ゴジラ-1.0のレビュー・感想・評価
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怪獣映画に人間ドラマは必要か
シン・ゴジラが庵野監督によるゴジラの2次創作だとしたら、今回の作品は正当派シリーズと2次創作の中間といった感じか。
今作が過去作と大きく違うのは、物語の「主役」が存在し、その主役を中心に物語が描かれていること。
これまでも一応物語の主役的な存在はいたが、それはあくまでゴジラと対峙する人間側の代表的な存在であって、人物の物語が描かれることはほとんど無かった。
それが今回は、神木隆之介演じる敷島が「戦争で生き残ったことへの苦悩」を持つきっかけから、それを乗り越えるまでが描かれている。
まずここに抵抗を感じるかどうかで映画の評価はガラッと変わる。怪獣映画に人間ドラマを求めないファンは一定数いるだろうし、実際ハリウッド版ゴジラ(2014)のドラマは個人的にめちゃくちゃノイズだった。
個人的に今作では、その人間ドラマがノイズにならないギリギリのバランスで、なおかつゴジラと上手く絡められており、抵抗無く最後まで観れた。
単純に「帰還兵の苦悩」とゴジラを絡めるという発想が凄いなと感じたし、これなら今作の舞台が戦後間もない日本である理由も納得できる。
ただ、それを描くなら「ゴジラである必要はないだろ」という意見もあるだろうし、それは本当にそう。ここはもう山崎監督作品だからと割り切るしかないと思う。
肝心のゴジラの描写に関しては、CGゴジラの中ではハリウッドも含めても過去最高だと思う。CGになってから、昔の特撮にはあった怪獣の「重厚感」が失われてしまっていたけど、今回はそれがしっかり表現されていた。そこは流石VFXのプロという感じ。
もう少し暴れ回るゴジラを観たかった気もするけど、戦わずにただ暴れるだけのシーンって意外と間が持たなかったりするので、それは仕方ない。ゴジラの造型もミレニアム以降で1番カッコいいと思うし、このゴジラで続篇が観たい。
1つ残念だったのは、シン・ゴジラに続いて今作でもゴジラがクリーチャーみたいな生物として表現されていたこと。回復が早いとかは良いんだけど、流石に裂けた口が爆速で治るのはうーん…
最後の最後もサービス的な意味合いも含めて復活を予感させたのだと思うけど(絶対やると思っていたし)、粉々に崩れたなら流石に復活にも違和感。
ゴジラは生物として最強であってほしいけど、生物を超えた存在にはなってほしくないなぁ。
その他、軍艦の異常なスピードでの調達や、「ダンケルクか!!」と言いたくなるような民間船の参戦からの爆速数珠繋ぎ、そして最後の展開などご都合主義やツッコミどころも多い作品。
だけどまぁそもそもファンタジーだし、典子の生存は敷島が戦争を乗り越える上でやっぱり必要だったのかなぁと思う。賛否あるのは間違いないが、あれはあれでとても良かった。
色々な考察も早速出ているが、正直今回は映画内で描かれていないところの伏線みたいなものは無いと思う。山崎監督があまり裏設定にこだわっているイメージも無いし、庵野作品のような「実はあれは…」みたいなものがあるとは思えない。何より邦画のお約束みたいな展開が好きな監督だし。もちろん考察は自由だけど。
「シン・ゴジラ」という大当たりした作品の後ということもあり、ゴジラ映画のハードルもかなり高くなったと思うけど、個人的に「シン・ゴジラ」より総じて楽しめた作品だった。怪獣映画を観たいなら、お勧めできる作品。
これはゴジラ映画か?
