「組織関連映画の中だと最もいまいちだった。」名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン) さなさんの映画レビュー(感想・評価)
組織関連映画の中だと最もいまいちだった。
思ったままに書いたのでとっ散らかった感想になっています。あと長いです。もっと書きたいくらいなんですが5000文字が限界なのでこれくらいで。
一言で言って不完全燃焼感のある映画でした。
素材は良かったはずなのに、期待していたのはそれじゃない。オーシャンバトルロイヤルミステリーと銘打ってるけどそんなにバトルロイヤル感もないし全然ミステリーじゃない。そんな何とも言えない気持ちになりました。黒の組織が関わる映画はいくつかありますが、個人的には最もいまいちでした。つまらなくはなかったんですけど、もっと色々と出来たと思うんだけどなあ…ってなりました。
でも個人的には去年のハロウィンよりは良かったです。去年のレビューはしてないんですが、つけるなら★3(気持ち的には2.8)だったので。今作は3.3って感じなので★3.5にしました。以下、まとめ。
●良かった点
・哀ちゃんの正体がバレたかも!?という緊張感がいい。でもメタ的な意味で映画で本当にバレるはずがないのはわかっているのでこの要素だけで盛り上げるのは難しいね。
・あのシステムがあの方にとっては都合が悪いらしいこと。ラムは最近姿を見せないあの方の様子を見るのに使いたかったけど、あの方はベルモットに工作を頼むほどあのシステムを使わせたくなかったらしい。この情報にはテンション上がります。その流れでエンドロール後の描写ですね。なぜ助けたのか?あれはフサエブランドを強調したかったのか、イチョウ自体が持つ意味を伝えたかったのかはわかりませんが、今後に繋がりそうな終わり方で良かったです。
・蘭姉ちゃんがめっちゃ格好いい。正直あの屋外での格闘シーンが自分的には一番盛り上がった。さすがアイリッシュさんといい勝負してただけある。
・エンジニアの女性の家族を人質にとられ、追い詰められるシーンは絶望感があってよい。キールが過去を思い返したり、哀ちゃんとエンジニアの女性が泣くシーンにも繋がりますが、あの哀ちゃんが泣いてる…ってなってうるうる来ました。
●気になった点
・タイトルにもなっている黒鉄の魚影、つまり潜水艦、大して生かされず。潜水艦の隠密性がすごいというところはもっと強調してほしかった。それだったら防衛省と海上自衛隊が全面協力してたような、絶海の探偵の方が自分は好きでした。今回は犯罪組織側が使うんだから協力は無理だろうし、あまり潜水艦の機能をフル活用したらそれこそ自衛隊しか対処出来ないのはわかるんですが…。潜水艦が全く見つからないから、灰原も助けられない…絶望…といった描写は特になく、浮上するところを狙えばいいよ〜ってあっさり教えられて、そっかあ…ってなった。ジンの兄貴にシェリーらしき女の子を見せるためで潜水艦を浮上させるのはちょっと…浮上したら潜水艦の意味ないよね。ていうか普通に潜水中の潜水艦内で地上と同じレベルで映像受信出来てるけど可能なの??隠密性が欠片もないのは組織あるあるだけど折角潜水艦使ってるんだからもっと生かしてくれーー!!隔絶された環境という舞台装置として使いたかっただけかな。
・コナン君よりもキールが頑張りすぎ。限りなく怪しまれるようなギリギリの仕事ぶり。今作で哀ちゃんを守った、守ろうとした感が強かったのはキールと蘭姉ちゃんです。赤井さんもっと頑張ってくれよ…。いや大事な仕事なんだけどあれだけかい!ってなった。赤井さんも安室さんも友情出演程度のレベル。コナン君がスマホ2台で二人に会話させるシーンはちょっとシュールだった。
・90秒どころか多分60秒くらいで残りの人達の避難が完了している。流石に無理がないか?
