「もっと修羅場があっても良かったのでは?」波紋 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと修羅場があっても良かったのでは?
静かな水面のように平穏な生活を望んでいた主人公が、更年期障害に苦しみながら、夫や、息子や、パート先の客や、隣家の猫によってストレスを溜めていく様子は、観ているこっちも息苦しくなる。
主人公を救うことになるのが、それまで頼ってきた水にまつわる宗教や枯山水の庭ではなく、職場の清掃員のおばさんのアドバイスであるというのは面白い。
波風を立てることを恐れて我慢するのではなく、やりたいようにやるのが一番だというのは、その通りだと納得させられた。
当事者同士が、感情を露わにして言いたいことを言い合う様子を、水面上の波紋と重ね合わせるイメージ描写も、分かりやすくて効果的である。
ただ、夫に復讐するはずが、結局は高額な薬代を払ってやったり、聴覚障害を持つ年上の女性と息子との結婚の件も、本音と建前の折り合いをつけないまま、なんとなく丸く納めてしまったりで、どこか不完全燃焼な感じが残る。
夫が亡くなった後に、雨の中でフラメンコを踊る主人公の姿は、確かに解放感に溢れているのだが、その一方で、「夫を許したのではなかったのか?」とか「夫が死ぬことですべてが解決したのか?」といった疑問も残る。
何よりも、まったく伏線がないままでのいきなりのフラメンコには、唐突感を禁じ得なかった。
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