「心臓より先に脳が壊れるすべての人へ」VORTEX ヴォルテックス uzさんの映画レビュー(感想・評価)
心臓より先に脳が壊れるすべての人へ
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非常に疲れる作品でした。
ただでさえ二分割された画面によって処理しなくてはならない情報が多いのに、何も起きない。
何も起きないから、何か起きたときに見逃さないように気を張ってしまう。
BGMはなく、聞こえるのは衣擦れや呼吸音をはじめとした生活音と、囁くようなフランス語のみ。
その中で際立つタイプライターの打鍵音やミニカーをぶつけ合う音が、不快感をもたらす。
身も蓋もないことを言えば、所詮は他人事だし、あくまでフィクションなんですよ。
こういった作品は、そこに同情や共感をおぼえるような“親しみ”を与えてくれないと観るのが苦痛になる。
知らない人のホームビデオに興味はない。
更に、旦那は不倫してるし息子はクスリの売人という設定が、より自己投影を妨げる。
映像手法や、最後の徐々に空っぽになる自宅のスライド演出は非常によかった。
ベッドを撫でる奥さんのシーンにも感じるものがあった。
でも“映画”として、ドキュメンタリー以上に訴えるものがあるかというと、否定せざるを得ない。
焦点を絞らず、作り物の生活が垂れ流されてるだけ。
あの内容で148分というのは、観客が“観てくれる”ことに寄り掛かりすぎている。
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