「映像は素晴らしいんだが」ゴジラ-1.0 特撮好きさんの映画レビュー(感想・評価)
映像は素晴らしいんだが
ゴジラ映画というよりも怪獣映画としての映像は最高。
ジョーズのようにゴジラに追いかけられる地雷処理船、
駆け付けた高雄と戦うゴジラ。
東京に上陸したゴジラに蹂躙され踏みつぶされる人々
震電が空を飛び、雪風と響がゴジラと戦う。
山崎監督が見たかったものを詰め合わせたものが全部見せてくれたようで
そこの映像は素直に楽しめた。
だがそう持っていくための脚本、特に「ゴジ泣き」を狙ったであろう
描写というか脚本には、まったく乗れずにむしろ白けた。
主役の敷島は「両親と生きて再開するために特攻から逃げた」だけなのに
呉爾羅という自分の命を脅かす化物相手にビビって引き金を引けない
ヘタレ化させられた挙句に、一方的にサバイバーズ・ギルトと
橘からのヘイトを背負わされたり、
ヒロインの典子は、親からの遺言で生き残ることを優先して敷島の家に
居座ったり、それでも寄りかかり続けるのは悪いと働きに出る
強い女のはずなのに、ゴジラが上陸しても噛みつかれるまで
ガラガラの客車から一歩も逃げない結果。宙吊りシーンさせられたり、
キャラクターというか脚本の都合が見え隠れして、感情移入できなくなり
劇中に没入できなくなる。
熱線のシーンで典子が敷島を突き飛ばし、自分は爆風で吹っ飛ばされていくが
あそこで「どうせ生きてるんだろうな」というのがまずわかったし、
典子なら突き飛ばすんじゃなく自分も生き残るために敷島と物陰に飛び込んだが
上からのガレキに当たって意識不明になるでよかっただろと。
後は、日本が隠蔽体質という当てこすりがひどかったが
初代の54ゴジラだって日本人そこまで無能じゃなかったよ。
現代の反戦左翼の主張をそのまま反映しなくても良いだろ。
特に現代の新型コロナなりを反映しているというなら、
政府が隠蔽せずに疎開させようとしても(終戦から5年もたっていないなら猶更)
「インフルエンザで熱が出ていても出社させるブラック企業」や
知識人層を馬鹿にする「反マスク」のような手合いのせいで東京に人が残ってた。でも
世相を反映した現代日本人への皮肉になっただろうし。
「シンゴジラが恋愛要素やらゴジラと無関係なキャラクターの
描写というかドラマを最小限にしてたのには意味があったんだな」と
改めて思った映画。
ドラマを否定するわけじゃないけど、
キャラクターへの感情移入ができないドラマは苦痛。
ただし、感情移入できない原因は
演じている役者さんの力量不足では決してない。
むしろあの違和感のあるドラマの描写を演技力である程度
観れたものにしてくれた点については素直に称賛したい。
自分が監督と脚本に「解釈違い」を起こしてるだけだろ。と
思われるだろうけど、評論とは良くも悪くもそういうものだろうという
ありきたりの結論で締めさせていただく。