劇場公開日 2023年2月18日

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「必見」「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0必見

2023年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

大変重要なものを描いた傑作だった。東日本大震災でとりわけ多くの犠牲者を出した大川小学校で、あの震災時、学校で何があったのかを知るために、犠牲になった児童の親御さんたちが裁判を起こす。遺族にとって裁判はファーストチョイスではなかった。遺族は、ただ何があったのか真相を知りたかったが、学校も行政も体制を守るための言説に終始する。検証のための第三者委員会も利権絡みで骨抜きになってしまう。だから、裁判を起こすしかなかった。そのことで、子どもの命で金が欲しいのかと心無い言葉を浴びせられる。
もっと海に近い学校はあったのに、なぜ大川小学校だけ犠牲者が突出して多かったのか、その真相を巡るプロセスには、いかにも日本社会のまずい部分が凝縮されている。遺族がこの裁判を戦ったお陰で様々なことが明るみとなり、今後の防災計画にも大きな影響を与えることになる。心無い視線と言葉を浴びせられながら、折れずに最後まで戦い、子供たちの死を無駄にしなかった人々の勇敢な記録だ。

杉本穂高