「二人の空気感を描く1作目から二人を取り巻く世界観を描く2作目へ。」ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
二人の空気感を描く1作目から二人を取り巻く世界観を描く2作目へ。
◯作品全体
10代女子であり殺し屋である主役二人の空気感が強烈だった1作目。2作目となる本作も魅力的な二人の空気感はそのままに、二人の取り巻く世界を少しだけ広げるようなストーリーが面白かった。やろうと思えば「二人の過去」とか「二人の関係性の変化」とかできたのだろうけど、本作最大の魅力である「二人のゆるい空気感」を尊重し、ゆるめに世界観を掘り下げている感じが彼女たちらしくて楽しい。
個人的には1作目でも印象的だった殺し屋協会にスポットを当ててくれたのが凄く嬉しかった。殺し屋を生業にする職場でありながら裏稼業っぽさが皆無で不気味だったけれど、今回の田坂が銃撃されるエピソードで仕事人としての顔以外にも血の通ったアツい部分もあることが語られる。他愛のない会話をする姿も、ちさと達とは少し違った空気感ながらゆるい空気感が面白くて、魅力的な登場人物が更に増えた。
ちさと達を狙う闇殺し屋・神村兄弟が協会への加入を目的として狙う、という動機付けも殺し屋協会を語るうえで面白かったし、神村兄弟をちさと達のようなバディにしたのも面白いアイデアだと思った。
ちさと達のように生活のために人を殺す人物として描かれ、正規雇用を目標に働いている様子は普通の若者のよう。終盤での対峙もスポーツをやるかのような爽やかをにじませ、ちさと達と神村兄弟、それぞれが感じたように「もしもそれぞれが仲間だったら楽しかったんだろうな」と思わせてくれる。ちさと達にもしも同じような環境の友達ができたら…というような、二人の世界観を小さく広げてくれる役割を神村兄弟は担っていた。
昨日の敵は今日の友、というような雰囲気で物語が終わるかと思いきや、殺し屋としての職務をキッチリとまっとうする二人。エンドロール後の超絶ゆるい会話も含め、この「ゆるさとストイックさ」のシーソーゲームみたいな世界観が本作の最大の魅力なんだ、と再び感じさせてくれるラストも見事。
作品の持ち味の活かし方と世界観の広げ方が本当に見事で、文句なしの続編作だった。
〇カメラワークとか
・ちさと達の部屋。前作では手前にソファ、奥にキッチンで空間を分けるような演出があったけど、本作ではソファの後ろは本棚になっていた。必然的に二人が横並びでいる時間が多く、前作のような不安定な関係性は解消されているような印象になっていた。
〇その他
・神村兄弟の弟役の人はちょっと芝居を作りすぎててイマイチだったなあ。マンガチックなキャラクターだからってのもあるんだと思うけど。
・銀行強盗の倒すシーンは本作にしてはマイルドなアクションに見えた。不殺を意識してのアクションかと思ったら殺しちゃってたみたいだし、どうせ殺っちゃうならフラストレーションを吹き飛ばすような痛々しさでも良かったような。
・対銀行強盗のアクションで厚めの書類ファイルで戦うところは『ジョン・ウィック』シリーズにあったファイル越しに殴るアクションをやってた。どうせなら本で喉を潰すやつもやってほしかった。
・個人的に田坂の「一つ上の世代の、フランクだけどちょっとめんどくさい先輩」感がめちゃくちゃツボに刺さった。自分では周りに慕われていて仕事ができると思ってるけど若干嫌われてて仕事はそこそこみたいな先輩。でもいざというときにはなんだかんだ頼りになるところも含めて、造形が非常にしっかりしていて面白かった。
・監督がお手本にしたのは週刊少年漫画だとインタビューで語っているけれど、世界観の広げ方がそれのとおりだなと思った。今回でいえば「粛清さん」という殺し屋協会の中でも動いたらヤバい、というような存在をさらっと会話で出していた。自然に世界観を拡げていく感じとか、新しい謎の存在にわくわくする感じは完全に週刊少年漫画だ。