「敗戦と原爆/ゴジラ史と映画史」ゴジラ-1.0 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
敗戦と原爆/ゴジラ史と映画史
2023年。山崎貴監督。第二次世界大戦と強く関連させたことで原点(第一作)に立ち返り、さらのその「原点性」を濃縮している。原点性とは、巷間言われているように、①戦争で生き残った者たちの罪悪感から生まれる自罰感情(トラウマ含む)②原子力爆弾の被爆国として核の恐怖のリアルな形象(アメリカへの抗議含む)、としてゴジラを描くということ。①だとゴジラ=死んだ兵隊たち②だとゴジラ=核の恐怖となり、本作の場合、意識的に二つのイメージが重ねられている。ゴジラが口から吐く熱線の爆発は、キノコ雲や黒い雨など明らかに原爆だし、最後に海に沈んでいくゴジラに敬礼しているのは①の意識があると考えなければならない。
このように「ゴジラ史」を踏まえた映画は、同時に「映画史」も踏まえている。一番わかりやすいのは未婚の男女の寝床を隔てる「ジェリコの壁」。もちろん、フランク・キャプラ監督「或る夜の出来事」。また、死にたくない特攻隊員というのは監督自身の過去の作品からの引用のようにも見えるし、優秀な官僚が国家機関を総動員して対応するのではなく、民間で(とはいえ海軍の生き残りが中心だが)対処しようとするところは、官僚映画だった「シン・ゴジラ」への批評だろう。映画は映画史のなかでつくられる。
特攻から逃げて結果的に仲間を見殺しにしてしまった主人公が、最終的に特攻で死ぬ覚悟を決めながらも生きようとするというのが重要。単にやり残したことをやり遂げるのではない。
ゴジラの声と爆風の威力はさすが山崎監督というほかない。
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