「自分で選ぶ奇跡」マチルダ・ザ・ミュージカル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
自分で選ぶ奇跡
その昔、ダニー・デヴィート監督であった気がするが、もうほとんど覚えておらず。
ロアルド・ダール原作なのを改めて知った。
舞台ミュージカル化され、ミュージカルとして映画化。
子供の誕生は奇跡!
そう謳う開幕ハッピー・ミュージカルだが、全く違う反応の夫婦が一組。
ワームウッド夫婦。子供なんてありえねぇ! 誰がどう見たって妊娠(しかも臨月)なのに、妊娠してないって、奥さん…。
蛙の子は蛙と言うが、この性悪夫婦から望まれずして産まれたのは…
天才少女、マチルダ。
幼い頃から読書好きで、難しい数式も解き、明るく利発な女の子。
本当に鳶が鷹を生んだ。いや、コンドルが白鳥を生んだみたいな。本当に実の親子なの…??
厄介払いとして、学校へ。
念願の学校へ行けると喜ぶマチルダだったが、そこは…
巨体で筋肉もりもり、メスゴリラのようなトランチブル校長。
子供が大っ嫌い。特に頭のいい子やお利口な子は。
威圧と恐怖、時には暴力で子供たちを支配。学校ではなく、刑務所。
そんなトランチブルの独裁に、マチルダは立ち向かっていく…!
『オリバー・ツイスト』から『ハリポタ』然り、主人公の子供が逆境から自分の力で切り拓いていくのはイギリス児童書の典型。
決して明るさや希望を失わず、諦めないで成長していく姿はいつだって胸に響く。
これが少々大袈裟に描かれた児童書原作のファンタスティック・コメディだから通用する。リアルだったらマジヤバい。
トランチブル校長の横暴は犯罪レベル。
子供たちを“クズ”“ウジ虫”と罵り呼び、子供たちも先生も前に立っただけで恐怖でぶるぶる震える威圧感。
極め付けはその怪力。女の子のお下げ髪を掴んで、振り回してハンマー投げ!
他にも権力や恐怖でやりたい放題。女帝大天下。
あくまでブラック・ユーモアで児童文学ファンタスティック・コメディとは言え、コンプライアンスが厳しい時代によくやれたな…。
とことん悪く描いていい。
のさばらせてのさばらせて、最後にぎゃふん!…と言わせた時の痛快さ。
エマ・トンプソンの怪演。
ミュージカル・シーンはたっぷりふんだんに。
子供たちの歌唱やパフォーマンスにも圧巻。
その昔のダニー・デヴィート監督版でのマーラ・ウィルソンもキュートだったが、今回のアリーシャ・ウィアーもキュート。新たな天才子役現る!
大人たちは揃いも揃ってクズばかりだが、近所のフェルプス夫人とラシャーナ・リンチ演じるハニー先生の優しさに救われる。
校長先生も改心して、両親も親の愛に目覚めて、皆ハッピーエンド!…にはならないのがロアルド・ダール風味のビター。
最後、マチルダは自身で選ぶ。
これが私が望んだ奇跡。