エルマーのぼうけんのレビュー・感想・評価
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保護下で安心な子供時代から踏み出した少年
子供の頃前作読んでいたけれど、うっすら覚えているのはトラとワニとチューインガムの木が出てきたことくらい。細かなエピソードは全部忘却の彼方。
原作にもあったか覚えていないが、エルマーの冒険前が辛い。
誰も悪くないけれど、不景気の煽りをくって、田舎で開いていたお店が差し押さえられたお母さん。
お店の手伝いを一生懸命していた賢いエルマーだったが、お母さんと都会の小さな屋根裏部屋に引っ越してくると、お金の余裕も暮らしの余裕もなくお母さんは追い詰められて、気持ちの余裕をなくしていく。
なにか助けになりたいエルマーだが、子供にできることはほぼなく、お母さんの妨げになったり、心配を増やしてしまう。
いっぱいいっぱいのお母さんにも、皺寄せがいってしまい、大人にならざるを得なくなっているエルマーにも、心が痛い。
お話の中の冒険は、10歳くらいで、妄想の世界と、大人に近い感覚との、境界・過渡期にいるエルマーの、現実逃避であり現状打破模索であったのかと大人になった今わかる。
自分に何ができるのか考えることができる賢い子だからこそ、早く来た心の成長タイミング。
ねこも、クジラも、りゅうの子供ボリスも、トラも、ワニも、サルたちも、エルマーに安心をくれる保護者の感覚とは大きく違う。
でも、それぞれの出会いで会話して、考えて、エルマーなりに島を救う方法やりゅうを助ける方法や、家に帰って食べていく方法を見つけ出していく。
もともとエルマーは、答えを教えて貰うのではなく、
考えて行動して切り拓く力に長けているが、子供にとっては大きな勇気を伴う状況ばかりだ。
それを見て、優秀な兄を横目に萎縮していたりゅうのボリスにも変化が起こる。
一緒に島の中を探検して、沈む島を助け出した時に、ボリスは真の勇敢なドラゴンになれたし、エルマーはボリスを頼らずとも、母の元に帰宅し、不況の世界でも自力で勝負し生きていく自信がつく。
エルマーとりゅうは堅い友情で結ばれたが、それぞれの生きる場所は遠く離れている。
それでも、口笛ひとつで繋がり合える確信が、真の友情を示している。
子供にとっての、自立心の芽生え、好奇心、冒険心、自覚、責任感、解決への欲求が作品に詰まっている。
大人にとって子供のそういうタイミングは、嬉しくも寂しくもあるのだが、環境やお金に恵まれていない時こそ、生きる力を発揮してどうにかする能力を培ってほしい。エルマーの母にとっては、可愛い子には旅をさせてエルマーにその能力を培って貰うタイミングが、苦境をきっかけにやってきたようだ。
作中、動物達の長の猿が、皆を安心させるため、島を沈ませない方法を知っている亀が本当は死んでいるのに、生きていると嘘をついていたとわかる。目の前の動物達をいつも気にかけて守る、責任感の強い長だが、守りたい気持ちが、動物達自身で考える力を奪ってしまっている。エルマーのお母さんとの対比になっていた。
大家さんのおばあちゃんも、お母さんも、エルマーが無事に戻ってきてどれだけ安心したか。
そんなことしたいはずがないのに、子供が飛び出すまで追い詰めてしまったことを、どれだけ自責し辛かったか。そうさせる社会と景気が悔しかったか。
でも、未来の社会を作るエルマーはひとまわり大きくなって帰ってきた。
エルマー親子は大丈夫だと感じられた。
こんな親子の目線で、当時は作品を味わっていなかった。大人になることで、様々な立場を経験することで、視野は増えていく。
エルマー同様に、自分という人間も数十年で少しは成長しているんだなと感じた。
モチモチの木のようなタッチのアニメーションに、可愛さは全く感じられないが、とても引き込まれた。
ボリスのキャラが苦手だった!!
しんどい現実で、ファンタジーに移行する動機は十分でした。エルマーは落ち着いていて良い子ですが、ボリスは騒がしいお調子者の上に使えないので、何の関係もない島を救うというモチベーションが上がりませんでした。ボリスは自己紹介の時点で、あれはできませんこれもできません、と予防線を張るのが、自己紹介慣れしていてもうガッカリでした。結局お店はどうなったのでしょうか。
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