「こぢんまり」波紋 ユウコさんの映画レビュー(感想・評価)
こぢんまり
要介護の父を含む家族を捨てた夫が10年ぶり?に帰ってくるが、末期ガンだと言って居座る。その間に義父を看取り、当時高校生だった息子は大学を出て地方で働いている。主人公は今は怪しい宗教にハマって心の安寧を得ているが、その日常をかき乱されて…というストーリー。
A24映画なら絶対起きるカタストロフィーは、起きません。筒井真理子だけど。
我慢すること、規範に合わせることが生き方の主人公は予想外の事柄に苛立ち、宗教にすがってさらに「我慢・自己犠牲」の道に進もうとするが、パート先で知り合った清掃員に、好き勝手をそそのかされてそうしたら楽しくなってきて…
でも、身の破滅は起きません。
そもそも、稼ぎ頭が失踪しても、宗教に入れあげても、破産もしてない。貧乏にもなってない。(「星の子」はそのあたりどんどん宗教に吸い取られている様が暗示されて、キツイ)
宗教も、本山参りとかそういったイベントも大金を吸い上げられるシステムも(水以外)なさそうで、ユルいサークルみたい。
息子とは恋人のことでもめたけど、葬儀にはきちんと帰省してくるし、嫌みな隣人も嫌な客も「夫が癌なんです」で引き下がる程度の良識ある人間。なので主人公はそれ以上攻撃的にならずに済む。
自由を唆した清掃員も、あおってる途中で入院し彼女が心に傷を負ったただの自分勝手な人ではないと示唆され、主人公の良識で立ち直りかける。決して主人公が破綻するまで導かない。
…というわけで、全体的に小市民のイラッ・クスッが詰まった破綻のないストーリーです。せっかくヤバそうな俳優さん集めてるのに、寸止め感ハンパない。
A24的な、そういうの期待してる人にはちょっと物足りない
そんな狂信的じゃなく、予算の範囲内で献金していたんじゃないですかね。家の中もキチンとして、夫の死後にはあっさり脱会したような描写でした。夫も嫌がらせで集会に連れて行きましたが、勧誘のシーンは何故か皆無。