「エンタメ映画として傑作」ゴジラ-1.0 スキピオさんの映画レビュー(感想・評価)
エンタメ映画として傑作
もちろん「怪獣映画」なんでツッコミところは満載なのですが、エンタメ作品としてはかなりの傑作なのでは?と。
どうしても「シン・ゴジラ」との比較から入ってしまいますが、シンが「ゴジラvs日本政府」だったのに対して、-1.0は「ゴジラvs日本国民」という軸。この国民ってなかに、主人公がいて、主人公の神木隆之介vsゴジラ、というヒーローものにちゃんとなっている。
これが所謂「ヘタレ」ヒーローなんですね。特攻隊から逃げ、最初のゴジラから逃げ、浜辺との生活にも決断を下せない。このヘタレもゴジラに浜辺を奪われて、ようやく開花する。ゴジラはゴジラで島に上がれば銃で撃たれ、米軍の原爆実験で棲家を追われ(?)、機雷や戦車砲で撃たれれば、そりゃ反撃します。
こうしてヘタレヒーロー:神木vsチートヒール:ゴジラがタイマン。神木の後ろには米国も日本政府も当てにならないと、海軍の生き残りが「日本は俺たちで守る」と立ち向かう、胸熱の展開なんです。実に良くできたストーリー。
若干、途中から「吉岡秀隆が主役?」となりますが、まあ、そこは元ヘタレなので許してやってください。シンが登場人物の人間性を一切排除して、組織でゴジラという不条理に立ち向かう、というクールな軸だったので、オタクウケはするが一般ウケしないのに対して、こちらは、ちゃんと大衆映画になっていると思います。
またオタク向けにも、終戦後シンガポールで自沈処分された重巡高雄に、幻の局地戦闘機 震電。ゴジラが倒される時の光の放射は、お〜エルメスの最後と同じだ〜。で、ラストはなんと「綾波レイ」ですよ〜。なんか本当の元ネタは別の怪獣映画にあるようですが、我々世代では、エヴァでの綾波レイ登場シーンの包帯巻きです!
映画的には非常にテンポの良い構成。まず零戦が出てきた、ジェラシックパーク的なゴジラが出て、ヒロイン(浜辺)登場と、重巡高雄vsゴジラ。ここまでの第1幕が圧倒的なスピード感。第2幕ではゴジラが銀座で暴れる前後が主人公が落ち込む場面なので、若干中弛みがあってよく、最後の第3幕がゴジラとの決戦「わだつみ作戦」、駆逐艦が突っ込むシーンで伊福部昭のゴジラのメインテーマと、キングコング対ゴジラのテーマと劇伴で盛り上げる、完璧ですね。
ラストは色々と意見ありそうですね。神木と浜辺の感動の再会シーンのはずが「コウさんの、戦争は終わったのね」と綾波レイ風にすごく抑え無表情なセリフは違和感あります。「コウさんの」戦争は終わったけど、私(もしくは明子も含めた私たち)の戦争は、、、とも取れるセリフ。あと、チラッと首筋に見えた黒い染は???
ゴジラのラストカットも沈みゆく体が破裂して崩れていくようにも、体内から何かが飛び出しそうにも見える。続編を作れろう思えば、作れる終わり方だな〜と思いました。
好きなジャンルではありませんが、今年のトップ5には入る名作です。