「泣いた」眩暈 VERTIGO たまさんの映画レビュー(感想・評価)
泣いた
凄く良かったです。
映画の最中も何回か泣いて、エンドロールではずっと泣いていました。
最初は恥ずかしながら、ウトウトしてしまったり、色々な演出やテレビドキュメンタリーのような説明の多さも気になったりしたのですが、それを圧倒するメカスと吉増剛造の内的世界がありました。
そして、不満に感じられた部分も作り手が精一杯繊細で豊かな彼らの世界に寄り添おうとして、彼らの世界を伝えようとして、試行錯誤した結果なのだと、終盤になるにつれて分かってきます。
撮る側、撮られる側、生きているもの、死んでいるもの、過去、未来、様々な方向への愛が行き交う映画でした。
また、詩における声の重要性もこの映画の主題のひとつだと思います。
メカスの息子セバスチャン氏の声の美しさ、吉増剛造の眩暈!という言葉に滲む心、ツェランの声、それらが噛み締めるように何度も思い返されます。
音声の演出にも苦心されており、ぜひ映画館で観ていただきたい映画です。
音声の演出は最初は戸惑うのですが、声に注意を向けるためには必要な演出だったと、見終わった後に実感しました。
映画館からの帰りに小さな橋を渡ったとき、暗い川面にゆらぐ光に、彼らの詩の国と自分の世界との繋がりを感じ、また泣いてしまいました。
演出については、色々な意見があると思います。
もっと芸術的に昇華させた美しい映画にする事も出来たと思います。
ですが、それをせず、2人の世界に誠実に寄り添い伝える道を選ばれた故の演出であると私は感じました。
詩の国の民との誠実な交感に果敢に挑んだ、素晴らしい作品だと私は思います。
多くの人に見て欲しい作品です。
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