「剣士であるときと、落ちぶれたネコとなった時との落差が本作の魅力であるといっていいでしょう。」長ぐつをはいたネコと9つの命 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
剣士であるときと、落ちぶれたネコとなった時との落差が本作の魅力であるといっていいでしょう。
2011年.全世界30力国でN0.1の記録的大ヒットを叩き出し、熱狂的な“ネコ旋風”を巻き起こしたあの「長ぐつをはいたネコ」が、パワーアップして再びスクリーンに!戻ってきました。
愛くるしいモフモフにして、心はワイルドでダンディ、しかも剣を持てば、キレッキレのスゴ腕の、長ぐつをはいたネコ(プス=声・山本耕史)。
剣を片手に数々の敵を倒し命をかけた冒険を楽しみながらも恋も経験してきました。彼は巨大なモンスターを倒した後、頭上にベルが落ちてきて彼を潰し、9つの命のうち8つを使い果たしてしまっていたのです。
プスは目を覚ますと、残りの命が1つしかないことに気づきます。プスは後に賞金稼ぎのウルフ(デス=声・津田健次郎)との戦いに負けたとき、急に死が怖くなったプスは、賞金首のレジェンドの看板を下ろし、トレードマークである帽子やマント、長ぐつを脱ぎ捨てて自らの墓場に葬るのでした。そしてノラ猫の保護をしているママ・ルナのネコの家に赴き、そこの家ネコになることにしましたが、「賞金首」であるプスを、刺客たちはほうってはおきません。
そんな時、どんな願い事も叶う「願い星」の存在を聞き、再奮起。命のストックを求める旅の道中、プスが出会ったのは、ネコに変装したイヌ・ワンコ(声・小関裕太)と、かつて結婚も考えた気まずい元カノ・キティ(声・土屋アンナ)でした。
プスを狙う賞金稼ぎや、「願い星」の噂を聞きつけた手強い奴らもやってきて、前途多難な予感しかありません。次死んだら、ほんとに終わりなのに。けれども圧倒的強さを持つウルフは、どこまでもプスを追ってきて、彼に死を手向けようとします。長ぐつをはいたネコはどうなってしまうのでしょうか。
コメディタッチの前作に比べて、プスの死生観や死への恐怖を主軸に据えた結構シリアスなコンセプトから、いかに人生を楽しむかというストーリーが生まれました。
ウルフが圧倒的強さでプスを打ち負かし、死の恐怖を感じさせるまでは、いつもの自信に満ちたヒーローとして活躍していました。その姿は、ネコの姿をしたカッコイイ剣士として徹底的に擬人化されていたのです。
それがウルフによって剣士としての心を折られた後は、背を丸め普通のネコとなってしまうのです。エサ欲しさにママ・ルナに媚びるときのあざとさ、ネコらしさは半端なく、剣士であるときと、落ちぶれたネコとなった時との落差が本作の魅力であるといっていいでしょう。
今回は、「願い星」の力を得て、もう一つの命を得るべく、「願い星」を狙う賞金稼ぎたちとの三つ巴の闘いに挑みます。
でも最後に彼が悟るのは、残り一つしかなくても、いま生きているいのちの大切さなのでした。いままで命知らずの暴れ方で、9つの命を無駄に使い果たしてきた彼が、それに気付くところが、意外にも感動的な作品となりました。そして一匹狼で、誰の手助けにも頼ろうとしなかった彼が、次第にキティやワンコと一つのチームとなって心を繋いでいくところもよかったです。