まず最初に断っておくと、おそらく自分はターゲット層ではなかったのだろうな、と漠然と感じているところです。
以下、感想。
あまりにも「シン・ゴジラ」に引っ張られすぎている。
監督がゴジラを撮るにあたって、過去作品が好きなのは構わないが、あまりにも直近の作品と類似してしまうのはどうなのか、とは思う。
そも、山崎貴監督作品が苦手だとという前提もここに添えておく。
今回のゴジラは「ゴジ泣き」なるワードを推しているようだが、根っからの天邪鬼なもので他人に「泣きなさい」と示されることが滅法嫌いで、映画においては自然発生的に泣きたい面倒くさい思いがある。
その点、泣けなかった。
(というか、ゴジラと感動は最も程遠い場所に位置してそうな気がするのだが……。)
正しくは、泣けそうなシーンは多々あるのだが、その度に山崎貴監督の(余計な)シナリオが水を差してきて、涙が引っ込んでしまうのだ。
シーンごとの落差が大きく、感情の分断がすごい。
海溝よりも深く深く分断されてしまう。
例えば、もうラストシーンだが、敷島と坊主が港に戻ってきて熱い抱擁を交わすシーン。
あそこは良かった。
ウルッと涙腺が緩んだ瞬間、果たして作中におけるネームドキャラクターとして存在する意味が薄い安藤サクラ扮する澄子が登場し、典子が生きていることを伝えにくる。
あ、うーん。
涙ひっこんじゃう。
さらに遡って、銀座で典子がゴジラに襲われるシーン。
さながらSASUKEのごとく一人電車に取り残され、絶対絶命、さあどうなる……!?
いや……あの……
そ う は な ら ん や ろ。
そしてその直前のシーンで「自分は絶対に生きなければならない」と言いながら、ゴジラに接敵した後は生きる方策をとっているように見えない。
(あまりにも巨大な存在に価値観を打ち砕かれたとも見えるが)
熱光線のシーンは敷島がどうにか助かっている点から、もっとこう、やりようがあったでしょ!? となる。
さらに、敷島の「自分の戦争が終わってない」という言葉、それは確かにそうだろうが、だからと言って、じゃあ何をしているのか。
キャラクターの言動や行動理念が理解できない瞬間がある。
だから、話が入ってこない。
さらに、安藤サクラや佐々木蔵之介といった錚々たるメンツではあるが、こと今回のゴジラにおいては異物にしかならなかった。
安藤サクラ扮する澄子は、戦争で子供を亡くしてしまい、アキコを育てる手助けをする口は悪いが心は優しい隣人だが、どうにも台詞回しがいちいち奇妙。
「バッド・ランズ」ではその軽妙な口調はひどく堂に入っており凄みを感じたが、今作の背景美術の中でその演技をすると、如何ともしがたく異物感が生まれる。
また、佐々木蔵之介。
こちらは、最後まで「どのポジションの誰」なのかわからない。
ちょいちょい名台詞っぽくカッコ良さそうなことを言うが、あまりにも唐突なのと演技演技しすぎているせいで、頭に入ってこないのだ。
こちらも安藤サクラと同じように演技が絶妙に軽い。現代劇なら良かろうが、元軍人然とした人たちに混じって飄々とした態度と口調で存在しているので、それもまた違和感を得てしまう。
この二人は役者ありきで役があるような、そんな邪推が立ってしまう。
例えそうでなくても、そう思ってしまって作品を観る邪魔になるのだ。
結局、ゴジラに余計な朝ドラのような脚本は要らない。
戦争(終戦)を描きたいのか、ゴジラを描きたいのか、朝ドラがしたいのか、全てが片手落ちのように思えてしまい、せっかくの良いシーンが全部勿体無い出来になってしまった。
最後に、色々書いたが良かったシーンは以下。
ゴジラの全部。
ゴジラ登場から戦闘、それら全ては格好良く絶望的なまでに強く、とてもよかった。
お決まりのBGMは映画音響で最高の出来だし、テンションぶち上がる。
戦艦高雄との海上ファイトなんて二度と見られないであろう画作りで、これまた素晴らしい出来映え。
だからこそ、本当に惜しい。
悪くない。
悪くないのだが……。
自分が求めていた「終戦直後の復興に向かっている日本にやってきたゴジラの映画」とは違うものが作られたな、というどうしようもなくなった感想はこれにて終わる。
結論、これはゴジラ映画ではない。
「神木隆之介・浜辺美波のW主演映画」でしかないのだ。
ほんのちょっとのスパイスとしてゴジラを添えて。
あと、これで本当に最後にするが、山崎貴監督作品の演技指導というか、演技の作り方が苦手。
いわゆる「自然な会話」を好まない監督なのだろうな、と思う。
常に「演技している感じ」を求めて、「大仰さ・わざとらしさこそ最良」とする作品作りに終始している気がする。
(今回でいえば「これからの時代、お前たちに託すぞ」的なセリフ。何コレ?)
