怪物のレビュー・感想・評価
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鑑賞動機:坂元裕二4割、カンヌ3割、是枝裕和3割
なるほど、そういう作りにしてあるのか。構成自体はそれほど複雑ではないけれど、いつ誰の視点で何をどんな風に見せるか、そして何を見せないか、を考えて考えて考え抜いてつくられたのだろうか。
無責任な立場で後出しでならいくらでも好きなこと言える。
『悪人』(原作)を連想する。「悪人は誰?」ってね。何気ない「怪物だーれだ」というセリフがどんどん大きくなってこちらに重くのしかかってくる。
誰が彼らを批判しているのか、我々は怪物か
怪物だれだ。
恐ろしい言葉である。
これほど鑑賞前後で感想の変わる言葉はない。
無邪気さを孕むだけでなく、芯にある大人への強い思いをぶつけられた気がする。
言葉は苦しい、その奥にある思いの方がもっと苦しい。
その思いに寄り添い、気づかずとも動くことができない我々はいずれ怪物となる。
怪物とモンスター
「怪物」ってタイトル日本語では重く、どれ程凄い主人公かな?と思いましたが、見るとナルホド・・納得。 全ての配役さんが素晴らしく、凄く楽しめました。特に子供達(オーディション)!!(良かったです)また、構成や展開(特に脚本)今までに無い是枝作品で進行変化が特に良かった。個人的には凄く面白い映画でした。
暗からはじまり明へ。徐々に明るい兆しが見えてくるようだ。
出だしから中盤辺りまでミステリー的な要素があり、一体なにか起きたのか、起こっているのかという謎に引き込まれた。
その後、陰湿な人間の性を見せつけられるようなシーンに心が沈むが、中盤辺りから、それら人間の陰湿さが誤解であったことが次第に分かってくる。
『怪物』という題名だけに、登場人物にただならぬ悪人が出でくるような予感がしたが、そうではなかった。
ストーリーは、多角的視点で進行するが、それらが進行するに連れて、不安な心の緊張がときほぐされて、終盤にあっては、この少年二人に、希望のようなものを感じる爽快な気持ちとなった。
また、それと同時に人間社会の複雑さ、辛辣さを感じさせた。
言わば、こうもうまくいかない社会の辛辣さのなかで、少年二人の同性愛的な友情が際だって綺麗に見えた。
鑑賞し終えたところ、実はみんなよい人であったことが分かる。
では、題名にある怪物とはなんだったのか、疑問が残っている。
子供には子供だけの世界がある
大きな湖があるとある街(劇中で諏訪とは特定されない)で雑居ビルで火事が起こる。
その火事を家のベランダから眺めるシングルマザーの早織(安藤サクラ)と小学生の息子の湊(黒川想矢)のシーンから物語が始まる。
映画はこの火事のシーンを起点に1つの出来事、時間軸を3者の視点で描く。
黒澤明監督が「羅生門」で用いたことが有名で、映画や小説でもよく用いられる手法だ。
今作品は是枝裕和監督では珍しく、自身の脚本ではなく、今作品でカンヌ国際映画祭で脚本賞に輝いた坂元裕二氏の脚本による。
第一幕は冒頭のシングルマザー、早織の視点で描かれる。
息子の不可解な行動から学校でのいじめを疑い、学校に乗り込んでいく。
そこでの校長の伏見(田中裕子)や担任の保利(永山瑛太)、教務主任の対応は誠意が感じられず、早織は不満を募らせていく。
ところが保利に息子がいじめの加害者だと言われるあたりから潮目が変わる。
第二幕で担任の保利の視点に変わると事は単純ではなく問題は多層的であることがわかってくる。
第三幕は当事者の子どもたちの視点に移る。
湊といじめの相手とされている依里(柊木陽太)の関係性が描かれるが、思春期の少年の危うさ、儚さ、瑞々しさが丁寧に描かれ、出色の出来。
特に依里役の柊木陽太の繊細な感情の表現には驚いた。
終盤は宮沢賢治の幻想的かつ謎めいた童話を想起されるような子供達の世界が描かれる。
1点気になったのは、視点の違いを分かりやすくするためか、第一幕でかなりのミスリードがあること。この映画ではその描き方はしなくていい。
音楽は坂本龍一が手がけ、1998年に発表されたピアノ曲「Aqua」が流れるエンディングの光景の美しさが脳裏に焼きつき余韻に浸った。
意味合いが変わっていく怖さ
自分だったらどうだったのか。
その時どう行動するか、してしまうか。
立場で、瞬間で、全てが変わってしまうのだな。
「怪物、だーれだ」の意味合いが
どんどん変わっていく怖さ。
自分が正しいと思っている怖さ。
誰にでも当てはまる一瞬があると思えた。
流れるような伏線回収
素晴らしい、ただセリフでの遊びが邪魔してるところもあったような…
演出では母親パートとそれ以外での先生のキャラが違いすぎた感はあった
でもメインテーマといい、様々なテーマを盛り込んだ脚本は凄すぎる
やっぱり愛なんでしょうね
暗そうな話だなぁと敬遠していたものの、公開も終盤ということで鑑賞し...
