「子役がとにかく素晴らしい。」怪物 Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)
子役がとにかく素晴らしい。
主演の2人が、演技とは思えないほどの自然さで素晴らしかった。子供独特の純粋さと危うさ、矛盾だらけの言動をよく演じていた。今後が楽しみだ。
物語はできるだけ事前情報を入れずにフラットな気持ちで見てほしい。
さすがカンヌで脚本賞をとっただけあり、前半で貼られた伏線が後半でどんどん回収されてくるカタルシスがあり、全てを知ってからもう一度最初から観たくなる。
~以下ネタバレ~
最も粗は残るし最初まで解明されない部分は多い。なぜあそこまで保利先生を悪人に仕立て上げたのか。主演の2人に加え、うさぎについて証言した女生徒や、他のクラスメイトも保利先生の無実を知っていて味方をしない。
ただ子供とはなんとなくで嘘をつくし、予想以上に空気を読むので、保利先生一人を犠牲にしようとする学校側の求めるような答えを返したのかもしれない。いじめ問題に目を背けるために先生をスケープゴートにしたのかもしれない。いずれにしてももう少し納得できる理由付けが欲しいところだ。
第一章で酷い悪人に見えた保利先生が実はいい先生だったという仕掛けにしたかったのはわかるものの、恋人にゴムなしで「大丈夫だよ」とセックス迫ってる時点でこいつクズだなと思ってしまったので、全く保利先生に同情できなかった。
他にもダメな部分は多く、親から事実無根のクレームがあったとしても、理由をシングルマザーで過保護なせいだと決めてかかったり、子供が嘘をつくにしてもその背景を考えたり肝心の子供に丁寧に聞き取りをするのを怠ったり、謝罪の場で飴を食べたりしたらどう考えても悪手なのにそれをやること自体もう相手を舐めてるんじゃないかとしか思えない。
いくら保身に走っているにしても、周りの教師が保利先生を少しもかばい立てしないというのはさすがに人望がなさ過ぎる。マスコミが来たことで彼女にあっさり切られたところも、所詮相手と浅い関係しか築けなかった象徴のようだ(避妊しないクズだからこれを機に別れたのかもしれないが)。
湊の母親は頑張っている。だが頑張っているだけで息子を理解してはいない。11歳の子供が性的指向で悩んでいるかもしれないことを予測しろというのは無理があるかもしれない。だが、一つだけ映画から普遍的なことを言えるとしたら、親はどんなに子供のことを思ってるつもりでも、そういった必死さも含めて子供を時に追い詰めていることがあるのだ。湊の「うちも親に気を遣う」という言葉が物語っている。
第一章でいかにも良い夫、良い父親だったように語られる亡き湊の父親は、不倫相手と一緒にいるときに事故死している。それを湊は知っていることに母親は気づいているのかいないのか、湊は母親といるときは「良い父親だった」ごっこに付き合っている。
子供は親が思う何倍も物事をよく見ている。
ところで怪物の正体は何より中村獅童演じる星川君のお父さんだと思った。あの虐待っぷりは怖い。あいつをなんとかしない限り、2人の今後には何一つ救いがないように思えてしまう。