うーん、苦手だ。
泣かそう泣かそうとしてくる感じが鼻につく
やっぱり山崎作品は肌に合わないんだなってのを再確認した映画でした。
クサくて先の読める本とクサい演技がしんどくてしんどくて…。途中から早く終んないかなって思って観てました。展開はほぼほぼ予想通りというか予定調和というか、見え見えの伏線は予想通りの結果に帰結します。わかりやすく作ったのかもしれませんが、意外性は皆無でした。
唯一そう来たかって思ったのは震電の脱出装置の存在を予め知らされてたってとこですね。爆弾の安全装置と言われてたレバーが実は脱出装置だった、という展開だと思ったんですけど。あとは割と予想通りの展開でした。
あと色々細かいとこ気になる点が沢山あったんですけど、多分粗探ししちゃうくらい物語に没入出来てなかったということかと思います。
ゴジラの放射線発射シークエンスはカッコよかったです。あと、ゴジラの大きさの演出とかゴジラによる絶望感とかは見事でした。
ゴジラはウルトラマンではない
最近のゴジラはモスラや宇宙から来た怪獣などと戦いますが、この頃のゴジラはそうではないです。
初回より昔のゴジラですからね。
そして最初から気の荒かったゴジラは、核実験の後、驚異的な怪獣に成長します。
そのスケールは桁違いの破壊力です。
軍隊がない当時、米軍も期待できない中でどうやってゴジラに対抗するのか。
その人間ドラマがとても良かったと思いますね。
主人公の敷島は、現代の設定であれば自衛隊員で、そうでなければ戦闘機に爆弾積んでゴジラに突っ込めません。
しかも突っ込む理由に苦しみますよね。何で命を捨ててまで突っ込むのか?
今回の設定は特攻くずれで本当なら死んでる人間、しかもゴジラにまつわる大きなトラウマを抱えて、自分が生きているのか死んでいるのかもわからない程悩んでいる。
死ぬ理由には事欠かないです。
一緒に暮らしているのは、三人とも血の繋がってない女性と子供、この設定も終戦時ならではです。
元々血が繋がっていないから未練はない。しかし、この血の繋がっていない子供が、彼を生へと引き戻す力となる。
この辺の物語も良かったですね。
そして、乗員の命など考えていなかった零戦を整備していた橘が、震電に脱出装置をつけていた。
そこが価値観が死から生へと転換した、即ち敷島の戦争が終わったという象徴になっていて感心しました。
私の中では、ゴジラ映画の最高峰と言える作品でした。
ゴジラが主役ではありません。人間ドラマです。
ゴジラが主役ではありませんね。人間ドラマでした。
浜辺美波さんも神木隆之介さんも死んだら評価-1.0にするところでしたが、ふたりとも生きていて良かったです。
山崎貴監督のVFXはさすが、ゴジラがすごい迫力でカッコよくて楽しめました。
安藤サクラさん、今年だけでもう5本の映画で拝見しました。大活躍ですね。
令和の画像と昭和の脚本
さすがの山崎監督、画像は非の打ち所なく綺麗で自然でした。令和のCGはやはり凄いですね。是非劇場で体験を!
