「フラットな目で見て良作」マイ・エレメント としあきさんの映画レビュー(感想・評価)
フラットな目で見て良作
リトルマーメイド実写版で痛い目にあったんで、割と怖いもの見たさで見に行きました。
公開されてるPVや、キービジュアルからして駄作だろうな、と思ってました。
リトルマーメイドと違って、払った2000円と、費やした2時間分をきっちり楽しめる映画でいい意味で裏切られました。
『この世界では違うエレメントとは関われない』
とかキービジュアルに書いてありますが、ポスター書いた奴は本編見てないのか?と思います。
たしか、水⇒土⇒風⇒最後に火の順番でエレメントシティに入植してる(2番目と3番目はうろ覚え)んですが、火のエレメント以外は普通に同じ職場にいたり、同じ電車内にいたりします。2番目と3番目の入植の、土と風が入植した際の記念の一枚絵みたいなのもあるんで、割と融和できてます。
火のエレメントだけ、まだ入植が遅いせいなのか町が隔離されていて、なじみ切っていないって印象を受けました。
逆に今回の映画の話や、時間が解決してくれそうな気はしました。
冒頭、火のエレメントの主人公、エンバーの両親がエレメントシティに入植するところから話はスタート。
父は故郷で災害にあったせいで店と家を失って、火の国を出国することに
母は当時主人公のエンバーを妊娠中
入植の際、父が水のエレメントに不快感みたいなのを抱いてますが、まぁお前のほうが後から来たわけだし、水のエレメント側も火のエレメントの事情を欠片もわからんわけだから、やむなしではあるかな。他種族が入る際に必ず生まれてしまう軋轢みたいなものかと。
入居とかもけっこう断られてますね。
全編でたまに出てくるんですが、火のエレメントだけの独自言語を火のエレメントは喋ったりするので、冒頭はちょっと急に変な言語が出てきて混乱します。
ここではリントの言葉で話せ。
話の中盤で、父は出国の際に祖父と揉めたままで、わかり合えずに出国してます。
この設定とシーンはけっこう大事です。父と祖父は最後まで分かり合えずに終わってしまった。
その後父はボロ物件を見つけて、火のエレメントが集まる街の中で、火のエレメントのための商品を扱う店舗を開店。
店もうまくいき、娘も生まれます。
店の奥には火の国から持ち込んだ、火のエレメントにとって大事なものである青い炎が飾られています。聖火みたいなものだと思えばOK
その後、娘のエンバーは順調に育ち、店も軌道に乗り、父はエンバーに店を継いでもらおうと考えます。
ここから話は現代に入り、娘の接客シーン等が出ますが、クソ客のせいで娘のエンバーは割とキレがち。
あまりいいシーンではないというか、ストレスが溜まります。
キレる娘も悪いですが、正直客(火のモブエレメント)がだいぶクソ
接客業の経験があるんでわかりますが、客と呼べないクソは存在します。
店員はマシンガンを装備して、なにかあったらモンスターに銃口を突き付けながら笑顔で
「いかがしました?」って対応していいと思う。 話が逸れました。
父は老いからか体調が悪化中 店頭には出てますが、店を譲る算段をしています。
母は占い師でカップルの相性を見るのが仕事。火のエレメント同士が線香みたいなのに火をつけて出した煙でカップルの運勢を見ています。
娘の仕事ぶりはあんまり良くないというか、客とモメるし、配達時には他の車にイラっとしてるし、この仕事向いてないだろ…… って思うかもしれない。
父は娘に店を譲る試金石として、セールの切り盛りを娘一人に任せます。
ただこのセールでまたクソ客とキャパオーバーから娘が癇癪を起して盛大に燃える。
バイト雇えバイト 物売るってレベルじゃねーぞ!
