やり過ぎはよくありませんね
それはそうと
主演の筒井真理子のことは、よく知りませんでしたが
最後の振り切ったかの着物でのフラメンコの演技は
おそらく何年経っても
思い出される名シーンになるのでは?
少し唐突でしたけど
あと光石研の
早く死ぬわ
という日時から逃げるようなセリフも印象深かったです
最後に
3週連続で
磯村勇斗を映画館で観てまして
すごい売れてるんだと思いました
絶望を笑え
教えの縛りに救いを求めるのを観るのは辛い
心のままに動いたら映画も動き出したが、それもまた虚しい
差別されるものとて生きているのだ
波紋の円が足首を浸す
既に関係は壊れていたのだろう
もう、雨に打たれ、つくりものの石の流れを踏み散らかして踊るがよい
実力ある監督と演技力最高俳優陣とのコラボレーション作品
夫が突然失踪。妻の精神を保っていたのは宗教があったから?お金儲け宗教とバレバレだが、そこにはまらなくては世間体を保ちながら暮らしていけなかった妻。そこへまさかの夫の帰還。そこから崩れていく妻の精神。宗教なんかでは人の心は保たれない。監督荻上直子の手腕が光る。実力ある俳優陣の演技でなんでもないシーンがこちらへ心情を届ける。虚構なのだがリアルな世界としてこちらの脳へ深く刻み込まれる。俳優陣のリアル演技場面が頭から離れない。力のある俳優陣と実力ある監督によって作られた心に残る作品である。内容が辛いので星半分落としましたことをお詫びします。
筒井真理子さん主演の緊張感
助演としても存在感のある筒井さんが主演となると、やはり「よこがお」や「淵に立つ」を意識しなくてはならず、緊張感を持って上映を待ちました ポスターやチラシで自転車で疾走するその表情が笑っているのも、何とも怖い、そんな思いでした 彼女に限らないでしょうが、様々な辛苦が降りかかってきたとき、「なぜ私だけ」と思うし、そのぶつけどころのない場面に、にじり寄ってくる「理解者」を受け入れてしまう危うさ それは私たちにも共感するのだけれど、あの筒井さんが人の内面の恐ろしさをみせてくれました
光石研さんと、近所の猫の飼い主安藤玉惠さんはしばしば共演もされていて、キネ旬1位を取った「恋人たち」では水道水に「美女水」というラベルを貼って瓶詰にし、怪しげな水を売るカップルを演じていました
このお二人の存在も、主人公を苦しめる「ダメ夫」「嫌な近所」であり、柄本さんも加え
恐ろしい「脇」でありました
それでもフラメンコを観終わってちょっと希望の持てるラストになったのではないでしょうか(6月8日 TOTOシネマズ梅田 にて鑑賞)
光の屈折
予告で客が店員にキレるシーンがあり、実体験であのシーンと似たような場面に出くわしたことがあったので、観るのを一旦保留にしていたのですが、レビューを読む限りブラックコメディ的な立ち位置の作品みたいだったので、思い切って鑑賞。
思っていたよりも笑えて、役者陣の怪演が目立つ作品でした。
怪しい宗教にハマった妻と、癌を患って久しぶりに家に帰ってきた夫、彼女を連れて帰ってきた息子、そして周りのどこかしらに闇を抱える人たちの群像的物語に仕上がっていました。
夫が帰ってきてからというもの、妻の機嫌は悪くなるばかり。そりゃこれまでの生活の形を一気に崩していくので、イライラが溜まってもしょうがないです。宗教から貰った「緑命水」は勝手に飲むわ、祀ってある水晶玉はベタベタ触るし、庭の砂の波紋の形を変えてしまうし、隠してあったお酒も妻の目の前で飲むしでやりたい放題です。
それに対する妻のやり返しは歯ブラシを排水口でコスコスするという当人はとってもスッキリするやり返し方でした。このシーン辺りから笑えるシーンが多くなっていった気がします。
夫の癌の治療のための点滴を注入中に、一滴一滴垂れることに5万円、10万円とカウントしていくのも面白かったです。その隙を見て乳輪の形をを触ろうとする夫も何してんねんとツッコまざるを得ませんでした。
中盤までは夫がヤバいやつの描かれ方をしますが、中盤を過ぎた辺りから、妻の方にも問題があるのかもという描かれ方をしていきます。
息子の彼女を、障害者と言って嫌悪したり、無理矢理宗教に勧誘したりと、そりゃ家族からも距離を置かれるよなと思いました。夫からも息子からも、その彼女からも拒絶反応を示されるとおかしくなっちゃいますね。
登場人物の背景には東日本大震災と原発事故の放射能が隠れています。放射能を恐れて逃げた夫、地震で倒れた家具をてっきり片付けられなくなったお婆さんと、無かったことの様になっている現状に納得がいかずに過ごしている人物が多く描かれています。
懸念点だったスーパーのレジ打ちで客に怒鳴られるというシーン、最初のシーンはスーパーで働いてた頃の記憶がフラッシュバックして、苦虫を噛み潰した顔になっていましたが、その後のやり返しのシーン
「お客様は神様なんだよ!」
「神様だったらウチの旦那の癌治せますか?」
この返しの切れ味が素晴らしかったです。こう強く言えたら、ふんぞりかえる客にも強く出れるのになとカッコよくも思えました。その後も繰り返し客はメンタル超強かったですが笑
最後のフラメンコのシーン、今までの鬱憤を晴らすかの如く、雨を浴びながら踊るシーンには驚かされつつも、とても見応えのあるものになっていました。自ら流れを変えた妻の大きな変化も同時に味わうことができました。宗教との決別を果たすのか、それとももっとのめり込んでしまうのか、観客に委ねるラストも良い味を出していました。
でも棺から飛び出た夫の手を見て笑ってた感じ、何か吹っ切れたんだろうなと思って一安心です。
食わず嫌いはいけないなと思いました。こういう作品にもなるべく飛び込んでいこうと思った次第です。
鑑賞日 6/7
鑑賞時間 9:20〜11:30
座席 D-3
良い行いは正しい行い?