さて、脚本です。昭和であればこの脚本は許されたと思いました。東京のど真ん中でゴジラの放射能波動による爆破&キノコ雲、相模湾沖で放射能を最大蓄積したゴジラが爆破されます。昭和であればコレでめでたしなんだろうけど、この後の放射能汚染どうなるんだろうと気になってしょうがなかったです。
浜辺美波はあの勢いで飛ばされたら絶対死んでるでしょう。百歩譲って無事だったとしても、浜辺の葬式からゴジラ退治までそこそこ日数あったにも関わらず、何故エンディング間際まで無事を知らせてこなかったのか?暫く記憶が戻らなかった等の言い訳設定があれば、「なら仕方ないね」と無理矢理納得するのですが。。。
最後に、まだゴジラは復活するくだりがありますが、もう要らなくないですか?次作のゴジラは別の世界線で良いと思うのですが。
思った以上に良かった。
もっとエンターテイメント色が高い作品かと思っていたが、境遇などに負けず抗う、極限を掘り下げた人間の生き方が描かれていた。
最後はハッピーエンドに振り過ぎた感はあるものの、それが無ければ救いが無さすぎるとも思うので、悪いとは言えないと感じた。
不思議な映画
神木隆之介と浜辺美波の演技が酷い。
ストーリーも何百回と擦ったような内容。
だけど戦闘シーンは鳥肌が立つほど凄まじい。
構図、ビジュアル、臨場感
戦闘シーンはその全てが素晴らしく、お馴染みのテーマがが流れるラストのところなんかは周りから「うぉ〜」と声が上がったほど。
私も鳥肌が止まらなかった。
演技とストーリー0点。アクション120点。
こんな映画ほかにあるのだろうか?
終わってから頭が混乱してしばらく考えがまとまらずツレに
「凄かったけどなんなんだろうこの映画?って気持ちなんだけど分かる?」
と聞くと爆笑していた。
そんな映画でした。
昼ゴジ、さいこー!
ハリウッド版の不満なとこは、夜に出てくるシーンが多いんだよ!「夜ゴジ」何やってんだかわかんないしさ。その点今回は冒頭から出し惜しみなしだし、明るい中でゴジラが暴れ回るのは、すごくいい!
それにキャスティングもいいよね。特に浜辺美波!シン仮面ライダーも出てたし、今回もいい味出してる!
だからこそ、
その典子が途中退場するのは「おおーこの退場は重いぞ」と評価高かった!
のに、
あのラストはー!街並み吹き飛ばすのに人間は助かるの?それは、ちょっと、、、
だから最後の敷島も、本当は特攻するつもりが、橘の仕掛けで助かり、パラシュートで降りながら涙する、くらいでよかったんだよ。
って感じでパーフェクト★5なのが、4.9に下がった。でもオーラスでお決まりの
ゴジラ復活の予感
って終わり方を見て少し考えた。何やってもゴジラ復活するのに、人間の方が命をかけるのもなあ、って。これでゴジラ完全抹殺できたなら、主要メンバーの死とも釣り合うのかもなあって。そう考えると一作目ゴジラはやっぱ偉大だな。
シンゴジラの後はやりにくいだろうし、どうだろうなあと思ったけど、がっちり「ゴジラ」してました!やっぱ、ゴジラは日本が作らなきゃダメだよね!
冒頭のストーリー展開、ゴジラでなくても成り立つくらい「グッと」きたなあ、
あ、銀座に橋爪功、いなかった?
ゴジラが主役であるべき
んーーーー。
ちょっと期待はずれだった。
ゴジラはカッコイイけど脇役的な扱いだし、人間が如何にして未知なる生物ゴジラを倒すのかに焦点を当てすぎな気がする。
その割にはストーリーも単純。久しぶりの日本版正統派ゴジラシリーズなのだから、もう少しエンタメに振っても良かったのでは??
ってのが感想。
ゴジラの立ち泳ぎ(可能ならばIMAXで)
二度目の鑑賞はIMAXで見ることができました。
一度目には多分もう見ないと思っていたこの作品ですが、IMAXで見るチャンスがあったので、再び鑑賞。前回より評価が上がりました。
よかったです!!!
今回、一番引っ掛かったのは、1500mの水深の海で、ゴジラが上半身を海上に出していること。立ち泳ぎでもしているのでしょうか。
〈追記〉
欲をいえば、安藤サクラさんがもう少し普通の演技をしてもらえればよかった。それから、子どもを扱うのであれば、是枝裕和さんや工藤将亮さんのようにじっくり時間をかけて撮れれば、子役の子ももっと魅力的な演技(?)ができたのではないかと思った。
〈最初のレビュー〉
結局、またかと・・・
「アイアンジャイアント」しかり、「インディペンデンスデイ」しかり、はたまた「アルマゲドン」しかり。結局またか、と思わせておいて・・・。
監督のメッセージはきちんと伝わりました!
「生きろ!」
特にメインテーマが流れてからの後半。よい!!