娘のリアクションの影響で、店内の配管が壊れて水漏れ、この時漏れた水から、もう一人の主人公であるウェイドが登場。
ウェイドは公務員っぽくて、市の水道とかの管理が担当。
ウェイドも見た目はさえない男で、どうせ最近の映画にありがちな『自立した強い女性』の踏み台になるための男なんだろうな とこの時は思ってました。
割といい意味で、この印象は裏切られることになります。
ウェイドは立場上、店の水漏れとか違法建築のことを報告せざるを得ないため、店を出て市役所に向かいます。
エンバーは店が営業停止処分になるとまずいので、ウェイドを追って橋を渡って、火の町(シティ中心部とは隔離されてるっぽい)から市内へ向かいます。
途中電車内とか市内とかいろいろ経由して市役所に、追跡むなしく、報告書は上に届いてしまい、営業停止を待つ身に
この際にエンバーがまた癇癪を起こして市役所の部屋1個燃やしてます。
正直序盤はエンバーに対する印象あんま良くないです。
その後、エンバーはウェイドの上司?であるゲイル(風のエレメント)に掛け合い、営業停止を差し止めてもらうことを画策
この時、ゲイルはスポーツ(たぶんバスケっぽい)を観戦中、推しのチームのプレーオフの試合。
会場に入ると、どこかの球団のクローザーが入場するときの曲が流れてて
神奈川県民か野球に詳しい人は「ヤスアキ!」って幻聴が聞こえます。
エンバーは試合観戦中のゲイルに交渉を開始、当然ながら推しチームのプレーオフの観戦中にこんなことされたらゲイルはキレます 俺もスポーツ見ますがたぶんキレます。
阪神ファンや浦和サポ相手にこれやったら命はありません。
エンバーはよりにもよって「こんな試合よりも私の店の方が大事よ!」
みたいなこと抜かします。 モブ客も民度が低いのがいるし、火のエレメントは滅ぼすしかない! と思った瞬間でした。他人の大切なものや大切な時間を尊重できない奴はダメだ。
このシーン、個人的に作中最大の胸糞シーン、でもなぜか公式はこのシーンを公式PVに採用。担当者ヤクでもキメてるの? 他のシーン選ばない?
ここでウェイド(水のエレメント)が意外な行動に出ます。
ゲイルの推しチームが圧倒的劣勢なんですが、エースの選手が身内の不幸でメンタルがボロボロで、プレーの精彩を欠いています。
会場内からはブーイングが、でもウェイドはこの雰囲気を良くないのか、エースの選手を応援しようと、コールを開始します。
「ほんとうのファンなら落ち目の時に応援しなきゃ」 どこかののび太みたいなことを実践します。いいやつだ
ブースター、サポーター、ファンならこうありたいものです。
ピッチに乱入したりバス囲んだりする奴らはサポーターじゃねぇわ
結果周りも同調してくれて、エースは復調して試合も逆転。
それまでの流れを見ていたエンバーはウェイドに対して好印象を抱きつつ、スポーツ観戦の良さを体感して、試合後にゲイルに謝罪しつつ和解できます。
他人の大事なものを尊重できるようになって良かった、正直公式のPVのシーンのまま最後まで行ったらとんでもないクソ映画になるところだった。
その後、水道の大本を止めたはずなのに水漏れが止まらないことになにか原因がある!みたいな流れになってエンバーとウェイドはその原因を探りに行きます。
まぁ町の堤防というか、防水扉みたいなのが壊れてたのが原因って話になります。
この調査やら、デートやらで二人は割といい交流を繰り返して接近します。
ただ種族が違うのと、エンバーは割と苦労して育った家庭、ウェイドは割と裕福な家庭という境遇の違いから、たびたびすれ違いみたいなことも起こります。
エンバーは常に、カッとしてしまったり、店の業務をうまくできない自分を嫌悪しますが、ウェイドは感情を表に出すことは悪いことではない とフォローしてくれます。
交流の最中に、エンバーはガラス加工の技術と芸術のセンスが高いことが判明し、ウェイドがエンバーを自宅に誘い、家族にエンバーを紹介するイベントで、ウェイドの親戚のコネみたいなのを使って、ガラス加工の仕事に就かないか? と提案します。
エンバーはそれを喜びつつも、父の店を継ぐことと相反する提案に困惑します。
娘は父を愛しているから、父の店を守りたいし、継がねばならないと思っているけど
自分の夢みたいなものも持ちたいとは思っている。
父は娘を愛していて、娘に店を継いでもらいたいと思っている。
まぁすれ違いなんですが、難しい案件です。
その後、エンバーと父が過去のトラウマになった、博物館(現在時間軸では廃墟になっている)で展示されている花を、二人で見よう とウェイドが提案。
ウェイドの上司で風のエレメント(バスケ好き)の協力を得て、二人は廃墟に侵入して美術館や花を観賞。
その後、作中で常に触れ合うことは躊躇してた2人が、手を触れあいます。
抱け!抱け―!
