劇場公開日 2023年11月3日

「第1作目の『ゴジラ』を見事に換骨奪胎した一作」ゴジラ-1.0 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5第1作目の『ゴジラ』を見事に換骨奪胎した一作

2023年11月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

敗戦の傷跡からようやく立ち直ろうとする日本に襲いかかる、ゴジラという破壊(戦争)の化身…、という設定は、時代区分も含めもちろん第1作目の『ゴジラ』(1954)を踏まえており、大戸島に突如出現したゴジラ、その暴虐に為す術もなく破壊される東京、そして人智と技術を総動員した秘策を携えてゴジラに立ち向かう人々…、と、様々な場面で共通点が見出せます。『ゴジラ』に限らず、怪獣パニック映画の定石は余すところなく取り入れている、といってもいいかも。

では定石を踏まえているから意外性や独創性という面が弱いのか、というと、全く逆で、ゴジラに蹂躙される側の人々の視点にこだわった本作の演出に加え、『シン・ゴジラ』(2016)からさらに磨きのかかった白組によるVFX、そしてあらゆる場面に凝縮した生活感溢れる美術などによって、異様なまでの生々しさを醸し出しており、現実感という面ではあらゆるゴジラ映画を圧倒しています。

『アルキメデスの大戦』(2019)で凄まじい迫力で戦艦大和の最期を描いた山崎貴監督だったため、予告編を観た段階で特撮面で特筆すべき作品になるだろうとは予想はしていたのですが、その期待を大いに上回る内容でした。『GODZILLAゴジラ』(2014)のギャレス・エドワーズ監督が本作の描写を悔しがった、という逸話もある意味納得です。

物語の展開的にちょっと甘いのでは、と思う部分もないこともないのですが、全体的に見ればごく些細な問題で、本作は描写面もテーマ的にも、ゴジラ70周年記念作品として十分な内容を備えた作品です。

なお、パンフレットはやや高いけど、『シン・ゴジラ』以降の潮流も踏まえたプロダクションノートはかなりの力作で、山崎監督によるゴジラのデザイン解説も含めて、十分に読み応えがあります。

山崎監督の『アルキメデスの大戦』が、国力に見合わない技術の放つ魔力に魅了され、破滅していく日本を描いた作品であるとすれば、本作では一旦は日本を破滅に導いた技術志向(思想)をどう捉えなおすか、という視点があり、その点で2作は連続した部分があるように思いました。一方で、本作の「日本の政治はどれだけ破滅的な状態になっても変わらない」という醒めた視線の方は、『シン・ゴジラ』に通じているかも。

注目作である上に年末公開作品を控えているためか、本編前の予告はいつもより多め。その中でも『エクスペンダブルズ』は、本作『ゴジラ』の予告パロディーとなっていて、思わず笑ってしまいます。本編のワクワク感が嫌が応にも高まること間違い無いので、こちらもお見逃しなきよう!

yui