理不尽な戦争の呪縛からの解放。ありえたかもしれないもう一つの戦後。
本多猪四郎監督、円谷英二特技監督が世に送り出した54年度版「ゴジラ」は日本映画で初めてブロードウェイで公開され大ヒットとなった。
この作品が当時世界に及ぼした影響ははかり知れない。いままで人形アニメによるモンスター映画が主流だった中で、着ぐるみアクターによって演じられたモンスターの姿は新鮮だった。
そのゴジラの動くさまは人形アニメのようなチープなものではなく、リアルで重量感があった。その後イギリスでは「怪獣ゴルゴ」、アメリカではキングコングのリメイク作品は着ぐるみアクターで作られることになる。
人形アニメによるモンスター映画の第一人者レイ・ハリーハウゼンは「ゴジラ」を見て自分の作品「原子怪獣現る」の盗作だと訴えたが、「ゴジラ」のクオリティーの高さから全く相手にされなかった。
そんな偉大なる54年度版「ゴジラ」はいまだに怪獣映画の金字塔としてのその地位が脅かされることがない。この初代「ゴジラ」に追いつこうとこぞって東宝は何度もリメイク作品に挑んできたがその結果は惨憺たるものだった。
当時劇場鑑賞した84年度版「ゴジラ」は見るに堪えない代物だったし、続いて公開されたハリウッド版「ゴジラ」はエメリッヒがいい加減に作ったものでゴジラを冒涜する作品でしかなかった。その後のギャレス版「ゴジラ」はまじめに作ってはいるがやはりオリジナルには程遠い代物。
そして庵野版ゴジラは「シンゴジラ」としてある意味ファンの期待には応えようとしたものではあったが、やはり庵野色が強いエヴァンゲリオンゴジラであった。
これらの作品すべてに共通する点、初代ゴジラにあってこれらのゴジラにないもの、それは作品に込められた反戦、反核のメッセージだ。
初代ゴジラは明らかに原爆を怪物の姿として投影したものだった。そしてゴジラと対極の芹沢博士も戦争が生み出した悲劇のマッドサイエンティストだった。
彼の開発したオキシジェンデストロイヤーによりゴジラを葬り去った後、あのゴジラが最後の一匹だとは思えない、核兵器開発が続く限り第二、第三のゴジラが現れるだろうという山根博士の言葉で作品は締めくくられる。
このように初代ゴジラは反戦、反核のメッセージが如実に込められた作品だった。そして今回満を持してゴジラフリークである山崎監督がメガホンをとった本作。あえてこの戦後すぐの時代を舞台設定にした意図、まさにこれまでのリメイク作品で描けなかった反戦、反核を真正面から描こうと挑んだのだ。その彼の志は脚本に色濃く表れていた。
主人公の敷島は特攻を命じられながら死にきれなかった男。敗戦を迎えたいまでも自分だけが生き残ってしまった罪悪感から苦しみ続けていた。愛する人がそばにいてもけして自分は幸せになってはいけないのだと、まるで生きるしかばねのような人生を送っている。
そしてゴジラという怪物が再び彼の前に現れた。愛するものを奪った怪物を倒すために今度こそ自分の命を犠牲にして戦うのだと決心する。
敗戦後、武装解除された日本では頼るべき軍隊もない、米軍も頼れない。そんな中、市井の人々が団結してゴジラ殲滅作戦に挑もうとする。もうあんな理不尽な戦争は終わった。今、我々は強制されて戦うのではない。自分や自分の家族を守るために自分の意思で戦うのだと。命を捨てる戦いではない、未来のための戦いだと皆に話す野田の横でひとり特攻を決意した敷島の姿がそこにはあった。
しかし、今度こそゴジラに特攻を仕掛けて刺し違えようとした敷島に整備士の橘は脱出装置を使うように言う。生きろと、愛する人のために。