暗そうな話だなぁと敬遠していたものの、公開も終盤ということで鑑賞しました。
結論を言うと、こんなに面白いならもっと早く観に行けばよかったです。
同じ出来事を複数の視点で振り返りながら、物語の全容が見えてくる作りになっているのですが、各々の目線によってまるで見え方が変わってくるのが肝
そして、その始まりは純粋な想いだったというのが、なんとも切ない気持ちにさせられる名作でした。
怪物探しは疲れる・・・でも、それは「逆さ舟(騙し舟)」であり稚児遊戯である
最初から、怪物探しが仕掛けられていて、いささか疲れる。
多分、この人だろう、いやこの人じゃない、きっとこの人だ。
って思っているうちに、全員が怪物でいいやんっていうことになる。
本物の怪物は校長やろ!でもこれはある意味で正解。
そんなに多い場面に出ているわけでもないにもかかわらず、
それにセリフだって「陳腐」すぎるにもかかわらず、
すべては「逆さ舟(騙し舟)」に持って行かれたね。そう、これが「怪物」そのもの!
大人から見て怪物、子供から見て怪物、組織の中で怪物、社会的な怪物、家族内怪物。
「俺は怪物君だ!怪物ランドの王子だぞ・・・」なのか!
誰もが、自分にとっての怪物。
しかし、このように時系列を錯誤させる見せ方も、うーん、今の時代、ありきたりかな。
少年の中に見られる愛情の傾向性。これもそうだし。
どうも、現代的なテーマを盛り込み過ぎのような気がする。
それぞれの登場人物の視線のベクトルの違いは描かれていたんだけど、クロスする視点を探すのが大変かもしれない。それも、怪物は「逆さ舟(騙し舟)」でしかないから、その視点を探すことさえ難しい。あえてヒントを探そうとすれば、不協和音的協和音のトロンボーンとホルンの通奏低音だろうか。
校長と湊はそれでいいかもしれないが、麦野早織と保利道敏の視点が最後にどうだったのだろう。雨の中、少年たちを探しに行く場面で、それは十分に描き切れていたのかな?
それとも、映画の最終場面、彼らの目を通して、少年ふたりの「その後」を描いていたのかな?
行手を遮っていたものがなくなっていた廃線をいろいろ解釈することはできると思うんだけど、それまでの母親の視点と教師の視点がうまく交わらず、なんか放り出されたような感じがした。
# 湊ちゃんもそうだけど、依里ちゃんも、めちゃかわいいやん!
やばい、梨園的稚児遊戯へと至ってしまうやん。。。
あ、俺、「怪物」だ・・・・目覚めてしまったというのか!
怪物たちと湖
僕は是枝さんの映画はあまり好きではないし、今回の作品も内容的にいって好きな話ではないけれど、それでも本作の完成度の高さには唸らされるものがあった。
冒頭から観客をぐいぐいと物語の中に引き込んでいく力、そして複雑なストーリー構成の妙に感服した。
脚本のディテールにもキラキラ光るものがあり、「巧いなぁ」と思った。もちろん役者たちの演技も素晴らしかった(安藤サクラは、こわいほど良かった)。
真相はどこに? 真実とは何か?
芥川龍之介の『藪の中』と、それを下敷きにした黒澤の『羅生門』を思い浮かべた方も多いだろう。
そして、「怪物」は誰なのか?
ときおり映し出される、陽光に照らされた湖。
その、広がりをもった美しい姿は、諍いが絶えない愚かな我々人間――“怪物”たち?――の世界を静かに見守っているようであり、また、閉塞的で陰鬱に傾くこの物語に、解放感と安らぎを与える一服の清涼剤のように感じた。
追記
鑑賞後、監督のインタビューを読んでみると、湖を登場させた意図は別のところにあるようだとわかったけれど、僕は上に書いたように感じたんだから仕方がない。「誤読」もまた観客の特権ということで、よろしくお願いします。
それから、教授、長いあいだ素敵な音楽を届けてくれてありがとう。
尺がちょうどいい
現代だから描けるテーマが、三部構成によって小出しにされており、その一つを掘り下げないところが良かった。
あの登場人物は蛇足だったんじゃないかとか、ジェンダーの書き方に今更感があるとか、一緒に鑑賞した友人は友人の意見があったのですけれど、一方私は「そこが良かったなあ」と感じていました。
それぞれの人にとっての『現実』があることを示せていたから登場人物は全員が必要だったと思うし、言いたいことはジェンダー問題ではないので出力ボリュームも適切だったと思います。
原作未読ではありますが、2時間の中にスマートに収めたなあいう印象。その中でもハートフルなクライマックスに持っていくのが新鮮。
結末を知った上でもう一度観たいな。
メッセージ性は希薄だった
こういう設定だとこういうストーリー展開になるよね、立場違えば真実は一つじゃないよね、狭い濡れた暗い空間と、見渡しのいい乾いた教室の対比、劇中の楽器の使い方のうまさ、スタンドバイミーを思わせる美少年たちの心と体の冒険、、、秀作だとは思ったけど、時間が経ってから反芻したくなるような強いメッセージは感じられなかった。
意味するところは違うけど、「カメラを止めるな」を思い出した。
