「「みつけてくれてありがとう」」水は海に向かって流れる いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
「みつけてくれてありがとう」
原作未読だったが、観賞前に1巻のみ漫画サイトで無料だったので読済
漫画ではホンワカしたルックと話の奥深さに心を掴まれる読後感である
しかし一番の今作中の興味は"広瀬すず"その人である 映像での青みがかった結膜部分と黒く澄んだ黒目、彫刻のような横顔は、今作に於いて余すところ無く映されている スクリーン映えする俳優の中でも№1と言っても過言ではないと思う キャラクターとしても不機嫌さをあれ程演技してもまるで堪えない程の重装備のスペックにこれ又頭が下がる 彼女はテレビドラマでは本当に宝の持ち腐れになるのだから、このまま銀幕のスターで居続けて欲しいと願うばかりである
ストーリー展開は、フィクションならではのきっかけの偶然さと、その偶然が故に爆発的な化学反応が起るプロットである 原作からはそこまで逸脱していないみたいで、ラストの相違確認はしていない どっちにしようかのところでの心情でフィニッシュといった感じであった その後の方向は観客への委ねで、スピッツの曲が流れる組立てである
やはりキモは、不服で不遜である美貌の同居人の謎の解明が、自分の家族も絡んだ"崩壊"の経験に基づいたものであったということ そして成長が止まってしまった時間を巻き戻すべく、ケリをつけるため再び母親と対峙する 自分の父親、相手の母親双方から、金を請求することで(慰謝料ではなく、相手がダメージを可視化する手段)双方に落とし前をもたらすという方法は不思議と説得感を抱かせる話である 立ち止まったままでは心が壊れてしまう現時点を、遺恨は遺恨としてケリをつけて前に進もうとする出口への模索を描いた作りに落ち着く
簡単に二人が境遇の狭似に依り、恋愛に陥るかどうかは分らない 少なくとも女性は未だ未だ時間と経験が必要であろう 時間が感覚や精神を摩耗していき、若い頃の尖った潔癖は禿びていく ストレス発散である大量の調理や、一点豪華主義の食材でのアンマッチな味付が、若気の至りだったと懐かしく思える時には、心のウロはポロポロ落ちていることだろう 誰かから訊いた話だと、どんなに許せないことも50年経つとその感情が忘れるとのこと 意固地な程の純粋さを信じる若さは羨ましいし、そして雑味が加わる不純も又人生をまろやかにする
と、入力してみて、そんな表層的な事、本当にテーマにしたかったのか、そんな簡単な内容だったのか、偶然性が引き起こす人生の機微を暗示する話なのか、すこし不安を抱く 高級食材を使った牛丼や、うで卵、カレーに生卵投入、そして猫の演技の秀逸さ・・・ もしかして今作は料理&猫映画を制作したかったのでは?・・・
追記
原作のリスクをきちんと回避した制作陣に賛辞を贈りたい
26才OLと高校一年生男子の或る意味運命的な出会いと心の通い、そして結ばれる愛情 ポリコレ的にはまずアウトなプロットであろう それは法律的にだから・・・ でもだからといって心に灯った思いを無理矢理消すことは無理なのも人間である それは倫理的にとは真逆の心情 本来ならば制作陣も引越し先のベランダでのあの行動を映像化したかったのかもしれないと妄想が過ぎる でも、そこは「ばっかじゃないの?」で収束させた それは、もし続きを知りたければ原作読んで下さいという招待状だったかもしれない
興味深いアプローチであること、これは今作の特徴をきちんと踏まえた流れである
原作を完読した 確かにラストの件はまるで落とし処が違うところに甚だ驚愕しているし、何より、大いなる悲劇が孕んでいる事(あくまでフィクションだということを理解しないイマジネーション欠如な人達からの攻撃)は容易に想像できる
それでも、原作のストレートな腑の落ち方のカタルシスは映画作品とは別の爽やかさをもたらしてくれた どちらも心に響く良作であり、ましてやリスキーな原作を、映画化した制作陣のプロ意識に改めて尊敬の念を憶える よくここまで纏め上げたと・・・