まさにこれは「永遠のゼロ」を撮った監督の特攻に対するアンチテーゼである。そして先の戦争に対しても。
人の命を軽んじる理不尽な先の戦争の呪縛から解放された敷島、彼自身の戦争は今ここでようやく終わりを告げたのだった。
政府によるのでなく民間の力でこの大きな試練を乗り越えた日本、実際に当時このような出来事があったなら、日本の戦後も違っていたのかもしれない。少なくとも新たなる戦前を迎えるようなことにはならなかったのかも。
原爆の申し子であるゴジラに対して人類が兵器ではなく英知を結集して勝利するこの結末は、現在の核の脅威に対しても人類の英知を結集すれば乗り越えられるはずだという監督のメッセージとして受け止めることもできる。
本作は今までのリメイク作品が到達できなかった初代ゴジラに引けを取らない作品だった。往年のゴジラファンとしてはそんな作品にはもうお目にかかれないだろう、シンゴジラで我慢しとくか、と思っていた。しかし、今回山崎監督は見事にやってのけた。
ちなみにゴジラが絶命するところで皆が敬礼するシーン、あれは三島由紀夫も述べていたゴジラ英霊説を踏襲したんだろう。敷島がゴジラに希望を奪われて戦死者たちの家族写真を見つめながらやはり許してくれないのですね、と言ったことからもそれは明らかだろう。この点からも本作の脚本がかなり練られたものだということがわかる。
本作は監督の今までの作品「永遠のゼロ」、「アルキメデスの大戦」、「オールウェイズ三丁目の夕日」、「スペースバトルシップヤマト」等々、これらのキャリアを総動員して作られた監督の集大成であり最高傑作であることには間違いない。散々監督を酷評してきたライムスター宇多丸氏も本作に関してはけちのつけようがないのではないか。
正直、54年度版ゴジラを五つ星とするならば相対的に星は下げたいところだがやはり五つ星とした。
ほぼ完ぺきな作品だがあえて不満を言うなら、銀座襲撃の際のゴジラの動きがCG丸出しなのが残念なのと、都心襲撃が一回しか描かれなかった点、これは予算の都合があったんだろうか。あと銀座襲撃のBGMは「モスゴジ」を選んだ点、「モスゴジ」は確かに初代ゴジラに次ぐファンにとっての人気作だが、やはり初代に比べると重厚さが足りない、あそこも初代ゴジラのBGMでいってほしかった。それ以外はほぼ満点。
見事なゴジラ映画を作り上げた山崎監督には感謝しかない。世界的ヒットを願う。でも続編をゴジラ対ビオランテみたいにするのはご勘弁。浜辺美波がビオランテになるなんてまさかね。
いや、大いにありうる。今回は先の大戦の呪縛からの解放がテーマ、次回は復活したゴジラと人類が永遠に戦い続けなければならない姿を通して人類と核の問題をテーマとして描くことができる。浜辺演ずる典子の悲しい宿命は人間ドラマパートを大いに盛り上げてくれるはずだ。
すでに二回鑑賞したが、次はIMAXでの鑑賞を検討中。
シンゴジラの後という高いハードル
個人的には好評だったシンゴジラの後という高いハードルをクリアしたと感じました。
(上回った訳じゃないんですが)
多くの期待には応えられてるとは思いますしシンゴジラの政治部分は可能な限り排除して民間vsゴジラという構造にしたのは差別化出来たんじゃないかと思いますね。
物語部分はサプライズ感は無く途中でオチまで想像出来た人が多いかと…
まぁ流石に生きてた!は感情的には乗り越えたのに更にハッピーに振り過ぎ感ありましたが(G細胞?らしきものには目をつぶるとして)劇場で泣いてる人も居たし子供連れもみかけたので一般的には現状の方がウケそうだとは思いますので間違ってないんじゃないですかね?