でも触れ合っただけで、やはり付き合うことはできないとエンバーは思い込む。
店の引継ぎ式みたいなのを行う最中にウェイドが乱入して、二人を説得に行きますが、ここは失敗。エンバーも父に隠し事がいくつかあって、それが原因で父と娘ももめて、カップルも危機。
その後、防水扉は土嚢⇒ガラス加工 で2回応急処置してるんですが、それが決壊してまた洪水が発生。
役所、原因調査は二人にやらせてもいいが、処置や修理はお前らが全力でやれ
洪水のせいで、エンバーの店が水没しかけて店の奥の聖火が消えそうになります。
ここで、別れたはずのウェイドが危機を察知して助けに来てくれます。
二人で協力して、エンバーがガラス加工や溶接を駆使して聖火を守りますが、密閉空間で熱量を上げたせいでウェイドが蒸発の危機に
エンバーは自分と聖火を犠牲にしても、密閉を解こうとします。
ウェイドは逆に、エンバーと聖火が危険なのでこのままでいい、自分が犠牲になると主張
王子槍問題の二択とは違って、両者が択を迫られて、ウェイドの意志が勝った形ですかね。
お互いがお互いのことを想っていたシーンではあると思います。
ただまぁ、結局ウェイドは結露して、復活します。
そして二人と親子は和解できて、父の店は店の常連の火のエレメントが継いで継続していくことになり、エンバーはガラス加工の会社への研修で船で旅立つ
ウェイドもエンバーに付き添っていくことに。
旅立つシーンで二人の親(エンバーは両親、ウェイドは父が亡くなっているので母のみ)が見送ります。
ここで、祖父と父が分かれる際にはできなかった、火のエレメントの別れの儀式みたいなものを、エンバーと父はすることになります。
ここ結構いいシーンです。この二人はわかり合うことができました。
その後EDに入って、EDでは一枚絵で登場人物のその後が描かれます。
エンバーの両親がウェイドの家に訪問するイベントとか、他のキャラが幸せそうに過ごしてるシーンや、エンバーとウェイドが研修を終えて帰ってくるところとか。
ベタではありますが、僕は弱いオタクなんでこういうEDに弱いです
こういうのでいいんだよこういうので(井之頭感)
総じて見ると、そこまでポリコレ臭もせず普通の話で、ちょっとご都合ではありますが、基本的に登場人物全員が幸せになれて、主役の2人が出会うことで2人が変化して、幸せになる。
単純なボーイミーツガールの物語だと思います。
綺麗なCGで描かれた町の様子や、エレメントの特性を活かして体色を変えたり虹を出したりするシーンもいいものですし
途中のデートで、二人が廃棄された博物館で花を見るシーンもけっこう好きです。
あと第一印象があんまり良くなかった水のエレメントのウェイドですが、この男なよなよしているようで実はかなり行動派ですし、言うことは言います。
わかりあえない、わからないという場面はありますが、常にわかろうと努力しています。
この姿勢ってとても大事だな と思います。
エンバーの母に、お前は線香に火を付けられず煙が出ないから運勢を占えん と無茶ぶりされるところでも、知恵を駆使して線香に火を付けます。
文字数が足りませんが、とにかく、公式の宣伝が下手糞
一番悪いシーンをPVにするし、エレメント同士は関われるし、触れ合えない二人なんてこともないです。
余談ですが、りんごの摘み合いとか、腋から生えた花をプレゼントとか、関係者に特殊性癖持ちがいるんでしょうか?僕も腋は好きですが、野郎の腋から生えた花は嫌です。