「心に刻みます」ティル Qooさんの映画レビュー(感想・評価)
心に刻みます
この時代の黒人差別をテーマにした映画は、幾度となく観ていて、いつも胸を押し潰されそうになる。
世の中酷いのは黒人差別だけではないが、あってはいけないことが、普通に行われていて何とも心が痛い。
人を人と思わない残酷な仕打ち。
なぜ。なんで。どうして。
でも観なくては。
その時代を生きていない私は、その酷さを知らない私は、様々な映画で心に刻む。
ここで語るのも恐ろしい事件だった。
純粋で明るく、まだあどけない一人息子を、白人からの迫害から守りたくて、あれだけ心配して、そしてくれぐれも注意を払うよう言って聞かせ、それでようやく州外の親戚宅へ送り出した母親。
あんなにも心配になるほど危険な状況とはあんまりではないだろうか。
でもそうだ。何も悪くないのに黒人が差別によって虐げられていた時代。確かにそういう時代はあったのだから。
その心配はまさかの展開へと的中してしまう。母親のメイミーがどんなに辛く、悲しかっただろう。
ティルは純粋に白人の女性を綺麗だと思い、それを口にしただけだった。そしてその思いを口笛で表現しただけだった。
でもそれが、その時代白人にとってはそんなにも許されない行為だったのか?そんなことで銃を持ち出すとはどんな脳をしてるのだろう?子供のした事なのにに黒人だと言うだけで許せず、大人が、そして悲しいことに白人に支配されているとは言え、ティルと同じ黒人までもが加担し、子供をリンチする。死に至るほどに。
肌の色は違えど 同じ人間なのに。
何故そんなことができるのか。
なぜ。なんで。どうして。
酷すぎた。
事件のリンチについては、痛々しい描写はなかったものの、事件の残酷さは十分に伝わって来た。
リンチで殺したうえに、川に捨てるとは。
どうしてそれが、しっかりと罪に問われないのだろう。
そして、当の口笛を吹かれて怒り、銃を持ち出した女性は、裁判では嘘ばかりの証言。馬鹿馬鹿しかったが、そんな事がまかり通ってしまうのだ。裁判すら黒人差別で行なわれるのだから。
だけれども、メイミーは勇敢だった。愛するの息子がされた所業を、変わり果てた姿を世に知らしめることで、確実に理不尽な黒人差別と戦う大きな第1歩を勝ち取ったと言える。