「【孤独、愛する父の老いた姿、妻子ある男との愛に対する複雑な想いをレア・セドゥが表情、仕草で繊細に演じた作品。”それでも私は生きていく”のは彼女の父もだよな、と思った作品でもある。】」それでも私は生きていく NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【孤独、愛する父の老いた姿、妻子ある男との愛に対する複雑な想いをレア・セドゥが表情、仕草で繊細に演じた作品。”それでも私は生きていく”のは彼女の父もだよな、と思った作品でもある。】
ー ご存じの通り、レア・セドゥと言えば007シリーズを始めとした妖艶な演技を想像するが、今作での彼女は違う。
クレマンとのSEXシーンはあるが、それは彼女の焦燥感や喪失感を埋めるかのように描かれているのである。-
■現代巴里が舞台。
シングルマザーのサンドラ(レア・セドゥ)は、幼き娘リンを育てながら、且つては威厳があり、哲学の教師だった独り暮らしの父の介護を姉妹や父と離婚した母、レイラ達としている。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ミア・ハンセン=ラブ監督は前作「ベルイマン島にて」でも思ったのだが、何気ない会話の中で役者の表情の変化を捉えるのが実に巧い人だと思う。
ー 例えば、サンドラが且つての父の教え子に会った時に父に対する礼を聞いた時の一瞬の間を置いた後の涙するシーンなど。-
・且つてはサンドラが尊敬していたと思われる父は、神経疾患で視力と記憶を失いつつある。そんな父を施設に入れる事になった時のサンドラの何とも言えない表情。そして、父は施設を盥回しにされるのだが、サンドラを受け入れるしかない哀しみの表情。
・そんな時に出会った、友人クレマン(メルビル・プポー)。悪い奴ではないのだが、妻子持ちで、サンドラと妻との間を行ったり来たり。
ー えーっとね、クレマン君。男として言わせてもらうが、君、軸がぶれすぎ!シャンとしろ!あとは、名前を変えるよーに。(ホント、スイマセン・・。)
サンドラの気持ちが揺れ動いているではないか。-
<などと、クレマンに対し途中、苛苛しながら観ていたのだが、最後はキッチリと妻子との関係を清算し、サンドラの下へ。
その時のサンドラの嬉しそうな顔。
今作は、レア・セドゥの類稀なる演技を愉しみたい作品なのである。>
<2023年7月2日 刈谷日劇にて鑑賞>