劇場公開日 2023年5月26日

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「「ロッキー」の泥臭さが懐かしい」クリード 過去の逆襲 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「ロッキー」の泥臭さが懐かしい

2023年5月26日
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幼馴染みのデイムが18年間も刑務所に入ることになった事件を、小出しにしながら再現していく語り口にイライラさせられる。
いったいどんなに驚くべき真相が隠されているのかと期待していたら、さんざん勿体ぶったあげくに明らかにされた事実は、完全に想定の範囲内で肩透かしを食ってしまった。
アドニスが、刑務所に入ったデイムと連絡を取らなかった理由や、アドニスの母親が、デイムからの手紙を隠した理由も、よく分からない。刑務所の中でデイムと一緒に写真に写っていた人物が誰だったのかも、最後まで分からなかった。
デイムにしても、単にボクシングのチャンピオンになりたかったのか、それともアドニスに復讐したかったのかがよく分からない。敵であることは間違いないし、ジョナサン・メジャースも好演していると思うのだが、いい奴なのか、悪い奴なのかがはっきりしないため、同情することも、憎々しく思うこともできないのである。
ただ、チャンピオンになる際には、あれだけ汚い手を使っていたのに、アドニスとの試合ではクリーンに戦っていたところを見ると、単にアドニスと戦って、過去に決着を着けたかっただけなのかもしれない。試合後に両者が和解する姿を見ると、なおさらそう思えるのである。
いずれにしても、登場人物たちが何を考え、何をしようとしているのかが理解できないため、最後までモヤモヤとした気分が残ってしまう。
娘の暴力癖、母親の死去、妻の仕事での葛藤などのエピソードも、どれも中途半端で描き込みが浅く、詰め込み過ぎの感が否めない。
トレーニングやタイトル・マッチのシーンも、スタイリッシュな映像と音楽て格好いいのだが、その分あっさりと薄味で、どことなく物足りなさが残る。
シルベスター・スタローンが出演していないこともあって、「ロッキー」の泥臭さを懐かしく感じてしまった。

tomato