「思ったより重いテーマ」キンダガートン・コップ きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
思ったより重いテーマ
テーマを見逃すな。
アーノルド・シュワルツネッガーが保父さんになるのですが、
コメディの形を装った鋭い社会批判ものです。
制作当時のアメリカの世相をそのまま取り上げて、直視しているんですよ。
少し遅れて、これは今の日本の姿。
不和、離婚、家庭崩壊、虐待と連れ去り・・
アメリカで「家系図」を書く宿題を出したら、自分を真ん中にして父親2人、母親2人、祖父母に至っては両手に収まらない「円形の家系図」を提出する子がいると。
劇中、
シュワちゃんが、受け持ち担当の子供たちの、ひとりひとりの自己紹介を聞く場面で、シュワちゃん同様、僕も衝撃が胸に迫ってしまって たまりませんでした。
読み聞かせの児童書は(プーさんシリーズの)A.A.ミルンの初期の絵本『ぼくたちがとてもちいさかったころ』(英:When We Were Very Young)。
これは、6年間面会出来ずに離れている息子にかつてシュワちゃんが読んでやっていたその本なのでした。
幼く柔らかき魂にしあわせあれと祈る、美しい「詩集」。
思い出の本を手に、絶句して固まる彼。
それを肌で感じ取って静かに寄り添う悪ガキたち。
社会派映画でした。
リンカーンの演説を、子らが大人たちに向けて発表する舞台で映画は終わります。
笑い事ではありません。
「高校生になってからでは遅い」
「幼稚園のうちに子供たちに教えたい」
― 劇中のせりふです。
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リンカーン演説
[1863年、ゲティスバーク、冒頭]
87年前、われわれの父祖たちは、自由の精神にはぐくまれ、「人はみな平等に創られている」という信条にささげられた新しい国家を、この大陸に誕生させた。
[結尾]
この国に神の下で自由の新しい誕生を迎えさせるために、そして、
人民の人民による人民のための政治を地上から決して絶滅させないために、われわれはここで固く決意する。
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映画は、
バロディでもコメディでもない。
小さな国民たちの侵されざる人権と、平等と、尊厳を、今一度アメリカがアメリカ自身に問う、新しい「宣言」となっている。
こんな映画とは知らなかったので、少なからず驚いている僕です。
家庭を壊してしまった自分としては、やっちまった感で辛い。
先日、アメリカの共和党に身を置くシュワルツェネッガー氏本人の声明が出された。
自らの所属する共和党の大統領=トランプ氏が行った議会と民主主義への破壊煽動を厳しく批判する、真摯な声明。
この映画のスタンスは、シ氏本人のほんものの政治姿勢だったのだと分かる、優れた声明だった。