劇場公開日 2023年11月3日

「MUST SEEの1本」ゴジラ-1.0 町谷東光さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0MUST SEEの1本

2023年11月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

単純

興奮

ぼくの採点に★3つはない。ほぼすべての商業映画はその水準にあるべきだ、と思うからだ。
個人的好みから、
★2つ以下=見るべきではない、カネのムダ
★4つ以上=おすすめ、見て損しない――という区分けである。
しかし、★5つつけることは、ほぼない。

本作については、娯楽映画、怪獣(ゴジラ)映画として観客の期待に応えないといけないのは当然として、それを超える深みがある。
アラがないわけではないが、ぜひ見てほしい、見るべき作品だという気持ちを込めて★5つをつけたい。
人類を脅かす絶対悪=人の命を奪う戦争――今日的視点から本作のゴジラはそういう役を担っている。東京を破壊し、人を次々と襲う。見る者は憎いゴジラvs虐げられる日本国民という図式に十分感情移入し、物語に入っていける。
多くのものを失った敗戦後間もない日本を舞台にしたのは秀逸。
多くの人々が死に、もっと多くの人々が生き残った。生き残った彼らの心境を神木演じる主人公が観客に伝えている。その点を高く評価したい。

戦中、戦後間もない当時の日本人があんな風貌か? と神木の顔つきが大写しになった段階でちょっと懐疑的になったのだが、全編を通して「生きて、抗え。」という監督・脚本の山崎貴のメッセージがあふれており、それを素直に受け止めたい。劇中、何度も胸が熱くなる場面があった。

とはいえ、まだまだ役者に外も中も汚しが足りなかったり、「怪獣娯楽映画」らしい筋運び=ハッピーエンドな面もあるが、それには目をつぶっておこう。

一部批評には、「特攻を美化しているように感じた」というのもあったが、それは違うだろう。
佐々木蔵之介演じる掃海艇の艇長に何度も言わせている厭戦的、国家批判のセリフからそれはよくわかるはずだ。

元海軍軍人を集めて、対ゴジラ作戦を協議する場面なども、今の21世紀の日本人俳優が演じているというより、1950年代の俳優が演じている感じが出ていてよかった。
監督もスタッフも相当勉強し、できる限りあの時代を再現しているのが分かった。

封切り初日の午前中に映画館に行って作品を見た。何十年ぶりの体験であるが、下町の映画館の入りは9割近かった。78年前、この映画館のあった周辺も焦土であったのである!

見てよかったと思う。もう1度見たいくらいだ。

外見はともかく、やはり神木は芝居がうまいし、浜辺との呼吸もいい。彼女はヒロインとしての美しさも十分にあり適役と言いたい。

このレビューを読んだら、早めに映画館に行ってくれ!!

町谷東光
CBさんのコメント
2023年11月15日

> 封切り初日の午前中に
さすがです。尊敬。

CB