考証はともかく熱線放射背びれのギミックとか震電はカッコよかったです
(機体を揺らして下見るのがいい)
怪獣プロレス特化型の海外ゴジラと違い方向性は違うもののリアル寄りだったシンと-1で和製ゴジラワールドもこの先どういう方向性の作品が提示されるのか気になる今作ではあったと思います。
圧倒的な絶望感に抗う怪獣映画の傑作
主人公の敷島(神木隆之介)は、戦争の特攻隊からも逃げ、たどり着いた飛行場でも突如現れたゴジラを攻撃する勇気がなかったため、仲間を失う負い目を感じていることが重要なポイントになっています。
個人的には、特攻から逃げて生きることは恥ではないと思っています。かの有名な武将の徳川家康だって、合戦の時は涙目で小便をチビりながら生き延びたため、江戸幕府を開いて人生の勝者となったのです。
中盤までは、臨場感はあるが、ストーリーも薄めで普通の怪獣映画だなと思っていました。
予告であった通り、この作品は「生きて抗うこと」をテーマとしてしっかり立てているため、終盤そのテーマを劇的に表現することができました。
まず、困難に打ち勝つためには、勇気を持って行動することで、映画では敷島が自ら戦闘機にのり、対ゴジラの解決策を見出だしました。
そして、単に特攻するのではなく、生きて困難(ゴジラ)に打ち勝つことで、彼は人生の勝者となる結末を迎えることができたのです。
中盤までは並の作品と感じていましたが、終盤に以上のような調整を加えたため、涙が出そうなくらい感動し、傑作になったと思います。
【”運命に抗っても生きる!”第二次世界大戦末期に現れ、大戦後も復興途中の東京で暴虐の限りを尽くすゴジラを、大戦を生き延びた人たちが、日本の未来の為に命懸けで斃そうと奮闘する姿を描いた胸アツ映画。】
■1945年、特攻隊員だった敷島(神木隆之介)は、飛行機に不具合があるとして、大戸島へ不時着する。(だが、飛行機に不具合は見つからない・・。)そして、深海魚が浮かび上がる中、大戸島で伝説であったゴジラが現れる。
敷島は整備兵のリーダーである橘(青木崇高)から”機銃でゴジラを撃て!”と言われるが彼は固まってしまい、その間に整備兵たちを次々に殺す。
その後、敷島は心に傷を抱えながら両親の家を訪ねるが、隣人のキツイが情の厚い澄子(安藤サクラ)から死んだと聞かされる。
だが、敷島は闇市で典子(浜辺美波)と赤子と出会い、一緒に住むようになる。
◆感想
◼️ゴジラ映画でここまで、胸が熱くなるとは、鑑賞前には、正直思わなかった。
今作品はゴジラ映画ではあるが、第二次世界大戦に敗北した日本を再生しようと、命を掛けて努力する民の姿を描いたヒューマンドラマでもあるのである。
・敷島が再生していく日本の為に、危険を冒して機雷処理を志願する姿。
そして出会った熱き心を持つ船長(佐々木蔵之介)、野田博士(吉岡秀隆)、水島(山田裕貴)。
ー この3人と敷島は作業を進める中で心を通わせて行くのである。彼らは敷島家に招かれ典子の手料理を口にする。敷島と典子と大きくなった女の子はまるで、家族のようである。敷島にとって、大切なモノが出来たのである。-
・銀座で働き始めた典子は、上陸して来たゴジラの熱線が起こした突風により吹き飛ばされてしまう。
ー ゴジラが熱線を口から発するシーンは、数回描かれるが、背中の棘が青白く光り、不気味に隆起するシーンは山崎監督お得意のVFXを駆使したモノで秀逸である。-
・GHQも日本政府もソ連を気にして、手を出せない中、野田博士は元空軍の人達を集め、ゴジラを斃す策を提示する。
ー ここで、野田博士が言った言葉が再後半に効いてくるのである。
”日本は、人命を軽視し過ぎた。脱出口のない飛行機、果ては特攻だ!”-
・ゴジラを深海底迄落とし、再度海面に戻す作戦。短時間で増圧、減圧をさせる事でゴジラを破壊しようとする野田博士の作戦は、結局は上手く行かないのであるが、ゴジラを引上げる際に多数集まった船の数々。その中には負傷して乗船を船長に拒否された水島もいるのである。
ー 可なり沁みたシーンである。危険を顧みず日本の未来の為に集合した人々の善性が伺えるからである。-
■一方、敷島は終戦前に密かに開発されていた最新型戦闘機を、橘に殴られながらも自分の弱さの為に家族を亡くした整備兵の家族写真を彼に見せ、整備の協力を得る。
そして、敷島は上陸したゴジラを海面に誘導し、熱線を発する瞬間にゴジラの口に突っ込み、積んであった爆弾を爆発させる。
観ている側は「永遠の0」と同じか・・、と一瞬ガックリするが、敷島が橘が密かに作っていた脱出口から落下傘を付けて舞い降りる姿。
素直に感動する。そして、野田博士が言った言葉を思い出すのである。
<更に、亡くなっていたと思っていた典子が病院に収容されているという電報が届き、敷島は典子と奇跡の再会をするのである。
今作は、様々なシーンで胸アツになってしまった、ゴジラ映画で有りながら、日本の復興の為に努力した市井の民のヒューマンドラマなのである。>
ゴジラ映画+etc.