・フラグ立てるだけ立てといて特に回収されなかった所が多い。
スペアの眼鏡じゃなくて交換したの役に立ってた??私が気付かなかっただけかもしれないけど本当にただ交換しただけになってた気がする。終盤の鍵になるかと思ったけどそんなこともなかった。あの名シーンをなぞっただけ?もうあの頃の哀ちゃんとは違って、子どもによって人生を変えられ、生きることを諦めない、自分から他人に手を差し伸べることすらできるようになったと示したかった?勇気づけたという気持ちの問題?
あと、これはもしや解毒剤服用するかも!?と思わせておいて、あれ以降本気で何もなかった。もっと大きけりゃ…と思っているシーンはあったけども。あとあの船のおじさんは?何かあるような雰囲気だったけれども?
こんな感じで、期待させただけかいってなる所がいくつかあった。役に立ったの、犯人はこの人ですって示しているような仕草のシーンだけじゃないかな。それにしてもわざとらしくて雑感あったけれども。
・コナン映画でこんなこと今更野暮かもしれないんですが、警視庁捜査一課の人間がまずパシフィック・ブイに呼ばれるのか?事件後に目暮警部と佐藤さんが入れたのもアレだけど、初めから呼ばれていた白鳥さんと立ち入りを許されたコナン君はまじで謎。あれだけの設備なんだから巡視艇とかかなりの数いそうだし、それこそ哨戒ヘリとかあの辺に配備していてもおかしくなさそうだけど。それで言うとよく潜水艦で日本の領海に入れたよね。考えれば考えるほど潜水艦出すなら自衛隊がほしくなる!警備もザルだし、機密感もっとください。
・おっちゃんがまたただの役に立たないポンコツになってしまった。去年はすぐ退場してしまったとはいえ格好良かったんですけどね。声優さんが昔と違うのはわかるんですけど、普段は役に立たないけどやるときゃやる。そんなおっちゃんはどこへ行ってしまったのか。ただただポンコツ具合だけ強調したおっちゃんしか描かれないと正直がっかりします。
あと関係ないけどCV神谷浩史のインド人のお兄さん、何の前触れもなく眠りの小五郎のファンだった。
・簡単に犯人バレするピンガさん。コナン君の正体もバレてたまでは良かったんですけど、連れて行こうとしたのに意外とあっさり解放し、そしてあっさり消される。小物が過ぎる…。折角映画で出てくる黒の組織の一員なんだから、アイリッシュとかキュラソーみたいにこう、いろいろとあったら良かったんですけどね。もったいない。
・これが最も大きいんですが、コナン&哀ちゃん…わかりますよ…好きですよ…好きなんですけど、それは…公式でそれはだめよ…。いくら原作者がいいと言ったとしてもだめよ…。相棒レベルでは二人の組み合わせもっとくれ!って感じなんですけど、流石にそれは…我々には14番目の標的の思い出もあるんで…。いや普通にびっくりしました。今まであんなにもあんなにも明言はせず曖昧な感じにしといたのに!?!?ひえ……ってなりました。それまでの全てが吹っ飛ぶくらいには。
(心の中で)新一君って呼んだり、それが江戸川コナン君に変わったり、あなたはどうしていつもそんな顔が出来るの?と過去のね、助け出された場面等で見たコナン君の表情を思い返すシーンだったり、それらはね、めっちゃ良かったんですよ!良かったんですけども!思い返すだけだったら最高だったんだけどなーー!!そこまでは行っちゃだめよーー!!って叫びたくなった。しかも、終わり方がね、えっそれで終わり!?!?ってなりました。あの一連のシーンの衝撃が強すぎて組織とかもうどうでもよくなったし、実際割とあっさり終わった。逃げたその後もなく本当にあっさり。役に立たないシステムと見切りをつけたのはわかるんですけどあのエンジニアの女性見逃すんだ…。開発者の彼女がいる限りシステムはまた復旧出来るし本当に完成させるかもしれないし、完全に姿も見られたんだから普通消すよね。あの後ベルモットに消されるんですか??消されないにしてもずーっと監視はついてそうな今後だけど。あの最初のシーンでユーロポールの女性も、見られたからって消されたんだし。
最初の雰囲気も題材も良かったんですけどね、なんだか本当にどこに気持ちを持っていったらいいのかわからない…まさに不完全燃焼で終わりました…。
