聖なる証のレビュー・感想・評価
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家の「物語」
優しさとぬくもりとされる「家」は共同体幻想=物語に他ならない。女の子どもという一番弱い存在が権力や圧力の元で沈黙や従順を強いられ大人の都合で聖人にまで持ち上げられるような暴力装置にもなりえるのが「家」だ。その物語を押しつけられ過剰適応している娘のアナを命がけで救えたのは看護婦エリザベスと「家」から脱出できていた新聞記者だけだった。エリザベスも家族の喪失という物語を背負っている。生後数週間の娘を失い夫も失踪した。娘の小さな足をくるんだ筈の毛糸の靴下を目の前に置き、娘の苦しみと自分の悲しみを忘れないための儀式のように自分の体を痛める。戦場で多くの兵士の死を看取り多くの子どもが貧困と飢えで死ぬ社会を知っている理性的なプロの看護婦である彼女は物語に絡みとられない強さがあった。
「家」の物語から脱出し各々が自分の意志で家族となったエリザベスとアナと新聞記者。この三人の結びつきは失敗しながらも逞しく生きる人間の再生と希望そのものだ。家がどれだけ子どもの足枷になりうるか。カルトと宗教は異なるが、今の私達が置かれている世界の可視化されていない部分はエリザベスのいた19世紀後半と大差ない。
このドラマのようなコスチュームものでも現代・未来を舞台にした作品でも、ピューの存在感と演技力は半端なく素晴らしい。
"奇跡"これまたフローレンス・ピュー劇場
今日の映画界の常識/通説、フローレンス・ピューが出ているとその映画はグッと面白くなる。彼女は現代きっての実力派若手で名作請負人の貫禄あふれる名優だ!
本作もまたそうした好例に違いない、考えさせられる良作。信仰と飢饉、家族と子供。飢饉で亡くなっていった子供たち。英国のお節介=干渉か、やり直すこと。セバスチャン・レリオ脚本監督による独自の雰囲気もあるミステリアスな歴史ドラマに引き込まれていく。そしてフローレンス・ピューが注目されるキッカケとなった『レディ・マクベス』と同じように青いドレスに身を包んで…。
観察。1862年、英国からアイルランドの田舎にやって来た看護師エリザベス・ライト。4ヶ月断食しているにも関わらず、弱ってはいるものの、健康なままの少々アナ。主人公の役割は、一日8時間のあいだ、少女を観察すること。奇跡か嘘か?早くこの茶番を終わらせろ。親しくなっていく=真相に近づいていくにつれて生まれる彼女の苦悩と葛藤、そして決断・行動に揺さぶられる。
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