「いい動きが堪能できる」長ぐつをはいたネコと9つの命 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
いい動きが堪能できる
アメリカの3DCGアニメーションは、『スパイダーマン:スパイダーバース』以降、新たな潮流の中にある。絵柄を手描きテイストに、リミテッドな動きも活かしたハイブリッドな作風で、昨年の『バッドガイズ』やこれから公開の『ニンジャ・タートルズ』のアニメーション映画もこういうテイストになるようだ。本作の場合は、アクションシーンでこのリミテッドテイストが取り入れられていて、見せ場がくると絵柄が切り替わるのだが、このメリハリが面白い効果を生んでいる。CGのフルアニメーション的な動きからリミテッド風に切り替わり、スタイリッシュなアクションが炸裂する。気取った猫が主人公なので、そのカッコよさも前作よりも倍増だし、観ていてとても爽快だ。本作はアメリカで予想外の大ヒットになったようだし、この潮流はしばらく続きそうだ。
同時に、日本の手描きアニメにCGが紛れ込んだ時に指摘されがちな、「馴染んでいるのか」問題もあると言えばあるのかもしれない。あまり深く考えずに見ていればいいんだけど、どうして絵柄と動きの質が切り替わるのかと疑問に思う人もいるかもしれない。
とはいえ、3DCGの進化もたんにリアルであることだけではなく、ようやく色々な方向性を模索できるようになってきた。これは良い傾向で、これからどんどん色んなトライが出てくるといい。
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