劇場公開日 2023年12月8日

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「老いよりもボケるのが怖い」VORTEX ヴォルテックス 万年 東一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5老いよりもボケるのが怖い

2023年12月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

老夫婦を描いた物語として感動的なドラマにでもなるのか、そんな雰囲気にこそ意表を突かれるギャスパー・ノエの最新作にジャッロ映画の代表格であるダリオ・アルジェントが役者として主演を、相手役にはフランソワーズ・ルブランってジャン・ユスターシュの『ママと娼婦』を映画館で観れるチャンスを自ら逃した自分に喝ッッ!!

相変わらずのオープニングクレジットから始まり一番、不穏でノエらしい場面に感じたのは音楽も含めて母親が奇行に走るトイレでの様子と薬物依存から抜け出せない息子、それを見てしまう孫(息子)の救いようのない出来事を画面二分割で見せられる恐怖心を駆り立てられながら、どうしたって平穏からはかけ離れた不幸を纏いながら生活する二人にドラマ性はなく淡々とソコに向かう残酷性にリアルな余韻が。

自分自身の将来や親のことを考えると現実味があり過ぎて単に怖くなる感覚と、二人の老夫婦と同じ位の年齢だと思える夫婦が観に来ていたのが印象的で、幸せだった日々でさえブチ壊すような老後が待ち受けている描き方が悪趣味にも説得力はある、唐突に終わってしまうラストに行き着くには死ぬ迄、今までのどの作品よりも本作でのギャスパー・ノエが一番、容赦なく。

万年 東一