予告見てたので楽しみといえば楽しみという感じでスタート
ただそこまで大きな期待はせずに見ましたが、初っ端から特攻隊の話が来て今までのゴジラよりも人間ドラマすごいのかなと最初から予想できました
今までで一番重く、暗いかなと思う反面
日本でしか作れない原爆の被爆や黒い雨などの描写はメッセージせいがあるのかなと感じました
もちろん最後までツッコミどころはあるし、正直佐々木蔵之介さんの演技がちょっと気になったと思いましたが
全体的には楽しめました
ちょっと泣きそうになったのは悔しかったです笑
メロドラマ要素はいらないかなと
見る価値は全然あるかなと思います
戦争とゴジラのW地獄
こんな不幸な国がある?
って我が国の事ながら気持ちどん底で始まった。
勝てるはずもない戦争でその末期は、
鉄砲の弾がもうないから、体ごと敵にぶつかっていけと
今世紀で世界一最低of最低な指示を出し続けた大本営。
その最中にゴジラ出現?????は?????
不幸って「物語」になりやすいなーって感心したくらい(笑
敷島の弱さと対照的に女性陣の生きていく強さ。
とても気持ち良かった。
どの瞬間も地獄しかなかったけど、
アキ子の存在が本当に救いだったかな。
シンゴジラのスピード感はもちろんなくて
いつか観たゴジラ映画って感じでしたけど、
ゴジラの殺戮シーンは圧巻でした。
始まってすぐやところどころのゴジラ出現シーンで、
観ていた子供が怖い…怖い…とか、帰ろ?って言ってる声が
聞こえてきてて、こりゃ夢に出てきそうだもんなって
逆にほのぼのした(笑)
神木くんの子供の抱き方がぎこちなさすぎて
切羽詰まったシーンなのに個人的にはちょっと吹いたw
ごめんなさい!!!!!!!!
立花整備長(?)の漢気で涙止まりませんでした。
ゴジラ映画ではあるが…
作中のゴジラが登場するシーンは素晴らしいクオリティです。
意外性はないものの恐怖の象徴といった印象で大怪獣ゴジラが若干ベタながらも圧巻のCGで描かれています。
そこだけをつまみ食いするなら5点の映画でした。
問題は人間ドラマ部分にあり、これが終始一貫してチープです。
主人公は現代の価値観で戦中戦後にタイムスリップしたような言動を繰り返します。
役者全てがオーバーな演技で全編を通して安っぽく、チープなテレビドラマを見ている気分にさせられました。
また話の展開もありきたりで、よく言えば王道ですが意外性などは皆無。
ゴジラ関連の撮りたいシーン(画)が先行していて、ストーリーを後付けしたようなクオリティになっており、とにかく酷いの一言です。
戦後の混乱期なのに神木隆之介の顔が常に綺麗なあたりや、セリフの節々や喋り方が時代に則していないなど、気になる点だらけでした。
上記が1点のため、ゴジラ関連シーンの5点と相殺して3点といったところです。
ゴジラ関連シーンの迫力から劇場で観ることをギリギリおすすめします。
また今作はゴジラを禍をもたらす恐怖として描くホラータッチな作風でもあるので、お子様を連れての鑑賞はおすすめできません。
戦後×ゴジラ 見やすい良作
敗戦後の日本を舞台とした本作では戦後の人たちの文化や苦悩について描きつつも未知の怪物との戦いが描かれました。
どちらに関しても見やすく(予定調和的)でおもしろかったです!
ノリコがあのまま死んでたら「あの死に方はあんまりだろ!」と星2ぐらいだけどちゃんと生きててよかった笑
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