「深みは足りないが、十分に良作!」マイ・エレメント おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
深みは足りないが、十分に良作!
これまでにさんざん予告は観ましたが、キャラクターに全く興味がわかず、スルー予定でした。しかし、初日レビューはなかなかの高評価。やはりこれは観ておかなければと、公開2日目に鑑賞してきました。
ストーリーは、水・風・土・火のエレメント(元素)が暮らすエレメント・シティで、父の店を継ぐことを願って育った火の女の子・エンバーが、水の青年・ウェイドに出会い、彼の自由な生き方に惹かれ、自分の本当の思いに気づき、異なるエレメントの壁、父の期待、自身の育ちなどに向き合い、成長していく姿を描くというもの。
メインストーリーはいたってシンプルでわかりやすく、夏休みの子ども向けにぴったりの作品です。多様なキャラクターも各エレメントの特性を生かした造形と性格づけがされており、こちらもわかりやすかったです。中でも、水のウェイドがいいやつで好感がもてます。逆に主人公のエンバーが好きになれません。強情で短気で、なかなか素直になれないひねくれ者といった印象です。それが火の特性であり、新参エレメントとしての立場の弱さを象徴していたのかもしれません。とはいえ、そんな彼女の心がしだいにほぐれていく感じは悪くなかったです。終盤で意を決して父に本音を語るシーンや儀礼に則った父娘の別れのシーンは、沁みるものがありました。
全体的には、エンバーとウェイドのラブストーリー、エンバーの成長、バーニーとエンバーの父娘の絆、異民族交流などの多様なテーマを盛り込んでいます。そして、そのすべてを水のウェイドに出会った火のエンバーという構図の中で、エンバーの変容に焦点化して描いているところに、脚本の巧みさを感じます。また、それを視覚的に捉えやすくした映像表現も、さすがの一言です。特に水の表現は圧巻でした。
今回は、地元映画館には字幕版上映がなく、しかたなく吹替版で鑑賞しました。キャストは、エンバー役が川口春奈さん、ウェイド役が玉森裕太くんです。玉森裕太くんはまだしも、川口春奈さんはちょっと…という感じで、長編アニメ作品にありがちな客寄せタレント起用問題は、本作でも健在です。