「見どころは趣里だけかも・・・」零落　kossyさんの映画レビュー（感想・評価）

　猫目の女には近づかないようにしていたはずなのに、風俗嬢ちふゆに惚れ込んでしまった漫画家の深澤薫。漫画家が最も偉い職業だと思っていたことは最後にわかるが、それも内々に秘めたる思いであって、結婚（付き合った）した相手にすらわからないこと。そういや漫画家も「先生、先生」と崇められてるもんなぁ・・・

　じゃ、売れる漫画家になればいいじゃん！と、後から考えてみるけど、売れることしか考えてない漫画家をバカにしてた深澤。彼の頭の中はけっこうややこしい。唯一の心の支えだったはずのSNSでのファン・アカリに対する暴言がその証だ。単に大衆に媚びるような内容にするだけで、自分の全てではないことを言いたかったのだろう。ただし、猫目の女だけには全てを見透かされているという、やっかいな漫画家先生だったのだ。なんだか気持ちはわかるけど、売れてる漫画なんてそんなものなのだろうと思わせる。

　暗く深い波打つ海の映像が何度も挿入されるが、その深淵さは深澤の複雑な深層心理を表しているのに違いない。てっきり日本海の暗さを表現したものかと思ったけど、ちふゆ（趣里）の故郷は千葉県っぽい。田舎とは言ってたけど、明るいんだよなぁ・・・

　そんな趣里ちゃんの大胆演技。なかなか良かったけど、陰のある寡黙な演技の方が好き。TVドラマの『ブラックペアン』のような。