うお〜、見応えあったな〜。
社会風刺で不謹慎なブラックコメディかつ、奇妙で不気味なシリアスドラマ。なのに、クスッと笑える。介護問題、高齢化社会、障がい者差別、震災要素が全体の3割程度、信仰、夫婦の決裂、母子との関係性がのこり。様々な問題を扱いながらも、「水」を関連ワードにして作品にまとまりをもたらす。流石の、萩上直子監督である。あまり話題になっていないが、もうひとつの「怪物」として並び称されてもいいと思う。
手を叩く音と太鼓の音が混ざったBGM。
もう、この奇妙な音楽?を聴いた時点で確信。これ、絶対面白いやつ。何かに追われているような、ものすごい緊迫感が身体中を襲い、同時に謎の高揚感を覚える。主人公が自転車で坂を下るシーンで流れるこの手拍子。どんどん底へと向かっている、重圧に押しつぶされそうになっている主人公の様子が、意識せずとも伝わってくる。やばい、何かがおかしいぞ、、、。
筒井真理子、光石研、江口のりこ、木野花、柄本明、キムラ緑子といった、恐ろしいほどに名優が勢ぞろい。「この人出演してくれたら間違いないね」ってのがこんなにも出演しているんだから、そりゃ面白いはず。ベテランに囲まれながらも、磯村勇斗もいい演技。てかまぁ、光石研と柄本明と磯村勇斗はよく出ますよねぇ...。筒井真理子のどんどん落ちぶれていく、顔が強ばっていくのには、恐怖超えてニヤニヤが止まらない。こういう役に彼女の配役は言うことなしです。
こんだけの要素が詰まっているから、色々と雑で回収できていない部分もあるのだけど、とっちらかっている感じはせず、割と綺麗に見せてくれます。庭の枯山水は美しく、ラストの筒井真理子もまた美しい。話の流れもスムーズで、引っかかることなく、笑いながら見ることが出来ます。同じようなシーンが繰り返されながら、主人公の心情の変化を描く。シンプルだけど、言いたいことが直に伝わってくるのです。
母親であること、妻であること、姑であること、パートであること、新興宗教の一員であること。色んな重荷を抱えながら生きる女性。本作は少し過剰だが、こういった重荷を抱える人々は多くいるはず。「川っぺりムコリッタ」とは打って変わって、ダークなテイストだったが、かなり楽しめました。「怪物」と併せて、ぜひ。
目を背け逃げる人たち
福島の原発事故が起こったとき、東日本に住む人たちはどうしようもない不安を感じていた。これからどうなるんだろうと。他の地域に引っ越した人もいたが、そんなことできたのは一部の人たちだけ。そんなことを思い出させる冒頭。
夫が失踪し宗教にハマるという女性を描いた作品。宗教は、つらい現実から目を背けたい人がハマる(という個人的偏見)ということを改めて教えてくれる。でもあの家族は皆、何かから目を背け逃げ出したってこと。それは悪いことではない。大なり小なり逃げておかないと心が持たない。
それなりに考えさせられ、ちょっと笑える。悪くはないんだけど、大きな感動は待っていなかった。個人的には、波紋が生じる水面に立ちながらセリフを話すシーンがなんとも心地悪かった。いい意味ではなく悪い意味で。大して効果的だったようには思えなかった。
意外と豪華な役者が出演していた本作。主演の筒井真理子もいいが、光石研がさらにいい。微妙に嫌な感じでダメな男がとても似合っていた。帰ってきてからの食事シーンは絶妙な嫌悪感を覚えるライン。妻の心が乱れるのがよくわかる。あと、ムロツヨシの出演はわからなかった。そうか!あいつがそうか!と消去法では思い当たるけど。なんかムロさんに負けた気がしてしまう。
筒井真理子名演・怪演 「波紋
「かもめ食堂」の萩上直子監督の
最新作は、ブラックユーモアに
満ちたホラーテイスト。
震災、放射能、介護、新興宗教、
障碍者差別と社会派カードを並べすぎた
感はゆがめないが、多分監督の目的は
そこじゃない。
一見平等のように映るが、ますます世の中
大変、女はつらいよ、解放させてあげなよ、と
筒井真理子の抑えた演技に託し、呟いていく感じだ。
キャラも、キャスティングも面白い。
放射能が怖くて家も捨て逃げ出した癖に、
ガンになって「治療費助けてくれ」と
頭を下げるダメ親父に、光石研。
新興宗教の怪しいリーダにキムラ緑子。
同メンバーの信者、江口のりこ。
筒井真理子の勤めるスーパーの清掃員に
木野花。
スーパーにクレームをつける爺さん、
柄本明。
筒井真理子の息子が連れてきた
したたかなろうあ者、
津田絵里奈(彼女もろうあ者だそうです)
他にもワンシーンだけ出るムロツヨシなど
一癖も二癖もあるキャスティング。
変な映画だけど、僕は結構笑えたし
好きでした。
全155件中、41~60件目を表示