「ゴジラのブランド」ゴジラ-1.0 ココヤシさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴジラのブランド
大ヒットした庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』のあと、山崎貴氏がゴジラ映画の監督を引き受けるのは、相当勇気が必要だっただろう。いまさらお子様映画には戻せないし、だからといってリアル路線は庵野監督が突き詰めてしまったからだ。そこで山崎監督が考えたのは、基本的にはリアル路線を踏襲しながら、時代設定を終戦直後にして差別化を図ることと、主人公・敷島浩一元海軍少尉(神木隆之介)の背景を深掘りして「身近な人を守るためにゴジラを倒す」という動機を明確化することだった。
狙いはほぼ当たったと思う。ゴジラ討伐に「科学特捜隊」的なちゃちな組織や「オキシジェン・デストロイヤー」的な架空の物質を登場させないのはよかった。逆に、木造掃海艇、実在の重巡洋艦「高雄」や駆逐艦「雪風」「響」、局地戦闘機「震電」を活躍させたのも秀逸。VFXも見ごたえ満点だ。
もちろん細かいことをいえば気になる点はいろいろあって、いくらソ連を刺激しないためといっても日本政府や米国政府がゴジラ討伐を民間(シヴィリアンという意味?)に丸投げするとは思えない。野田健治(吉岡秀隆)が考案した方法で推定体重2万トンのゴジラを相模湾に沈めたり再浮上させたりすることが科学的に可能なのかも疑わしい。2隻の駆逐艦の推進力だけでゴジラを引き揚げるのが難しいとき、多数の民間船が助っ人に駆けつけるのだが、あっという間に牽引ケーブルを駆逐艦に接続するのも不自然だ。日本のほぼ全閣僚を一瞬で殺してしまった庵野監督の非情さに比べて、山崎監督はラスト、浪花節に流れたなという印象も受ける。
しかし、日本の誇るゴジラ映画のブランドは守られた。一見の価値はある映画。
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