「私の産んだ子はモンスターだった。」対峙 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
私の産んだ子はモンスターだった。
6年前の銃乱射事件の加害者ヘイデンの両親(リチャードとリンダ)
被害者エヴァンの両親(ジェイとゲイル)
彼ら4人は6年経ても息子を失った哀しみから立ち直れない。
そんな4人が時間と費用をかけて、ようやっと会う事になった。
ラスト以外には音楽が全くない。
回想シーンも再現シーンもない。
対立する4人がただただ向き合い対話する=対峙
一幕一場の舞台劇のような映画です。
どんなに平静を装っても加害者への憎しみとその両親への怒り。
息子を奪われて、やっと立っているジェイとゲイル。
その日の凶行を現す言葉が映像よりもよほど恐ろしい。
一番冷静に見えたヘイデンの父親ジェイ(リード・バーニー)は、
被害者一人一人の死に様を分刻みで覚えている。
ダニエルは3発撃たれた。2発は頭、1発は心臓。
……机に座って息絶えた。
ジュリアナは脚に2発、1発は膝、もう1発は腱、
……大動脈が撃たれてガラス片が目に入り、
……這って外へ逃げようとして力尽きた。
ヴァネッサは4発撃たれた。腹に2発、頭部2発。
……机の下でうずくまり命乞いをしたのを息子は撃った。
エヴァンは必死で這った。血の跡がそれを現している。
……それでもヘイデンは追ってトドメをさした。
リンダは言う
「私は人殺しを育てた」
☆☆☆
モンスターは一定の確率で生まれると思います。
育てた親になんの責任もない・・・私はそう思っています。
防ぎようがないのです。
どんな映像よりも生々しい。
「2番目はほしくなかった」
「生まれてこなければ良かった・・・」
10人の被害者は追悼式が行われた。
けれど11番目は追悼されない。
葬式も断られたて墓にも苦労した。
この映画で会話のチカラ、言葉の強さを思い知らされました。
役者たちの力量がどんな映像にも勝り迫って来る。
対峙して言葉をぶつけ合い本音を吐き痛みをぶつけた事で、
エヴァンの母ゲイル(マーサ・プリンプトン)は最後に、
決意したように言います。
「あなたたちを赦します」
「ヘイデンを赦します」
加害者家族のリチャードとリンダも、ジェイとゲイル同様に
愛する息子を失った被害者なのだ。
被害者と加害者の夫婦は互いを思い遣り帰路につく。
彼らが少しでも晴れ晴れした気持ちで生きていくことを、
私は心から願いました。