「お見事!人のもつ本質を問いかけそれを魅せる、熟年夫婦が迎える旅路とは。」波紋 The silk skyさんの映画レビュー(感想・評価)
お見事!人のもつ本質を問いかけそれを魅せる、熟年夫婦が迎える旅路とは。
蛙鳴き 仰ぐ青空 トビ渡る
岩肌濡らす はぐれ雲
如何お過ごしですか。
今日は「波紋」を 遠方まで久しぶりに遠征して
観に行きました。
この映画は 久し振りの 荻上直子監督最新作なんだな―。
兎に角、荻上さん作品はいつ見てもハマっちゃう。
作品の持つ人の目線や思い、これが何処となく暖かくて。
最初は理解されないのだけど 最後には少しずつ理解されて行く~
周囲の人々の優しさ そして 幸せへ繋がる展開・・・
この人のもつ 心の後ろ姿を魅せてくれるのが
彼女の作品の特徴だと思う。
監督・脚本:荻上直子さん
(MC)
妻(主人公)須藤依子:筒井真理子さん
夫 須藤修:光石研さん
息子 須藤拓哉:磯村勇斗さん
息子の彼女 珠美:津田絵理奈さん
隣の主婦 渡辺美佐江:安藤玉恵さん
パ-ト友人 水木:木野花さん
信仰宗教 橋本昌子:キムラ緑子さん
宗教仲間小笠原ひとみ:江口のりこさん
半額客 門倉太郎:柄本明さん
俳優陣は老若男女揃えてて素晴らしい限り。
この作品には応援してる磯村さんが出ていて嬉しい。
また、津田さんは実際に難聴の女優さんだそうで。
演技かと思ったけどリアルだったんですね。
常連の光石さん演じる夫と、筒井さん演じる妻。
東北震災(原発災害)が起きた地域に暮らす家族の、
この熟練夫婦の織り成す日常の心の変化をユーモア混ぜて
表現展開しています。
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東北震災以降、原発放射能汚染環境に神経を尖らす家族。
水道水は飲んじゃダメ。水はミネラル水。料理に使う水も。
でも御粥を作るのに水道水を・・・ん ナゼ?
その後、要介護の義理の父用の食事だと言うことで。
成るほど~ 早く死んでくれという思いの妻依子。
そこから ぶらり外に出て、問題だという水を庭に撒く夫。
夕食の準備が出来て 夫を呼ぶと、既に夫は失踪していた。
~ココから 映画はどんどん展開していきます~。
数年後、ふとした時に家に戻ってくる夫。
実は彼は癌を患っていた。
最後は自宅でと思い、身勝手だが戻ってきたのであった。
しかし、家には息子も居らず出て行っており、残された妻は
水を崇める新興宗教にどっぷりとハマっていた~。
既に他界した父に線香を上げた修であったが、病名を告げ
この家に居させてくれと懇願する。
そこに東京出張で結婚する予定の彼女を連れて家に戻る息子拓哉。
息子の彼女は耳が聞こえない難聴者であった。
結婚に猛反対の妻依子・・・そして家族みんなの本音が心の波紋として
少しずつ相手の心を揺り返し交差していく。
~ 果たしてこの家族の運命的波紋は収まることが出来るのか~
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実際 有りそうな話だなと思いました。
信仰宗教にハマルとか。
半額おじさんの話も、清掃パートさんの家が汚いとか。
隣の猫がのうのうと庭で寝てたり。
義父の困った食事の世話とか。
定年退職して家にいる夫とか。
困惑したりクスっと笑える日常の数々。
流石 荻上節ですわ。
予想外だったのは、パート友人水木さんの仏壇にあった写真。
あれは多分 あの方の息子さんだったのかと?
それを悟って涙されたのかなと。
少しずつ、周囲の人々の心の見栄と本音が交差して
見えてきて、心の拠り処が最終的に家族(家)なんだという思い。
ジ-ンと来ましたわ。
夫が庭に水撒いてて倒れて、いよいよもう死が近くて。
その状況で宗教的アイテムを薦めてくる 橋本先生に対しての
表情の作りが 筒井さん最高に上手く表していたかなと
感じました。
葬儀の後、夫の遺骨だけが置いてある祭壇に変わっていて
依子の脱信仰を垣間見て 観ているこっちもホッとした思いに成りましたわ。
いつもながら、中々の心情変化を感じ取る事が出来る作品にて
非常に楽しまして頂きました。
荻上作品ファンの方は
是非 劇場へお足をお運び下さいませ!