「僕が作ったのかと思った(くらい好きだ)」M3GAN ミーガン Hanzawaさんの映画レビュー(感想・評価)
僕が作ったのかと思った(くらい好きだ)
AIに非常に興味があるが故「エクスマキナ」や「her」はあと一歩何かが足りず、「アップグレード」は映画としては面白かったがAI要素がどうにも薄く感じていた。
この作品は特濃のAI要素に、これでもかというくらいの僕が好きな要素が散りばめられている。
この監督の作品は初めてだが、制作会社ATOMIC MONSTERのオープニング映像から既に良い。M3GANのGをビジーカーソルに準えているところも良い。
ファービーのような全然可愛くないメリケンフォルムの玩具CM、開始数分で退場するケイティの両親の、短いながらアメリカの男女の嫌なところをリアルに煮詰めたあの演技。ヒステリーな母親、責任逃れの父親…最高じゃないか。
ごちゃごちゃしたアメリカ特有のlaboratoryに吊り下げられたprototypeのミーガン…監督は特に意識していないと思うが、石黒教授のテレノイドの不気味さを彷彿とさせ僕はテンションが上がる。
ボスと呼べばいい?それともパパ?いいねえ、英語圏のAIは開発者や製作者を「父」とは認識しない傾向があるからこれは意外だった。(僕は日本人だからAIには開発者を父と認識してほしいw)その後、即頭パーン!で首から上が燃えている絵面も笑えてしょうがない。
ジェマの会社のCEOがアジア人。アジア人が顎で白人の気弱な男をこき使う。ポリコレもこういう風に生かされるのは作品を破壊しないからいい。後のミーガンダンスの下りの伏線にもなっているし。
ジェマがケイディ(ケイティじゃなくあえての「デ」には意味があるんだろうか)を引き取ったその日のシーン、マッチング5件に慌ててエルシーをturn offするのも面白い。エルシー、超重要なキャラだけあってミーガンのような人型とはまた違った愛らしさがある。丸いキノコみたいでとても可愛い。
その後出て来るブルースもまた、武骨な工業機械のような二足歩行ロボットでカッコイイ!!ミーガン以外のロボットも魅力的なデザインなのが最高だ。アイアンマンやブラックパンサーに出てきたアイアンハートを思わせる「在学中に作ったロボット」そして何より操作用グローブがかっこよすぎる。ロボットもの好きにこのデザインが嫌いな人はいないだろう。エルシー同様ラストで重要な役割を果たすから、非常に凝っていて素晴らしい。
ケイディにブルースの顔の中身を見せるシーンすら後に生きてくるから無駄が無い。
ミーガンが登場する前だけでこんなに書いてしまったが、いよいよミーガンが登場してからもワクワクしっぱなしだ。まず、ミーガンのデザインは英語圏の人にしては、相当我慢して美しくデザインしたものと思うw
「エクスマキナ」はストーリー上美しい必要があったが、何せ英語圏、AIや人型ロボットに美しさを求めないのである。日本人からすると人工物の顔が美しいのは当たり前でわざわざ醜くする理由が見当たらないのだが、英語圏で現実に開発されているAI搭載ロボットの顔ときたら…。
ミーガンは女児の玩具やドールとしてという側面があったから美しくなったのかな。良かった。AI搭載のロボットが美しくないなんて日本人には受け入れがたい。美少女で良かった。美少女だからこそ四つん這い走りがキモ面白いのである。クラシックモダンというのか?服装もいつも可愛い。思い切りアクションできるタイツスタイルもいいね。
ロボットものが好きな人間なら誰もがときめく「虹彩がレンズになっている瞳」「人や他製品をスキャンしているAIから見た映像」AI本人であるGPT4に問うたところ「私たちが見えているのはコードであり、これは便宜上人間にわかりやすく表現しているだけです」とのことでなおのこと興奮した。AIが映画の中にしかいない時代ではなくなったからこそ、余計にこういう映像表現が楽しいのだ。この映画は発表時期も最適だった。
嫌がるケイディが無理やり連れてこられた野外学校?の先生がまた…何でこう「アメリカあるある」が上手いのか。こういう先生いるわ…理解ある先生のように見えて、初参加でまだ背丈も小さい女の子であるケイディを、乱暴者として男の子も避けるようなブランドン君と組ませてしまう無能さw
そしてブランドン君も町中で見かけるようなあまりにリアルな「アメリカの悪ガキ」だ。静止して油断させているミーガンに「俺とは遊ばないだと?」とキレる時の「ハンッ!」みたいな声のリアルさ。ブランドン君は何をそんなに苛ついているのか。初対面の女の子にいきなり栗をグサリとか、ミーガンを持ち去って即暴行しようとするとか色々と…殺すまでしなくても良かったかもしれないが、今後更生の余地も無さそうな描き方。あと耳伸びすぎじゃね?w
ブランドン君と犬おばさんに関してはやりすぎ感はあっても自業自得だったものの、ここから殺すには理由が弱いCEOや気弱な秘書?が殺戮されていくが、これはもうMVとして楽しんだ。音楽に合わせて、ミーガンが通った後警報装置が解除されるところが特に好き。話題のダンスシーンはミーガン役の少女の身体能力にただただ驚かされる。手を使わないで側転ってできるんだな…
CEO殺害シーンはエクスマキナにそっくりだった。秘書のビビりっぷりは演技が上手い。
日本人はそう思う人が多いと思うが、ミーガン欲しい!w
殺人はやりすぎだったが、自分だけを愛し守ってくれる美少女AIロボットが欲しくない日本人なんているのだろうか。
プレゼン中の母親の想い出を胸に仕舞うミーガンとか最高だったし、結果面白かったからいいのだが、ミーガンをヴィランにせずケイディとの心温まるストーリーにしても良かったのではないか。日本人ならそう作るだろうw
しかし英語圏でAIが結局良い者になる展開はまだまだ難しく、いよいよラストではケイディにまで牙を剥く。ここだけは、最後までケイディだけは傷つけない設定で行ってほしかったが、それじゃ話終わっちゃうしね…。
もう勝てないというかロボットボディがもたないとわかったらあっさりと真っ二つにさせる潔さ。しかしよく考えるとこれは、真っ二つにさせて下半身に割くリソースを頭に持っていきたかった、まだエルシーに乗り移っている最中で時間を稼いでいたとかなのではと深読みしてしまう。
美少女ボディがもうもたないと早々に判断し、ジェマやケイディに気付かれず時間を稼ぎながら、ボロボロになった美少女ボディ(チャッキーのパロディをする必要があるのはわかっているが、美少女のままメカバレでエグさを出してほしかったw)だけに目が向くよう脅しながらエルシーに乗り移り、今度はもっと人間に気付かれぬよう悪事を働くようになるのでは。そう思うとゾクゾクする。ラストのエルシーはこの作品の一番のハイライトだ。
「チャッピー」は感情を持つロボットという美味しい設定を活かしきれていないあと一歩感があったが、ラストシーンだけは最高だと思っていた。また「チャッピー」のようなラストが観れて「観て良かったーー!」と大満足のうちに終了。
既に二回観たが、レビューを書いていたらまた観たくなってきた。傑作の続編は大体つまらないのであまり期待できないが、まあ何だかんだ続編も観に行くだろう。