「火のないところに煙はたたない」最後まで行く 0UTSIDER109さんの映画レビュー(感想・評価)
火のないところに煙はたたない
所属事務所の社長と本人の交友関係がいまだかつてないほど燃えている二大俳優主演のサスペンスアクション映画。韓国オリジナル版、フランスのリメイク版ともに視聴したが、別にオリジナル版だけ観れば充分かなというのが正直な感想。
ローカライズに関して最大の興味は物語を動かす鍵である「警察官の腐敗」と「死体処理方法」をどう描写するかだった。より中央集権的な日本の警察ではオリジナル版のような腐敗は現実味がなく、仏教文化の日本では死後の遺体処理方法も大きく異なる。詳しく語るとネタバレになるので感想だけ書くが、まあ無難なところで落ち着けたかなという感じ。特段オリジナル版を超えるドキドキはないし、別に失望もしていない。
最大のがっかりポイントは黒幕の扱いについて。オリジナル版最大の魅力は、隠蔽したはずの殺人を知る謎の脅迫者と戦う崖っぷちの男の恐怖だった。本作ではその敵役が非常に小物になってしまい、なんだったら最初から登場してしまっている。結果、原作が持っていたサスペンス要素が大きく失われ、監督が大好きな政治批判に矛先が向いてしまっているのが問題だろう。これではサスペンスを描きたいのか、警察の腐敗を描きたいのか、それとも政治と宗教の蜜月関係を批判したのかよくわからない。オリジナルが持っていた研ぎすまれたナイフのようなサスペンスドラマが、幅を広げすぎたことで当たり障りのない日本の刑事ドラマに作り変えられたようなものだ。真のサスペンスを描きたいのならもっとドメスティックなものが必要である。その内なる恐怖の前では社会の闇などとるに足らないものでしかない。
本作の感想を一言でまとめると「悪人に休む暇なし」ということだ。
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