「差別と配慮のはざまで」チョコレートな人々 ガゾーサさんの映画レビュー(感想・評価)
差別と配慮のはざまで
2023年劇場鑑賞182本目。
社会福祉法人ひびきの上映会にて。
映画館じゃないけどチケット代払っているので入れました。
自分も障害者と関わる仕事をしていまして、その関係で観てきました。
久遠チョコレートという高級チョコレートブランドを立ち上げ積極的な障害者雇用を取り入れている方のドキュメンタリー。
自分の勤務先は生活介護事業所で、主にアルミ缶の回収と分別をした後販売しています。2023年7月時点でキロ180円で買い取ってもらっています。大体90リットルの袋に潰していない缶30袋くらいで1万円くらいでしょうか。それを20人くらいの利用者さんで均等に割って一年でならすと他にも多少の収入はありますが月で7000円くらいになります。お小遣いとしては多少の額ですが、生活ともなるとほぼなんの足しにもならない額です。
この額を少しでも上げようと頑張っている人たちの話です。ただ、やっぱりお金を稼ごうと思ったらのんびりその人のペースに任せていきましょうとはならないのが現実で、納期に間に合わなそうになったら総出で徹夜しますし、険悪な空気にもなるところを撮影して見せてくれます。
過去の映像もなぜか結構残っていて、前身のパン屋で辞めざるを得なくなったある障害の人の母親と代表との会話も残っています。若き代表はその人を健常者として扱いたいと言い、母は障害者であることを忘れないでほしい、あなたがそれを理解できるよう成長して下さいと辛辣な言葉を投げかけます。この事に関しては常々自分も感じていて、障害者だから何も分からないので怒りもしないし、自分の行動に一切の責任を負わせもしない、というのは差別なのではないか?と思いますし、かといって色々な事が脳の構造的に理解できないことを理解しろというのも酷な話なので合理的な配慮が必要だとも思います。とはいえこの子なんにも分からないからと最初から諦めていたけれど、伝えてみたらすぐ分かってくれることもあります。堂々めぐりです。
障害に合わせて色々工夫する様子が色々出てきて、その点に関しては良かったと思いますが、中盤で代表がこぼした事業を広げすぎたのか、でも広げないと給料が出せない、という葛藤が障害者の労働について回る最大の問題だと思うので、そこをもっと掘り下げて欲しかったと思います。