「若かった(18、9の)私に」波紋 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
若かった(18、9の)私に
筒井真理子さん、舞台を観ない私にとって彼女をきちんと認識したのは、80年代後半、「フジテレビの深夜枠ほぼ面白かった」時代のなかでもトップクラスの『IQエンジン(89)』。第三舞台の俳優さんが中心に出演されていて、大高さん、筧さん、勝村さん達ほどの出番時間はないものの、今どきなら問題発言になるとしても当時の私の思いを正確に文字起こしすれば「ん、いい女だな」と目ざとく注目したのがきっかけでした。
その後、たまにお見かけしても特に気に留めるほどのことはなかったのですが、久々に「やはり、この人すげぇな」と思い直したのが園子温総合監督のテレビドラマ『みんなエスパーだよ!(13)』。「(染谷さん演じる)嘉郎の母役」というとチョイ役かと思いきや、対する父役のイジリー岡田さんとの掛け合いの「エロい」こと。そんな風で、全く以て「衰えを知らない」なと思っていたら、また少し経って出演の映画、深田晃司監督の『淵に立つ(16)』、そして園監督の『アンチポルノ(17)』となかなかの問題作立て続けで衝撃の演技を魅せ、更には「50代の彼女の代表作」と言って過言ではなかろう、深田監督の『よこがお(19)』は他と比べようのない「怪演」で、『IQエンジン』の頃の若かった(18、9の)私に「君の眼は誤ってなかったぞ」と伝えてあげたい思いです(笑)。
と、前置きでかなりの文字数を稼ぎましたが、
今作『波紋』は(信じられない!けど)60代になった筒井さんの主演作。私にとっていつも「劇場鑑賞するか否(配信待ち)か」が当落線上(多くが「否」判断)の荻上監督作ですが、今回は筒井さん主演ということで悩まずチケット購入しました。
予告もほぼ観てない状態で鑑賞していると、まぁ次々と豪華出演陣で、この辺はやはり荻上さんの業界評価は高いのだろうと認識します。で、光石さん、柄本さんら男性俳優も間違いなく巧いのですが、やはり女性俳優さんがどなたも素晴らしく、特にベテランのお二人木野花さんとキムラ緑子さんがえげつない。また、見過ごせない一人が珠美役の津田絵理奈さん。グイグイくる演技で邦画もやれば出来ることを、この映画と荻上さんが証明しています。そして勿論、そんなメンツの中でも全く引けを取らない筒井さんの切れ味抜群な演技は見どころしかありません。
そんな感じで荻上さん、やはり監督として巧いことは認めざるを得ないのですが、脚本は今回ももう一押しが足りない印象で惜しい。ずっと「おかし味」の連続にもかかわらず、全体的に見て「面白かったか?」と聞かれると、結局「配信でもよかったかも」と思う程度の内容です。
とは言え、荻上さんファンが多いことも知ってます。あくまで個人的な感想ですので、どうか悪しからず。