「惜しい点も若干あるが、朝比奈彩の熱演が光る」レッドシューズ 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
惜しい点も若干あるが、朝比奈彩の熱演が光る
朝比奈彩という女優をドラマ版「チア☆ダン」で初めて認識し(チアのパフォーマンスも良かった)、その後バラエティ番組で高校まで陸上部だったと知り、その身体能力を活かした映画主演作が決まるといいなと思っていたが、ボクサーとは意外。そのスタイルの良さから、ダンサー役とか、スポーツでももっと華のある競技を予想していたが、顔と体を殴り合う、どちらかと言えばワイルドで泥臭いイメージの格闘技で奮闘する役に起用されたことに意表を突かれた。
ボクシングの演技は相当にトレーニングを積んだことがうかがわれ、試合場面などでは撮影の工夫も相まって臨場感があり、迫力もなかなか。「ケイコ 目を澄ませて」の岸井ゆきのもそうだったが、女優たちがハードな格闘技の演技に真摯に取り組む姿勢には心から敬意を表する。
全編北九州ロケとのことで、有名な若戸大橋など港湾風景をバックにしたシーンが印象的だが、深刻な言葉が交わされているのに背景に気を取られてしまう難点も。
脚本もところどころ気になる点が。たとえば老人介護施設で起きた騒動は、トラブルが発生した直後、観月ありさらが演じる職員たちがどう対処するのかがおそらく見所になったはずなのに、そこを省略していきなり結論めいた場面に飛んでしまうのはもったいない。描く部分と省略する部分のバランスが悪いのか、本編121分がやや長く感じられた。
脚本、演技、演出いずれも惜しい点はいくつかあるが、映画初主演を果たした朝比奈彩のさらなる飛躍を大いに期待したい。
コメントする