「ドラマは良いのに。」マイ・エレメント キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマは良いのに。
夏休みの日曜日。
さすがに客席の7割は小学生以下、それも女の子がほとんどという中、ど真ん中に独り陣取る初老男子。決して臆してはならぬ。
劇場でのディズニーアニメは久しぶり。
恒例の短編も懐かしい。
ただ、デキはもう1つかな。
で、本編スタート。
結論から言うと、ドラマとしては良い。
環境によって自分の未来まで制限された若者の心と人生の解放。
混じり合えないと思って来たお互いが、心の距離を「火と水」の物理的な距離や作用とミックスしながら縮めていく。
ラブストーリーとして、家族の物語としてもよくできたお話。
最後は劇場のそこら中から女の子たちがビスビスと鼻を鳴らして泣く声がする。
ああ、こんなに幼い子でも悲しいシーンでちゃんと涙が流せるって素晴らしいな、と。
もうそれだけでオジさんの胸はいっぱいなのです。で、★は4つ。
ただ、ですよ。
すごく気になることはもちろんある。
この街を構成する「エレメント」として、いわゆる「地・水・火・風」の四大元素を並べているけど、「地」「風」はただの第三者として登場するだけで、物語にほとんど影響してこない。これはもったいない。
で、当然「火」と「水」の話になるワケだが、この描写がすごく意図的。
「火」は移民的な立場で、独自のコミュニティを作っている。火という性質上、ここまでは良い。ただ、みんなすごく閉鎖的で狭量でケチで小ずるい。
一方で「水」の人々は、おおらかで涙もろくて文化的レベルが高くて裕福。
映画『半地下の家族』を思い出した。
もちろんどちらも善良な市民ではあるものの、こういうの「レッテル」というのでは?
(ここから先、少しだけラストに触れます)
もちろんそういった分断を描いた上で、心の交流を始めていくのは分かるけど、最終的に心を大きく入れ換えるのは社会的弱者である「火」の側だけに見えるってのはどーなんだろう。
加えて、そもそもこの大規模は水漏れ(…もう決壊とか洪水のレベルだけど)の原因はインフラや土木管理の整備が不十分だったことから始まっている訳で、それを被害者でもあるただの素人市民が調査に修理までさせられて、現場責任者が「はい、ご苦労さん。」で終わるって、どういう街なの?
で、それがやっぱり壊れて、また「火」の街が大規模な被害を受けて、それでも頑張って新たなスタートを…って、弱者がいつまでも報われず、でも自助努力で前向きに生きていきます。みたいな話になっていないだろうか。
という、この「街」というステージにずっと違和感があったことは書き残しておこう。
と、ぐちゃぐちゃ文句書いておいて、Superflyの「やさしい気持ちで」聞くと、またグッとキちゃうのは、やっぱりドラマがよくできてるからだね。