怪物のレビュー・感想・評価
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みんなにとってのシアワセ、って?
是枝節は聞かれない・・・
みんな怪物
脚本が是枝監督の手によるものではないからか、是枝作品としては少し肌触りが違う、と感じながら見ていた。
少しテンポが良いんだよね、これまでの是枝作品と比べると。
ただ、一瞬たりとも気が抜けない映像表現や独特な子供の撮り方は、まさしく是枝監督の映画。
一連の話を三者の視点から繰り返し見せられる手法は特に目新しいものでもないのだけど、その掘り下げ方はやはり独特で、視点によっては誰もが「怪物」に見えてしまうが、ホンモノの「怪物」はどこにもいない、という多面性をじわじわと見せられる。
例えば本作中では紛れもなく「毒親」に見えた中村獅童演じる依里の父親でさえ、"視点"が違えばまた印象も変わるかもしれんなぁ、と思わされるわけで。
それにしても子役2人は良かった。
この映画、子役の演技が劣っていたらすべてが台無しになってしまう性質のシナリオなので、やはりこれは是枝監督にしか撮れない映画、だったのだろう。
そして極めつけに、あのラストシーンだよ…
この幾通りにも解釈ができてしまうラストシーンはずるい(笑)
3日は悶々としてしまうじゃないか。
よい
か い ぶ つ
23-079
安藤サクラさんは相変わらず安定安心の演技でしたが今回の子役2人がや...
それぞれのおもい
是枝監督作品を観て感じることで、ベイビーブローカーを見た後にも感想として書いたのが、多面的で優しい視点と、それでも問題は問題として存在するという切なさが、言葉では表せない包容力のある作品だと思い、監督の作品がとても好きです。
本作は脚本が坂元裕二さんで少し毛色が違うという印象もありましたが、同じく多面的に描かれていて、誰かが誰かの怪物になってしまう構図は自分的にはとても現実的で、今となってはなぜと思うような嘘をついたりすることも、当時の気持ちを思うととても理解できることではありました。
人は理屈だけで動くものではありません。
だれも悪くなく、誰も救われない、その裏にある社会的背景、この作品の大元となる部分も今語られるべきストーリーでしょうか。
いつでも物事は多面的で、皆が同じように思うことはないのです。
何度も考えて、何度も人と話したくなる。
圧倒的没入感と、二つの断絶。
前半部は雑感。
出だしの安藤サクラがまずいい。ネガティブを抱えながらポジティブを装うが、いつも気持ちは臨界点寸前のシングルマザー。
そして永山瑛太もまたいい。安藤サクラパートでの不気味なテイストと打って変わり、なんやワレ好青年やないかい。怪物は人間だった。
この二人の演技力、静謐な映像美と音楽によってこの映画の基礎は出来ているんだと思った。伏線が多く、時間軸があっちこっちに行きがちな映画なのに、集中力を途切らせずに入り込んで見る事ができました。
演者の力量だなぁと思うのは、実質的にみんな「怪物役」と「人間役」の二役出演をしてる感じですよね。無表情だった田中裕子の最後の温かい表情だったりもよかった。
で後半部、核になる部分であるところの「子供の世界」に入っていく訳ですが。
いじめってすごい即席にも関わらず、とても強靭な組織構造ですよね。いろんな感情が未文化で錯綜するであろう子供でさえも規律正しく従ってしまう「オマエこいつと仲良いの?仲良いんならハブるよ?」の同調圧力。見たいものを見、感じたいものを感じる事が許されない世界。この映画の中で「大人の組織構造」として描かれた先生たちの社会に対し、「子供の組織構造」として描かれるのがいじめの構造。
ただ一点違うのは、自分たちなりの「ふざけんな!あんたたち人間じゃねぇ!」を怪物である他者に突きつけた大人の二人に対して、子供たちはそこまでの「生きしぶとさ」を持っておらず、怪物を自分自身と定義してしまいます。上手くやれない僕ら。生まれつきの欠落がある僕ら。他と比べて劣っている僕ら。
どんなに不幸があっても、辛くても、解釈の違いで他者を不幸に貶めても、貶められても、私たちは生きていかなければなりません。時にはふざけるなと誰かを罵倒したり、枕を涙に濡らしても。それが、「アナタが大人になるまでは頑張るよ」と誓った早織の言葉。大人にとって生きるというのは、そういうことなんだと思います。
しかし、子供は違います。簡単に(とあえて言いますが)自分の生まれを呪い、世界の全てに絶望する事が出来てしまう生き物です。その絶望は、繊細な保利先生には最後にようやく片鱗が伝わったように思えますが、生きしぶとい早織には最後まで伝わっていなかったように見えます。
