劇場公開日 2023年6月9日

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「恋愛メインの作品ではないはず…」水は海に向かって流れる Kさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5恋愛メインの作品ではないはず…

Kさん
2023年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

実写化で初めてこの作品を見る人は、感動するシーンが1つ2つあって良いかもしれません。
原作を読んだ人は、そのギャップに何度か死ぬと思います。

映画の宣伝を見て、「面白そうな映画だ、原作あるんだ、読んでから見てみよう」と思い原作マンガを買いました。一気に3巻読んでとても気に入ったのでその日そのまま映画を見ました。21時くらいに映画は終わって、死んだ部分(なんでそうなってしまったのかと思った部分)をiPhoneのメモに書いていたら23時の時点でiPhone13miniのスクショ5枚に収まらない量になってました。そこで特に訴えたいことを作品を知らない人のネタバレにならないように書きます。
映画の公式サイトで確認できる部分は書きます。

まだ1周しか読んでませんが、原作で私が面白い、良いと感じたところは次の通りです。
①どの登場人物も面白いセリフやアクションを欠かさない、人情味あふれる設定や環境
②直達くんの声に出さない大人びた気持ち、感情、考え方
③短い間で内面的にとてつもなく成長する直達くん
④高校での青春
⑤心を閉ざした榊さんがだんだんと感情を取り戻していく様子
⑥変えようと取り戻そうと努力し始めて爆発する感情

これが実写化では消されてたり捻じ曲げられてたりしてて死にました。

①は完全に消されています。全ての吹き出しが面白かったのに対し映画はそういったセリフはみんな全く言わず、そればっかりになるシーンは全く違うシーンに書き換えられています。減った分の笑かしポイントだったのかなと思うシーンが1つ2つあった気がします。

②もゼロです。直達くんは、というかたしか全員、心の声をレコーディングしていません。その代わりに映像に表れているようにも見えなかったので初めて見た人にはキャラの行動の意図がわからない場面が多いかと思います。
②がないので③も当然わかりません。

④はゴッソリ削られています。
まず「①の理由は楓さんを映したくなかったからなのか」と思うくらい楓さんがシーンの主役になりません。それでいていつの間にかシェアハウス内にいたり、ユーモアを封じられた優しい子だったのにいきなり「このハート泥棒野郎!」とだけ言ってみたり。楓さんは直達くんとどこでも話すし、モテることがわかるシーンもないから、唯一ある3人から告白された子だぞという冒頭のセリフが独り歩きというか、そこだけ変えないのかと思いました。楓役の當真さんの演技が上手だと思ったので少し残念です。
直達くんが部活動をしているかも不明になっています。部活シーンがないので面白い登場人物が1人減り、青春もより薄いです。

⑤は3回くらい折り曲げられています。
まずこの作品は榊さんのみを主人公として見た場合、「心を閉ざした人が感情を取り戻す」というストーリーだと思うのですが、映画の公式サイトを見てわかる通り「恋愛を辞めたお姉さんと年下君の逆年の差恋愛ストーリー」といった感じで紹介されています。ハグとかデートとかのキュンキュンドキドキ恋愛ではなく、もちろん恋愛も取り戻すうちの一つになりますが、怒りや寂しさなどの感情も取り戻しているので内容と広告のギャップが大きいのではないかと思います。
次に榊さんが取り戻す感情の中で、映画では明らかにならない部分があります。原作でいう最後の1年が1秒も描かれていません。だからといって、その1年で起こることを映画では前倒しもしていません。監督の名前が上に消えて、そのまま明るくなる劇場に驚きました。初めて見る方にとっては、結局なんだったんだ?で終わるかと思います。上でも書いた通り物語の紹介と内容にギャップがあるからだと思います。
そして⑤の最後、⑥とも関係しています。榊さんは「過去に計り知れないとてつもなく嫌な思いをして、心を閉ざした人」だと私は思っています。私が全て我慢していればいい、私が全て引き受ければいいと心を閉ざしてしまったから、恋愛もしないんだと思います。しかし映画内では単に「恋愛を辞めた、いつも不機嫌なお姉さん」として扱われています。恋愛を辞めただけで常時不機嫌はおかしいと思います。本予告動画の冒頭で「カレーじゃないんだ」と言うように、不機嫌さを表すためか最初から怒りを持っているように感じました。
心を閉ざした人は絶対にもっと優しいはずです。原作ではそれが表現されていました。私と関わるといいことないよという優しさが不機嫌に突き放しているように見える時があるんだと思います。だからこそ榊さんの「優しい人だよ。」とか「いい子だよ」というセリフに重みが生まれるんだと思います。私は15歳を8年やっていたのでこれは自信があります。

もちろん、全て良くないというわけではありません。
マンガを読み終えて映画を見る前、このお姉さんを広瀬すずさんが…と思いましたが、常時不機嫌なお姉さんとしては合っている気がしました。榊さんというより広瀬さんに寄せているのかもしれません。
主人公2人が朝海に行くシーンは原作にないですが、語り合わずにいることで2人の感情が爆発する瞬間をうまく表現していると思います。広瀬さんのマジ蹴りは私も受けたいです。
走るシーンはマンガでは表現できない人やカメラが実際に動く良さがあります。
映画を作る側の事情は全くわからない身ですが、この条件、この設定でなんとか全部成り立つようにしたぞという感じがします。

こんなにも違うと思ったのは自分だけかもしれない、それでもこの作品は売れるようになっていてこれだけ見てよかったと言う人がいる、かといって自分は映画監督になってすぐにこれのシン劇場版を作ることはできないと思うと悔しいです。原作者の田島さんも、ピース又吉さんとの対談動画で「映画のことはお任せしている。」と話していますが、このギャップをどう感じているのか気になります。又吉さんは「原作から少し形が変わった部分もありましたけど」とか「映画には出てこなかったですけど」と原作と違う部分を何度か話していました。このギャップは監督が作るものなのでしょうか?あるいは、監督の前田哲さんや関係者にも同じことを思ってる人がいて、よりエラい人に大人の事情ってやつで突き放されてるだけなのでしょうか?

K
トミーさんのコメント
2023年6月18日

私は原作が映画化されると聴いた時、不安でした。予告篇もポテサラとか出て更に不安が増したのですが・・やはり表現方法が明らかに違うのだと思います。ページを戻れば時間をかけて確認出来るモノとそうでないモノ、私はまあまあの再現度だと思いました。

トミー