「GIRL AND」17歳は止まらない ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
GIRL AND
最初ポスターを見た時は「ど直球の青春×農業高校ものか〜面白そうだなー」と思っていましたが、先生に恋する主人公が映ってからは風向きが変わり、本編はそれらを上回るとんでもないインパクトを抱えた良い意味での問題作でした。
農業高校に通う主人公のるーが恋心を寄せているのは教師の森先生、流石に女子高生と教師なので相手にはされないけどなんとか振り向かせようと、誘惑してみたり、家凸してみたり、襲ってみたり…。狂気に満ち満ちたストーリーに畜産要素を添えた学園ものでした。自分で説明してみても何言ってるかよく分かりません。
主人公のるーがまぁノンストップで、先生を好きになるならまだしも、未成年飲酒はぶちかますわ、宿直の先生の元に押しかけるわ、偶然とはいえ先生のアパートを見つけて度々観察するわ、衝動に任せて自宅に突撃してわギャンギャン騒ぐし自宅に押し入ろうとするわ、最終的にはるーの家に連れ込んで誘惑してキスまでしてしまうわで、暴走したジェットコースターに乗っている気分でした。
最高にイカれているので、このアクの強さに最初は乗れませんでしたが、清々しいくらいに暴れ散らかす様子を見ていると一周して面白くなってきました。先生と窓越しの面目守りと面目潰しのラリーは爆笑ものでした。
まぁこの作品に出てくるキャラはどこかネジの外れたキャラが多いんですが、るーの個性があまりにも強すぎるので霞んで見えてしまうんですが、普通の作品ならイカれ認定されてもおかしくない奴らが出ています。
田中くんはもうシンプルにストーカーです。良い人なんだろうけど距離の詰め方だったり言動がちょっとキモいです。るーが毛嫌いする理由も前半までは分かります。るーの本性を客観的に知ってしまった後では、なんでこの人はこんなにのめり込むんだろうと不思議でしかありませんでした。
森先生も常識を携えた気怠げ真面目な教師に見えてたんですが、中島歩さんが演じる時点である程度察するべきで、普通に生徒に手を出すタイプの教師で、エピソードだけですが過去にもそういう事例を起こしていたというのがサクッと語られます。エピソードの一つ一つは濃いものがあるのに、なんだかるーのヤバさを隠すように説明されていたのは腑に落ちなかったです。
モモも脅迫ばっかしてきます。親友だから、親友だからとるー田中くんという名のストーカーと引き合わせようとしますし、もうそれしか言わないですし、るーの飲酒の原因は彼女ですしで、リアルにいそうなヤバさを持っていました。botかっていうくらいそれしか言わないのでなんだかもったいないなとも思ってしまいました。
屠殺のシーンはかなりリアルに描いており、ニワトリの首を絞めて、首を切り落として、血を抜いて、羽をむしってという過程を余す事なく見せていたのでそこは好感を持てました。前後の人間模様がクレイジーだったので、このシーンで気持ちを落ち着かせる事ができるという普段見る作品の逆転現象が起きてしまいました。
終盤はキレイに見せかけて雑に畳んだ感が否めず、森先生の過去の問題や生徒との駆け落ち、ついでに出荷品の売り上げの有無と畳みかけるように問題が現れた割にはチャンチャンと片付けて日常に戻ったのは、ここまでのクレイジーさが急にストップしてしまい、タイトルと相反する17歳は止まった状態になってしまったのが残念でした。
そこから家出の有無でるーと田中くんが揉めたり揉めなかったり、「私と一緒に人生賭けれんの?」「賭けれるよ!」「じゃ私の家泊まって行ってよ!」「いいよ!」「お母さんいるから帰って!」「チンパンジーじゃないって事認めてあげるよ」→実はお母さん別にいなかったというド派手な茶番劇を見せられました。事が進展したようでしてない不思議な時間を過ごしました。
なぜか器械体操と空手の要素をパンチラと共に出してきますが、必要性はそこまでありませんでした。
命をいただく事の大切さを豚の出産や牛の出荷で最後に無理くりに詰め込んできますが、かえって混乱してしまいました。この人たち記憶をリセットしたのか?ってくらい晴れやかな表情をしているものですから。ツッコミのないクレイジーにはのれなかったです。
カネヨリマサルの主題歌は青春ど真ん中を射抜く爽やかなアッパーチューンでとても良かったです。今作のゲロ重シナリオとはリンクしていませんでしたが、主題歌が流れた途端に涼しい風が吹き抜けていきました。
爽やかさはほぼ無し、ドロドロ(主に主人公)の恋愛劇、クレイジーな登場人物のクレイジーな言動を真っ向から受けて気分は大変な事になりますが、一周回るとそういう作品だと思って楽しむ事ができます。
思っくそ犯罪はしているのでやりすぎな感じはあったのでトータルではこのくらいの評価で。これポスターしか情報無かった人が見た場合どんな表情して観てたんだろうというのが気になる作品でした。
鑑賞日 8/27
鑑賞時間 18:50〜20:30
座席 D-1