最近では一番面白かったゼロの執行人の監督&脚本の組み合わせということでかなり期待していたのですが、組織を描くのは難しかったかあ…って感じでした。本当にあの映画は音楽もドラマ様の演出もストーリーも良かったし、キャラクターもしぼってじっくり描いていたので、多くが噛み合った結果だったんだなあとしみじみ感じました。音楽に関しては好みもあるので難しいところですが今回は特に印象には残らなかったですし、何よりキャラの数が多いとうまく動かすのって難しいですね。しかも物語の本筋に関わる組織の話なので、詳しくも描けないという。
それにしても監督は完全に哀ちゃん推しですか??蘭姉ちゃんも見せ場はあったし格好よかったからいいけども、一部猛批判されそうな映画でもあり、ひやひやします。カップリングは本当に戦になりかねないから…。しかも公式でお出ししてる組み合わせじゃないだけに…。周辺情報はチェックしないので青山先生が何とコメント出してるのかはわからないのですが、OK出すんだ…ってなりました。
監督、本当に哀ちゃん好きなんだろうなあ…。そうかこれが長年答えを与えられなかったコ哀好きの叛逆か…そんな風に思わせる映画でした。
ここまででまとめると、今作は哀ちゃんやコ哀(哀コ)好きにはたまらない内容かもしれません。推理要素は(重要でもないし丸わかりなため)特にないので、そこは期待しない方が良いです。初期作品のようなものを求めている方は、うーん…ってなる可能性があります。
組織が関わる映画だと天国へのカウントダウンか、最近だと純黒の悪夢の方が良かったです。割と地味めな展開が続いた漆黒の追跡者の方が終盤は面白かったまであります。今回は子どもたちの活躍もなかったですし、ピンガはキュラソーやアイリッシュみたいな味のあるキャラでもなかったですし、そして何よりコナン君のヒーロー感が足りなかった…。頑張ってたけど、ほとんど迎えに行ってただけだし…。近年やりがちな標的を照らすという仕事はしてましたけど、自らの手で守ってほしいというか、やっぱり組織相手だし一矢報いて欲しかったんですよね。今作なら蘭姉ちゃんの方がよほどヒーロー感がありました。哀ちゃんから見ればコナン君より蘭姉ちゃんの方がヒーロー(お姉ちゃん)に見えるのはそうだろうけど。
でも今年の映画のコナン君は今までのコナン君とはひと味違っていて、蘭姉ちゃんじゃなくて哀ちゃんがさらわれた、で佐藤刑事相手に声を荒らげてしまうほど冷静さを欠いていたというのは非常に良かったんですよ…。色々書いたけど哀ちゃんとコナン君のコンビ好きなんで、哀ちゃんは知らないだろうけど少しでも報われたなあと思って。書いててこれ哀ちゃんからコナン君への台詞だなあって思いました。人工呼吸(キス)さえなければね、拝んで終われたんですけど、はあああ……。
あと最近ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)映画なるものが批判を浴びたりしていましたが、今作でも色んな人種の方が出てきて何となく配慮してます感を感じました。もともと降谷さんとか哀ちゃんが小さい頃いじめられていた、という話はありましたしエンジニアの女性の背景的に全く関係ない話でもなかったのですが、それとこれとは話は別で、配慮してる感を感じると一歩引いちゃうんですよね。人種や世代間の壁という話もしていましたが、映画でメッセージ性が強いのは当然で、実際映画を見る意味もそこにありますが、私はコナン映画ではそれは望んでいません。
ミステリー!アクション!蘭がピンチになりコナンが命懸けで助ける!コナン映画ではとにかくそれが見たいんです。つまり何が言いたいかというと、やっぱ瞳の中の暗殺者って最高だよなってことです。
最高傑作という言葉もあるようですが、それにしてはやっぱり色々と粗いので、整合性とかミステリー感を求める人からの評価はあまり高くならないんじゃないかと思います。この映画の評価は、どこまで粗さを許容出来るかにかかっているんじゃないでしょうか。あまり気にしないよ!っていう方にはいいと思います。
劇場で二回目は観ないかなあ。