「世間の評価ほどは乗れなかったという印象」ゴジラ-1.0 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
世間の評価ほどは乗れなかったという印象
面白かったけど、周りの人ほど絶賛とはいかないですね。映像や役者陣の演技は本当に素晴らしかったんですが、脚本や演出に関しては正直微妙な部分が多く、なんでここまで皆が大絶賛しているのか、私には分からなかったですね。正直「いつもの山崎監督作品」って感じで、良い点と悪い点が同じくらいある映画だったと思います。
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第二次世界大戦後、戦争を生き残ったが家も肉親も喪った敷島浩一(神木隆之介)は、盗みを働き男たちから追われていた大石典子(浜辺美波)から突然赤ん坊を託される。その赤ん坊は典子とは血の繋がりが無く、戦火の最中に見知らぬ女性から託された子だという。敷島と典子と赤ん坊は本当の家族のように生活するが、戦争が終わってからも敷島は、戦争中に謎の巨大生物「ゴジラ」に襲撃された事件をトラウマのように思い出すのだった。
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映像は本当に素晴らしかったです。ゴジラの造形や戦闘描写は120点だったと思います。山崎監督の過去作『アルキメデスの大戦』でもそうでしたが、海の上の戦闘描写は大迫力でした。ゴジラの放つ熱線の威力もすさまじいビジュアルで、「こんなん勝てっこない」と絶望感を与える描写としては最大限の働きをしていたと思います。
役者陣も素晴らしかった。
私の推し俳優である神木隆之介・浜辺美波・山田裕貴がそろい踏み。彼らの演技は(好きな俳優さんと言う贔屓目はあるだろうけど)文句のつけようがないほど素晴らしかった。個人的には浜辺美波をもう少し可愛く映して欲しかったけど、戦火の中を辛うじて生き延びてきた女性役なので、あんまり綺麗にし過ぎると設定とのミスマッチが起こりそうなので、映画的にはこれが正解なんだろうなぁ。
しかし、正直映像と演技以外の部分に関しては正直イマイチでした。特に脚本と演出は結構酷いものだったと思います。
具体的に言えば、「あ!あれはなんだ!?」→「ゴジラだー!」っていうパターンと、爆破ドカーン→「やったか!?」→やってないってパターンがあまりに多過ぎることですね。一本の映画の中に似たようなセリフや演出が多くて、何だか白けてしまいます。演出の引き出しが少なすぎてワンパターンで単調なんですよ。
あと、これはラストのネタバレになるんですが、安直なハッピーエンドやめてほしいです。死んだと思ったら生きてましたって展開、マジで萎えるからやめてほしい。死んだままにしてくれてた方が映画としては綺麗に纏まっていたし、蛇足のような続編匂わせも私は不快に感じます。
あと、完全に個人的な不満点ですが、スタッフロールで監督の名前が画面中央でピタッと止まるの、監督の自己顕示欲の強さが滲み出ててちょっと苦手です。
映像が綺麗なのは日本最高峰のVFXスタジオである白組の功績が大きい(山崎監督もVFX関わってるけど今回メインは監督脚本だ)し、役者陣の演技は当然役者陣の演技力によるものなので、この映画の面白いと言われている部分って、ほとんどは山崎貴監督の功績によるものではないと私は考えています。やっぱり脚本や演出などの監督の本業である部分は「いつもの山崎貴監督」だなあと、観ていて思いました。脚本だけでも実力と実績のある別の方にお願いすれば、多分もっと面白い作品になった気がします。