劇場公開日 2023年5月26日

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「良い行いは正しい行い?」波紋 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0良い行いは正しい行い?

2023年6月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

知的

うお〜、見応えあったな〜。
社会風刺で不謹慎なブラックコメディかつ、奇妙で不気味なシリアスドラマ。なのに、クスッと笑える。介護問題、高齢化社会、障がい者差別、震災要素が全体の3割程度、信仰、夫婦の決裂、母子との関係性がのこり。様々な問題を扱いながらも、「水」を関連ワードにして作品にまとまりをもたらす。流石の、萩上直子監督である。あまり話題になっていないが、もうひとつの「怪物」として並び称されてもいいと思う。

手を叩く音と太鼓の音が混ざったBGM。
もう、この奇妙な音楽?を聴いた時点で確信。これ、絶対面白いやつ。何かに追われているような、ものすごい緊迫感が身体中を襲い、同時に謎の高揚感を覚える。主人公が自転車で坂を下るシーンで流れるこの手拍子。どんどん底へと向かっている、重圧に押しつぶされそうになっている主人公の様子が、意識せずとも伝わってくる。やばい、何かがおかしいぞ、、、。

筒井真理子、光石研、江口のりこ、木野花、柄本明、キムラ緑子といった、恐ろしいほどに名優が勢ぞろい。「この人出演してくれたら間違いないね」ってのがこんなにも出演しているんだから、そりゃ面白いはず。ベテランに囲まれながらも、磯村勇斗もいい演技。てかまぁ、光石研と柄本明と磯村勇斗はよく出ますよねぇ...。筒井真理子のどんどん落ちぶれていく、顔が強ばっていくのには、恐怖超えてニヤニヤが止まらない。こういう役に彼女の配役は言うことなしです。

こんだけの要素が詰まっているから、色々と雑で回収できていない部分もあるのだけど、とっちらかっている感じはせず、割と綺麗に見せてくれます。庭の枯山水は美しく、ラストの筒井真理子もまた美しい。話の流れもスムーズで、引っかかることなく、笑いながら見ることが出来ます。同じようなシーンが繰り返されながら、主人公の心情の変化を描く。シンプルだけど、言いたいことが直に伝わってくるのです。

母親であること、妻であること、姑であること、パートであること、新興宗教の一員であること。色んな重荷を抱えながら生きる女性。本作は少し過剰だが、こういった重荷を抱える人々は多くいるはず。「川っぺりムコリッタ」とは打って変わって、ダークなテイストだったが、かなり楽しめました。「怪物」と併せて、ぜひ。

サプライズ