苦手な映画だった
私はアクション映画が好きでヒューマンドラマ的な映画は苦手なので、大丈夫かな〜と思いつつも、とても評判が良かったのでこの映画を見た。結果としてはやはり苦手な映画だった。
他のレビューにもある通り、脚本の構成は良く出来ている。伏線の貼り方や回収方法、後半の盛り上がりは確かに芸術的で、短い時間で多くのことを伝えるとても映画らしい作品だと思った。
物語前半の展開についてはあまりにも大人たちが短絡的で愚かすぎるように感じてしまい感情移入できなかった。後半における様々な種明かしも想像からそう遠くない内容で驚きは少なかった。
登場人物が愚かである納得のいく理由が提示されず、映画をそのまま受け取るなら「子どもに関わる大人はみんな愚か」みたいな印象で終わってしまいそうで、その辺りが釈然としないというか「そうはならんやろ~」という感想になる映画でした。
美しい戯れ
序盤のほう、なんなんだ安藤サクラ以外、みんな傀儡のような世界観は…胸糞悪いな…と思っていたけど。。。
同じ時間軸で起こっていたことを視点違いで、いくつか見せられて、ああこういうことだったんだと伏線を回収していく構造。
子供2人が仲を深めていくシーンは性の匂いのしない天使が戯れているようで美しかった。
それが恋愛だと本人たちは鑑賞者はどの時点で感じていたのだろう。
子供が秘密を誰にも言えなくて、どんどん抱えきれなくなって大きな災いに発展する感じ。秘密を打ち明けられる心理的安全性を担保した関係性をどう構築するか。何を打ち明けても、愛する心は変わらないという確信をどう持たせるか。自己開示できず苦しんでいる硬い殻を母親として教師としてどう向き合っていくか。どうすればよかったのか問題提起をされている気分だ。
最近有名人でもカミングアウトする人がいる。それをいうことにどれだけ勇気がいることなのか、この映画を通じて少しわかった気がする。今まで築いてきた関係が失われることの可能性や、「結婚して子供を作る」という多数派の期待に応えられない罪責感を考えると本当に憂鬱になる。
勝手な期待をして、その人の進む道を当たり前のように押し付けていないか。もし私に大切な人ができたならば、いろんな選択肢があるうえで、どれを選んでも不変の愛をもつことの姿勢を見せたい。
要約を拒否する作品
人間に無意識に備わる偏見が一つのテーマ。怪物とは、一目で分かるような暴力主体ではなく、結局のところ自分が偏見に囚われている可能性を自覚しないまま生き、行動して他者に影響を与える一人一人の人間を指す。
映画のなかで幾度となくプロットツイストが起こる。それまでこの人が「偏見」を振りかざす悪役ー「怪物」、この人が被害者なんだと特定の理解をしていた鑑賞者は、物語に新たな視点が追加されるたびに、登場人物というよりむしろ自分自身が持っていた偏見を痛感させられる羽目になる。ここで取り扱われる偏見は、客観的に明確な差別意識といったものではない。人間として世界にその都度解釈を与えながら生きる以上、正直逃れることができないとまで言えるものである。
エンディングにさえ、それらしいオチや爽快感はない。全体として、特定の明快なプロットが真相として提示されるわけではなく、鑑賞者の方で断片的な描写を繋ぎ合わせてストーリーを解釈する必要があるのが、この映画の魅力をなしている。
坂元裕二氏の脚本が秀逸だったかと。
以上終了。。ではレビューにならないですね💦でも私にとってはそこに尽きるかな。
ネタバレは一切なしで書きますが、通常やら日常の中に静かに潜み進行している人の心や社会の歪みと捻れを淡々と炙り出す、の是枝節は健在ながらも「羅生門」的な視点とシーンの切り替えはかなり新鮮でした。
いつもの、如何にもな思わせぶりの伏線を回収しない、よく言えば淡々と悪く言えばダラダラの展開、誰も救われた感じがない、炙り出すけど結局は投げっぱなし、是枝監督の悪いクセ(と私には思える、でも好きな方には堪らない)が今回はかなり抑制されていて、後半の答え合わせでモヤモヤ感がある程度スッキリするのは坂本裕二氏の脚本あっての事かと感じました。
そう単純なラストでは無いですし、スッキリした!よくわかった!とはとても言い難いですが、本年度最高に(いい意味で)モヤモヤする「君たちはどう生きるか」と違い、本作は今回はリピは致しません💦
子供パートが良すぎてそれまでの話はどうでも良くなった。星川くんの声...
子供パートが良すぎてそれまでの話はどうでも良くなった。星川くんの声かわいすぎ。怪物くん。
学校の事なかれ主義はうんざりして心底二度と関わりたくないと思った。校長もいろいろあるんだろうけど、写真立てのくだりとかさ、ムリ。
ホリ先生はふつうにかわいそうでは…。とはいえ、自分目線と側から見た言動にギャップのあるタイプなのかもしれない。
やや間延びしてたので120分にしてほしい。期待しすぎたのかそれほど心に残らず。
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