「怪物」を描くにあたり、早織や保利先生それぞれの怪物との理解の断絶を描いていたこの作品ですが、実は最も深い断絶が、大人と子供の間にあったように思えるのです。
世の不幸とどこかで折り合いをつけなんとか生き抜いていく大人。自分たちの世界で良いも悪いも増幅させ、無限に進んでいってしまう子供。彼らを理解する事ができる大人は、一人もいなかった。(最後の校長が一番寄り添っていたかも知れません)結果、彼らは不幸に進んでいった。その痛切な読後感が本当に痛く、観劇後しばらくボーッとしてしまいました。
総じて、腹の中にゴロンと重い石を投げ込まれたような映画だったと思います。もちろん良い意味で。いい映画でしたね。
誰人の中にも怪物はいる
一人でスタオベする人と中盤で帰る人がいる映画
あの是枝監督と坂元さんの脚本
このコンビだけで大きな賞を取るのだろうと期待大で鑑賞。
視点は相変わらず面白いし、上手く誘導もされた。
しかし、テーマが広すぎて全体的に薄く感じたのと、学校のシーンは多かれ少なかれ近い状態はあるものの、とはいえ恣意的な部分を感じて、違和感が強かったし、映画とはいえ先生方に失礼にも感じた。
それだけ真実ぽく作っているからこそなので、逆説的には素晴らしい出来なのだが。
仕事として近い存在だからこそ、校長や周囲の教師の反応は許せない。
角ちゃんの言葉だけでは納得はいかない。
しかし
途中で帰る人が3名もいたのはビックリした。
満席だったからこそインパクトがあった。
体調でも悪かったのだろうか?
スタンディングオベーションした人がいたが、誰もついてこなかった。
中々日本だと試写会でもないと難しい。
あの人にはこの作品は心に響いたのだろう。
安藤さん、永山さん、田中さんの演技は素晴らしい。
一見すると怪物感は出ていた。
獅童さんもいい味出していた。
音に惹きつけられる魅力的な認識論的作品。
内容、舞台はとある田舎町夜一件の火事🔥の音から物語が始まる。田舎町の小学校に通う少年二人。麦野湊と星川依里を中心に取り巻く人々の三章構成によるサスペンス👥群像劇。印象的な台詞は田中裕子が扮する校長が言う『皆んなが幸せになれる事が幸せって言うんだよ。声に出さない事は楽器に🎷乗せて言うんだ。』この言葉が自身の嘘から自縄自縛になる各々の心情のカタルシスの解放と希望に繋がり非常に印象に残りました。この時の楽器の音🎷が悲鳴にも叫びにも聞こえ心象に訴える良い演出だと感じました。その楽器の音で自殺を思いとどまる保利先生も良かったですし、校長と湊くんの二人も素晴らしい。たまたま学校で聞こえ他、湊の母早織には響かない所など台詞と言うより音が非常に印象深い作品でした。印象的な場面では、年代毎に関わる問題が表に出されて見る人の年齢層を広げてるように感じました。でも来ている人の平均年齢は60歳ぐらいと高めだったのには驚きました。印象的な場面では、最後付近で二人が大雨の秘密基地廃電車内で地鳴りがした時の音が『出発の時間が来たのかな?!』と話す場面。二人の不安な喜びに満ちた表情が非常に心を揺さぶられました。映画を通して終始、音で繋ぐ場面展開には油断ならない緊張感を感じました。火事🔥で始まる時の虫笛(仲間を呼ぶ)の音や吹奏楽器の音や豪雨の音や地鳴りの音。非常に巧みで上手い。最後の『生まれ変わったんだろ?』と言う場面では『生まれ変わってないよ(お互いの性質)』との言葉には感涙ものです。人は自分が見たいものしか見えない。そんなメッセージが産み出す各々の怪物は、この映画の美しい風景を走る二人のラストが、観客に問いを投げ掛けている様に感じます。それはこの作品が監督と脚本家のマリアージュが見事に紡がれたからだと感じます。個人的には、湊くんに恋心を寄せる隣の席の女の子は人知れずボーイズラブ漫画を読んでるのには驚きました。腐女子なのに乙女かよっ!って微妙な心情の機微のやり取りが物語的にはどうでもいいですが好きです。東京03の先輩先生役も校長先生の旦那役も非常に良かった。そんな緻密な人物描写が面白い脚本の要因です。そして銀河鉄道の夜の様な美しい場面も見ものです。過去色々似た様な手法が取られている構成ですが、綿密な構成には驚きます。『羅生門』『カメラを止めるな』など他多数を見ても見劣りしない魅力的な作品です。
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